鍼灸師は資格なしでも働ける? 資格取得を目指す方法を紹介
鍼灸師を目指すにあたって、資格なしでも仕事ができるか気になる人もいるのではないでしょうか。また、資格が必要な場合はどうやって取得するかも知りたいことでしょう。
そこで、鍼灸師として働く場合に資格が必須かどうかを含めて解説します。あわせて、鍼灸師が働ける職場の例や給料なども紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
鍼灸師は資格なしでも働ける?
結論からお伝えすると、資格なしで鍼灸師と名乗ったり鍼や灸の施術をしたりすることはできません。鍼灸師とは国家資格の「はり師」と「きゅう師」両方の資格を持った人のことであり、それぞれの国家試験を受験して合格する必要があります。
鍼灸師の資格取得を目指すには?
では、鍼灸師(はり師・きゅう師)の資格を取得するにはどうすればいいのでしょうか。
国家試験の受験資格を取得しよう
まずは国家試験の受験資格が必要です。受験資格を得るためには、高校を卒業したのち、文部科学省や厚生労働省が指定する養成施設(専門学校や大学など)で、所定のカリキュラムを3~4年間履修しなければなりません。
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引用元
厚生労働省:はり師国家試験の施行
国家試験を受験しよう
受験資格を手に入れたら、国家試験に臨みます。以下で試験概要を見てみましょう。
引用元
厚生労働省:はり師国家試験の施行
厚生労働省:きゅう師国家試験の施行
試験概要
試験は年一回行われます。試験地は、晴眼者が北海道・宮城県・東京都・新潟県・愛知県・大阪府・広島県・香川県・福岡県・鹿児島県・沖縄県の11ヶ所、視覚障害者が各都道府県です。
試験科目
はり師・きゅう師の試験科目は以下の通りです。
・医療概論(医学史を除く)
・衛生学・公衆衛生学
・関係法規
・解剖学
・生理学
・病理学概論
・臨床医学総論
・臨床医学各論
・リハビリテーション医学
・東洋医学概論
・経絡経穴概論
・「はり理論及び東洋医学臨床論」または「きゅう理論及び東洋医学臨床論」
なお、鍼灸両方の国家試験を同時に受ける場合、はり理論もしくはきゅう理論以外の共通科目は、受験者が申請すれば一方の試験を免除してもらえます。
試験方法
はり師・きゅう師の試験は筆記試験です。なお、視覚障害者は申請によって適切な試験方法を選択できます。拡大文字や点字、録音や読み上げ、照明器具の使用などです。
受験料
令和6年2月25日に実施された第32回試験では、受験料ははり師・きゅう師どちらも1万4,400円でした。変わる可能性があるため、参考として考えてください。
合格率はどれくらい?
近年の受験者数・合格者数・合格率の推移は下記の通りです。
年度/回 | はり師 | きゅう師 | ||||
受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) | 受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) | |
令和元年度/第28回 | 4,431 | 3,263 | 73.6 | 4,308 | 3,201 | 74.3 |
令和2年度/第29回 | 3,853 | 2,698 | 70.0 | 3,797 | 2,740 | 72.2 |
令和3年度/第30回 | 3,982 | 2,956 | 74.2 | 3,892 | 2,963 | 76.1 |
令和4年度/第31回 | 4,084 | 2,877 | 70.4 | 4,010 | 2,875 | 71.7 |
令和5年度/第32回 | 4,176 | 2,892 | 69.3 | 4,111 | 2,887 | 70.2 |
直近の様子を見てみると、はり師・きゅう師ともに、毎年4,000人前後が受験して3,000人前後が合格しており、70%前後の合格率で推移しています。
鍼灸師が活躍できる場は?
ここからは、資格取得後の道にはどんなものがあるのか、鍼灸師として働ける職場と仕事内容を見ていきましょう。
1. 鍼灸院
鍼灸師が働く場としてまず思い浮かぶのが鍼灸院でしょう。来訪した患者に鍼や灸の施術を行います。鍼灸院のほか、鍼灸メニューを提供する整骨院や接骨院に勤務するケースもあります。
2. 医療機関
医療機関で働く鍼灸師もいます。鍼や灸の知識と技術があることにより、整形外科やリハビリテーション科などで活躍できるでしょう。
3. 介護福祉施設
鍼灸師は、高齢者や介護を必要とする人々が利用する介護福祉施設で働くことも可能です。特別養護老人ホーム・ショートステイ・デイサービスなどの場面で、リハビリのサポートなどを行います。
機能訓練指導員としても活躍できる
機能訓練指導員とは、介護サービス利用者に対し、可能な範囲で身の回りのことを自分でできるよう、機能回復やリハビリなどを通じて支援を行う職業です。以前は看護師や理学療法士などが対象でしたが、平成30年度に鍼灸師も対象に加えられました。
「鍼灸師以外の機能訓練指導員が在籍する施設で6ヶ月以上の実務経験がある」という要件を満たせば、鍼灸師も機能訓練指導員として働くことが可能です。
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4. スポーツ施設
スポーツ施設やクラブチームに所属して働くケースも。スポーツトレーナーとしてトレーニングのメニューを組んだり、メディカルトレーナーとして選手の心身のケアをサポートしたりします。
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5. 美容サロン・美容鍼灸院
鍼灸師は、美容サロン・美容鍼灸院での活躍にも期待できます。美容鍼など、美に寄与する鍼灸の施術を行う仕事です。モアリジョブでは、実際に美容鍼灸師として働かれている白金鍼灸サロンフュームの折橋梢恵さんにインタビューを行い、美容鍼灸師についてお話を伺っています。
- 「美容鍼灸の基本は、「お客さま本来の美しさを引き出すにはまず体が健康であることが大切」という考えです。
そのため、まずは鍼灸でお客さまが日ごろ感じている心身の不調をしっかりと整えます。女性は加齢やライフステージの変化によって、「肩こり」「腰痛」「冷え症」「月経不順」「生理痛」「更年期障害」「PMS症候群」「うつ」などに複合的に悩まされることが多々あります。そういった悩みや症状に幅広く対応しています。
体の不調を整えたら、エステの施術も加えながら「美顔」「美髪」「痩身」「体型」「エイジングケア」といった美容の悩みを解決していきます。健康と美容の願いを両方叶えられること、しかも同じサロンで一度にケアできることが、美容鍼灸の強みですね。」
引用元
美容鍼灸でたくさんの女性を笑顔にするために【美容鍼灸師・白金鍼灸サロンフューム 折橋梢恵さん】#2
鍼灸師の給料はどれくらい?
鍼灸師として働く場合に気になるのが「給料」です。鍼灸師はどれくらいの収入を得られるのでしょうか。
令和5年の「賃金構造基本統計調査」において、鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師をまとめた「その他の保健医療従事者」の10人以上規模企業での月給(「きまって支給する現金給与額」)は、30万5,300円でした。
また、同調査結果から算出された「はり師・きゅう師」の年収は、459万3,000円です。あくまで目安ですが、月収や年収はこのくらいだと理解しておくとよいでしょう。
引用元
e-Stat:賃金構造基本統計調査 令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種
e-Stat:賃金構造基本統計調査 令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種(ダウンロードデータ)
job tag:はり師・きゅう師 – 職業詳細
e-Stat:日本標準職業分類(平成21[2009]年12月統計基準設定) 専門的・技術的職業従事者 その他の保健医療従事者 あん摩マッサージ指圧師,はり師,きゅう師,柔道整復
自分に合った職場を探すには?
次に、鍼灸師として働く職場を探すときにはどんな方法があるのか、2つのサービスを紹介します。
就職・転職エージェントを利用する
仕事を探している人の就職活動をサポートしてくれる「就職・転職エージェント」と呼ばれるサービスでは、民間の人材会社が、求職者のスキルや適性などをもとにぴったりの職場探しをサポートしてくれます。
鍼灸師には、医療系や美容系に強いエージェントがおすすめです。
求人サイトで探す
多数の募集情報のなかから、自分で希望条件を決めて職場を検索できる「求人サイト」を利用する方法です。大手企業から個人経営の施術院まで、多様な求人が掲載されています。
エージェントと同じく、医療系や美容系など、自分の進みたい業界に強い求人サイト(「リジョブ」など)がよいでしょう。
鍼灸師の履歴書で押さえておきたいポイントとは
鍼灸師が履歴書を作成するときのポイントには、以下のようなものがあります。
・年を書くときは履歴書全体で和暦か西暦かを統一する
・略字や略称を使わず正式名称で書く
・空欄の項目は作らず、何も書くことがない場合は「なし」と記入
・手書きの際、鉛筆・シャープペン・修正液は使わず、黒のペンで書く
・誤字脱字や間違いがないように見直し、ミスがあればきれいに書き直す など
また、履歴書のなかでも「志望動機」は重視されやすいため、志望先企業について下調べし、理念や求める人物像を理解して、適した内容を書きましょう。
自分の経験も振り返りつつ、なぜその職場で働きたいのか、自分が職場にどう貢献できるかなどを伝え、意欲をアピールするとよいでしょう。
鍼灸師の面接で好印象を与えるには
鍼灸師が面接試験を受ける際のポイントも頭に入れましょう。
・身だしなみ(服装・髪型・ひげなど)は派手なものを避け、清潔感を意識して整える
・表情や姿勢に気をつける
・あいさつや受け答えのときは大きな声ではっきり話す
・相手と視線を合わせ、適度に笑顔を向ける
・よく聞かれる質問があるのでスムーズに答えられるように練習しておく など
鍼灸師として働くには資格が必要!
鍼灸師は資格なしではできない仕事で、はり師・きゅう師両方の国家資格が必要です。鍼灸院以外にも、医療・介護現場やスポーツ・美容分野など活躍できる場の多い資格なので、取得後は学んだことを存分に活かして働きましょう。
また、鍼灸師として働きたい人には、美容や施術関連に強い求人サイト「リジョブ」での仕事探しをおすすめします。職種やエリアなどを絞れるほか、こだわり条件を設定したりキーワードを入力したりして検索でき、自分にぴったりの職場を見つけやすいです。