ママ美容師になり共感力がアップ!髪悩みを持つお客様にとって身近な存在でありたい【美容師 花野未帆さん】#2

2020年の最初の緊急事態宣言とともに産休・育休に入り、丸一年のお休みを経てサロンワークに復帰した花野未帆さん。前編では、独身時代の働き方やパートナーとの出会い、妊娠時のサロンのサポートなどのお話を伺いました。

今回の後編では、お休み中に始めたSNSでの発信の工夫や、家族と過ごす時間で大切にしていること、復帰後の思いなどをご紹介します。

お話を伺ったのは…
joemi by Un ami
トップスタイリスト 花野未帆さん


20代後半〜40代の働く女性からの支持が高く、ライフスタイルや髪悩みに合わせて心地よく過ごせるヘアスタイルを提案。都内1店舗を経て、2011年に22歳でUn ami入社。2015年にjoemi by Un amiでスタイリストデビューし、翌年トップスタイリストに昇格。2019年に30歳で結婚、2020年4月から産休・育休を取得し、男の子を出産。2021年4月に職場復帰。

産休中に、SNSでヘアアレンジ動画の発信をスタート

――インスタグラムのヘアアレンジ動画が人気ですが、始めたきっかけは?

それまであたりまえに出勤してお客様と対面していたのに、産休で誰とも会わなくなってしまったとき、何かを伝えられる手段はSNSだなと感じたんです。本当はもっと前からやろうと思っていたのになかなかできなくて、産休がよいきっかけになったとも言えます。

子育てや仕事で忙しい人にも、アレンジが苦手な人にもトライしやすいように、「1分以内でできる」をコンセプトにしたヘアアレンジを紹介しています。「いつも参考にしています」という声をいただくと、とても励みになりますね。

「私のインスタで一番バズっているのは、子どもの動画なんです」と花野さん。

――ご自分で撮影するのは大変では?

最初は心が折れそうでした。自宅で撮っているので、自撮り棒をテーブルに固定して後ろ向きで撮影するのですが、確認したら画角におさまっていなかったり、見せたい手元が写っていなかったり…。

今は少し頻度が落ちてしまいましたが、うまくいけば2週間に1度くらいアップしています。アレンジ動画以外では、作品撮りやお客様のヘアスタイルなども投稿。髪の毛のことばかりにしたくなくて、プライベートの写真も載せています。新規のお客様もインスタグラムを見て来てくださる方が意外と多いので、私自身がどんな人なのかを知るきっかけになったらいいなと思って

――お子さんがバナナ大好きという投稿を見ましたよ!

そうなんです、バナナブームが続きっぱなし!2年以上、毎日バナナを食べていて、切らした日には嵐がきます(笑)。そういうエピソードも親近感を持ってもらえるようで、「うちは焼き芋ブームでした!」というお話をしてくださる方も。みんな同じなんですねぇ。

仕事と子育ての両立は、周囲の協力があってこそ

子どもが可愛くて離れがたく、育休中に「専業主婦になろうかな」とふざけて言ったことも。パートナーは「それでもいいよ。でも、復帰するでしょ?」とお見通しだったそう。

――仕事に復帰したときは、どんな気持ちでしたか。

仕事を覚えているかな…とソワソワしましたが、いざ働いてみたら体が覚えていました。「誰も予約が入っていなかったらどうしよう」という不安もあったんですよ。復帰してひとり目のお客様は長いおつきあいのある方で、私は緊張していたけど、その方には「全然変わらない、まったく衰えないわね」と言われてとても嬉しかったです。

丸一年休んだので、その間に入社したスタッフとはお互いに「誰?」という感じでした(笑)。だからその子たちと距離を縮めたいという気持ちがあり、なるべく私から話しかけるようにしていましたね。

――仕事と子育ての両立が始まり、感じたことは?

子どもは10ヶ月から保育園に預けたのですぐになじんでくれたし、保育士さんもすごく親身になってくれて。保育園なしでは我が家は成り立たないので、本当に助かっています。子どもが発熱したとき、「今すぐに!」とは言われず迎えに行ける時間まで待っていただいたことも。Un amiのほうも、担当しているお客様をお帰ししたらすぐに私も帰らせてもらえました。

17時までの勤務ですが、何かあったらいつでも早上がりしていいよと言ってくれる先輩や、理解してくれる後輩ばかりなのでめちゃくちゃありがたいです

――共働きにあたり、夫婦間で決めたことはありますか。

ルール的なことは何もないんです。我が家の場合は、ノールールの方がうまくいくのかなと。夫は出張が多く、不在なことや帰宅が遅いことがよくあるため、家事や育児は私がメイン。ルールを決めてしまうと、できなかったときにお互いにストレスになってしまいます。だから基本的には私がやって、たまに夫がやってくれたらラッキーという気持ち。私にとってはそのほうが、「ありがとう!」って感謝できるんです。

夫は家にいるときは家事も育児もやってくれます。掃除が好きだし、子どものオムツも率先して変えてくれるし、何でも協力してくれるのでありがたいです。

井の頭公園で開催された国際交流フェスティバルで、マスコットキャラクターと一緒に記念撮影。

――ご家族との時間の中で大切にしていることは何ですか。

休みの日は近所の公園やちょっとしたイベント、旅行などに行くのですが、そのときに子どもと同じテンションで遊ぶこと。遊びも本気です。子どもと私が一緒になって楽しんでいると、休日のプランを立ててくれた夫も嬉しいかなと。

普段は、子どもを寝かしつけたあとに夫と話す時間をつくるようにしています。その日にあったことや子どものこと、仕事のことなどを共有する時間が大切ですよね

ママ美容師になり一番変わったのは、共感力

もともと直毛だった花野さんは産後、くせ毛に変わったそう。お客様の悩みを“自分事”として感じるように。

――時短勤務になり、売上はどのように変化しましたか。

フルタイムで働いていた頃に比べると半分くらいになりました。でもそれは仕方がないと、ある程度割り切っています。仕事終わりの夜にサロンに行きたいお客様に、昼間に来てくださいなんてことは無理なので、同僚スタッフを紹介して担当してもらっています。担当は変わっても、Un amiに来てくださっているだけで大成功だと思っています

――集客のターゲット層も変わったのでしょうか。

もともと20代〜40代の女性のお客様が多かったのですが、さらに子育て中のママ世代が増えたという感じです。ホットペッパーから予約をいただくことが多いのですが、サイトのスタイリストページに「時短勤務」「小さい子どもがいる」など少しだけ書いているんです。クーポンやヘアスタイルだけではなく、そういう情報も意外と見られているんだなと新発見でした。

子どもの存在が花野さんのパワーの源。「忙しくてヘトヘトでも、子どもが『おかえり〜』と言ってくれるだけで疲れが吹き飛びます」。

――ママ美容師になって、お客様への提案やお客様からの相談などに変化はありましたか。

私自身、妊娠・出産で髪質がかなり変わったことで共感力が上がりました。以前ももちろん、お客様のお悩みに一生懸命向き合っていたつもりですが、実際に自分が経験するとやはり違うんですね。ヘアケアのアドバイスやスタイルの提案が、より具体的になりました

お客様は、お悩みを解決するための本当の答えを求めてサロンにいらっしゃる。そういう方にとって近い存在でいたいなと思っています。お店で販売しているヘアケア製品もあらためて買って使ってみて、これはいいなとか、これは合わなくなってきたとか、自分で実感してからお客様におすすめしています。

――復帰してまもなく2年になりますが、一番嬉しかったことは何ですか。

お休みする前と変わらないポジションで、Un amiで美容師を続けられているという、この毎日が嬉しいです。今もサロンワークに加えて、ヘアメイクや撮影など外部の仕事もさせてもらっています。そんな風に働いている私の姿を見て、後輩が「私も花さんのように働きたいです」と言ってくれた。それもめちゃくちゃ嬉しかったです!

「ママ美容師」というと、子育てと仕事の両立が難しくて店を辞めたとか、子どもがいても働きやすい店に移ったとか、そんな話がよく出てきます。でも私は、Un amiならこのまま働いていけると感じています。後輩たちにとって、そういう未来を感じさせることができる先輩でありたいですね

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花野さんが仕事と子育ての両立のために心がけていること

1.自分にできることを考えて実践する

2.日々のできごとや思いをパートナーと共有する

3.感謝の気持ちを忘れない

取材・文/井上菜々子
撮影/喜多二三雄

Salon Data

joemi by Un ami
住所:東京都新宿区新宿3-26-13 新宿中村屋ビル5F
電話:03-3355-1011
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