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特集・コラム 2022-12-08

鍼灸師の資格は働きながらでも取得できる?資格が取れる学校や利用できる制度をご紹介

鍼灸師は介護や福祉に留まらず、美容やスポーツなどさまざまな分野で活躍しています。活動できる分野が広がったことにより、鍼灸師の数は増加傾向にあり、介護や福祉以外の場で働きたいと考えている方も多いのではないでしょうか。

鍼灸師になるには、資格を取得する必要があります。そのため、勉強時間を確保しなければいけません。

今回の記事では、働きながら鍼灸師を目指す方にスポットをあて、学校や利用できる制度についてご紹介します。

鍼灸師(しんきゅうし)の仕事について

鍼灸師の職業について、大まかなことしか知らないといった方もいるかもしれません。この職業の理解を深めてもらうために、鍼灸師の仕事内容や使用道具・求められる能力についてご紹介します。

鍼灸師とは

鍼灸師は、鍼や灸を使い治療を行う医療技術者のことをいいます。鍼灸治療は、健康維持・疲労回復・病気の改善や予防を目的としており、鍼・灸を使用して、体のツボや筋肉を刺激することで血行が良くなり、自然治癒力を高める効果が期待できます。

鍼灸師が使う「はり(鍼)」と「きゅう(灸)」

鍼灸治療は、言葉の通り鍼と灸を使用します。それぞれ特徴があるため、知っておきましょう。

鍼は、病院等で使用される注射針に比べて細いのが特徴です。病院で主に使われる針の太さは約0.4〜1.6mmなのに対して、鍼灸治療で使用する鍼の太さは0.14〜0.34mmです。鍼はごく細いので、刺した時の痛みをあまり感じません。また、鍼の形状は丸く、鋭利な形状をしている他の針とは違います。

灸で使用されているモグサの原材料は、乾燥したヨモギの葉を精製したものです。ヨモギには、健胃・解熱・利尿などの薬効成分が含まれているため、灸治療に適しています。

鍼灸師の仕事は主に4つ

鍼灸師の目的は、鍼と灸を用いて体の免疫力を高めることで、活動分野は介護や福祉だけではなく、美容やスポーツにも広がっています。鍼灸師の基本的な仕事内容4つをご紹介していきましょう。

1.鍼療法

鍼療法は、皮膚に針を刺入することで刺激を与え、血行の促進などを図る中国医療のひとつです。鍼療法を行うためには、体の経穴といわれるツボの位置を把握していなければいけません。

電流を針に流すなどさまざまな方法を駆使し、利用者に合う治療を施します。

2.灸療法

灸療法は、モグサを燃やして熱による刺激を与え効果を得る療法のことです。灸療法ではモグサを皮膚の上に乗せて燃やす直接灸と、緩衝材を皮膚とモグサの間に使用する間接灸に大きく分かれています。

鍼灸院によっては、直接灸を行うため痕が少し残ってしまう場合があります。しかし、ずっと痕が残ることはなく、時間の経過とともに消えるため安心してください。

3.脈診

脈診は、指で脈拍のリズムや強弱を診ることで身体の状態を診断する診察方法の一つです。東洋医学では、両手首に人差し指・中指・薬指を当てそれぞれの指に感じる脈の違いから、総合的に身体の状態を判断します。

4.望診

望診は、自身の目で診察者の状態を確認する診察方法です。主に診るのは、顔や皮膚の色・精神状態・体つき・舌の色や形状です。この診察を行うためには、身体の知識はもちろんのこと、観察力が必要です。

鍼灸師に求められる能力

鍼灸師は、鍼や灸を用いて施術をするため、鍼灸に関する知識が必須です。それに加えて、就職する施設によって必要な知識を備えなければいけません。

また、利用者に合わせた施術方法を実施するため対応力も欠かせません。施術方法を考えるうえで、利用者の悩みを知る必要があります。詳細な情報を得るために、コミュニケーション能力が必要になるでしょう。

鍼灸師はどうすればなれる?

鍼灸師になるためには、さまざまなステップを踏む必要がありますが、働きながらでも鍼灸師を目指すことはできます。ここでは、鍼灸師資格を取得するまでの過程をご紹介しますのでぜひチェックしてください。

国家資格の取得が必要

鍼灸師は、「はり師」と「きゅう師」の2つの国家試験に合格することで、その職種に就くことができます。「鍼灸師」という国家資格はありません。鍼灸に関して誤解されやすいことなので、覚えておいてください。

この2つは別の国家資格のため、それぞれ個別の受験が可能です。鍼灸師を目指す方のなかには、両方の試験を同時に受ける方もいます。

最短で3年間学校へ通い養成課程を修了する

「はり師」および「きゅう師」の勉強は、最低でも3年の期間を要します。その理由は、それぞれの受験資格が厚生労働省と文部科学省が指定する養成機関を卒業することで、この機関の養成課程が3年以上と定められているからです。

これらの規定は、厚生労働省「はり師国家試験の施行」と「きゅう師国家試験の施行」に記載されていますので、詳細を知りたい方は確認してください。

通信教育で資格を取得することはできない

養成機関で3年勉強することが長いと感じる方がいるかもしれません。しかし、養成機関以外の通信教育等では、資格を取得することは不可能となっています。その理由は、鍼灸師は医療技術職で、技術を習得する必要があるからです。

通信教育は知識を身に付けることは可能ですが、技術を習得することはできません。

社会人の方は夜間学校もしくは大学・専門学校へ通う

働きながら鍼灸師の資格を目指すためには、夜間教育を設けている大学もしくは専門学校に通うことが最も良いでしょう。夜間学校は、夕方から講義がスタートするため、日中働いている方でも通うことができます。

資格が取得できる専門学校・大学

鍼灸師の資格を取得するためには、国が指定している養成過程をもつ大学、もしくは専門学校で学ばなければいけません。鍼灸師の資格を取ることができる大学・専門学校を4つご紹介します。

働きながら取得を検討している方のために夜間部を設けている機関も紹介していますので、ぜひチェックしてください。

東京有明医療大学|保健医療学部 鍼灸学科

4年制なので、じっくり鍼灸について学びを深められる大学です。特徴的なカリキュラムとしては、スポーツ鍼灸学、レディース臨床鍼灸学、附属鍼灸センター実習などがあげられます。近年、美容やスポーツの世界でも鍼灸治療は注目されており、それらの分野を学ぶことで将来活躍できる場を広げられるでしょう。また、こちらの大学には大学付属の鍼灸センターがあり、現場で実践的な臨床スキルを身に着けられる点も魅力です。

引用元:東京有明医療大学 保健医療学部 鍼灸学科

東京医療専門学校|鍼灸科

こちらは3年制なので、大学よりも短期間で実践的な知識・技術を身に着けたい方にぴったりです。年次ごとに、基礎分野、専門基礎分野、専門分野、臨床実習がカリキュラムに組み込まれています。臨床実習においては、附属施術所でおこなう実習と学外の協力施設でおこなう実習があり、多彩なシーンでの臨床経験を積める点も魅力です。

引用元:東京医療専門学校 鍼灸科

鍼灸師を目指すなら大学と専門学校のどちらがいいの? メリット・デメリットを解説

日本医学柔整鍼灸専門学校|鍼灸学科(夜間部)

こちらの学校の夜間部は、都内で最も遅い18:20から授業が開始されています。また、駅から近いことも魅力のひとつです。カリキュラムが充実していることはもちろん、土日や平日の授業開始前の時間帯に実技を練習できる「夜間部補講制度」や、国家試験に向けた「夜間部のための国家試験対策制度」があり、サポート制度も整っています。

引用元:日本医学柔整鍼灸専門学校 鍼灸学科

東洋鍼灸専門学校|鍼灸科(夜間部)

こちらの夜間部は、月曜日から金曜日の18時~21時10分まで授業がおこなわれます。伝統的な鍼灸を実践的に学べるほか、ゼミでは美容鍼や小児鍼を学ぶこともでき、興味やキャリアプランに応じて必要な知識・技術を得られます。また、開業の手続きや税務等を学べる開業セミナーが開講されているので、将来開業を視野に入れている方におすすめです。

引用元:東洋鍼灸専門学校 鍼灸科

鍼灸師を目指すなら利用できる制度を確認しておこう

鍼灸師の資格を取得するためには、養成機関の卒業が必須の条件です。大学や専門学校にかかる費用は、およそ450〜650万円と言われています。入学者の中には、費用を準備することが難しい人ももいるのではないでしょうか。

公共団体や大学では、奨学金制度や支援制度、授業料等免除制度があります。それらの制度を5つご紹介します。

日本学生支援機構奨学金|貸与型

日本学生支援機構がおこなっている貸与型の奨学金制度は、大学や専門学校に行くために国が奨学生を支援する制度です。借りられる金額は制度の種類や学校によって異なるほか、採用基準や年度の予算もありますので、希望する場合は、できるだけ早めに確認する必要があります。

引用元:独立行政法人 日本学生支援機構| 奨学金

高等教育の修学支援新制度|給付型

高等教育の修学支援新制度は、2020年4月から開始される給付型の奨学金制度です。世帯の収入などの要件に合う学生が対象になります。学校の成績だけでなく、明確な進路意識と学びたいという意欲、学修状況を確認したうえで給付される奨学金です。

引用元:文部科学省|高等教育の修学支援新制度

専門実践教育訓練給付金制度

専門実践教育訓練給付金制度は、ハローワークから支給される制度です。厚生労働大臣が指定した専門実践教育訓練の講座を受講し、かつ一定の要件を満たす場合に費用の一部が支給されます。金額は最大で学費の70%(最長3年間で上限は168万円)です。

引用元:厚生労働省|専門実践教育訓練の給付金のご案内

東京有明医療大学|授業料等免除制度

東京有明医療大学には、学校独自でおこなっている授業料等免除制度があります。対象は一般入試成績最優秀入学生、学業成績最優秀及び優秀在学生、家計急変等の経済的理由による授業料納入困難の在学生です。内容や金額は対象によって異なります。

引用元:東京有明医療大学 授業料等免除制度

東京医療専門学校|夜間特修コース授業料奨学制度

東京医療専門学校にも学校独自の奨学金制度があります。対象者として認定された場合は、授業料を減免するという制度です。なお、夜間特修コース授業料奨学制度にも2種類あるので、入学する学科で使用できる制度を確認しておくとよいでしょう。

引用元:東京医療専門学校 夜間特修コース授業料奨学制度

鍼灸師の就職先

鍼灸師は、主にマッサージ院や鍼灸院に就職することが多いです。しかし、ニーズの拡大に伴い、さまざまな分野で鍼灸師が必要とされており、鍼灸師院以外の場所へ就職する方もいます。マッサージ院や鍼灸院以外の就職先を4つご紹介しましょう。

1.美容鍼灸サロン・エステサロン

美容鍼灸サロン・エステサロンでは、肌荒れやニキビなど自律神経の調整を必要としている方へ向けた施術を行います。近年、脱毛サロンなど美容の需要が高まっているため、鍼灸師として美容系に携わりたい方におすすめです。

2.介護福祉施設

介護福祉施設は、高齢者の増加に伴いさまざまな業種の人手が必要です。身体に負担がかかる高齢者へ向け、身体の負担を減らす・健康維持を目的に鍼灸治療は大切な役割を担っています。高齢者の支援や介護福祉業界に興味がある方には、おすすめです。

3.女性向け鍼灸院

女性向け鍼灸院は、不妊症・乳腺炎・月経痛などの婦人科病状や、胃腸の痛み等の病状で悩む女性へ施術を行う鍼灸院です。女性向け鍼灸院では、病状に特化しているものもあれば、美容などの施術を合わせて提供している鍼灸院もあります。女性利用者のみの場所で働きたい女性の方におすすめです。

4.スポーツ施設

スポーツ施設では、体の故障やコンディション維持、疲労回復などに特化した鍼灸治療を行います。スポーツ選手にとって体のケアは非常に重要ですので、スポーツに関心がある方・スポーツ選手のサポートをしたい方におすすめです。

働きながらの勉強は無理せずに進める

今回は、鍼灸師の仕事内容や働きながら鍼灸師の資格を取得したい方へ向けた学校の紹介をしました。鍼灸師の資格を取得するためには、社会人の有無に関係なく大学や専門学校で養成過程を修了して、国家資格である「はり師」と「きゅう師」の2つの試験に合格しなければいけません。

勉強期間が最低3年であることから、働いている方にとっては大変な場面もあるでしょう。鍼灸師の勉強に力を入れすぎて本業に支障をきたさないように、無理せず勉強に取り組んでいきましょう。

引用元
厚生労働省:はり師国家試験の施行
厚生労働省:きゅう師国家試験の施行
東京有明医療大学:鍼灸学科
東京医療専門学校:鍼灸科
日本医学柔整鍼灸専門学校:鍼灸学科
東洋鍼灸専門学校:鍼灸科
東京有明医療大学 授業料等免除制度
東京医療専門学校 夜間特修コース授業料奨学制度
独立行政法人 日本学生支援機構: 奨学金
文部科学省:高等教育の修学支援新制度
厚生労働省:専門実践教育訓練の給付金のご案内

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