トレンドを創る人 Vol.5 Garland 榊原章哲さん SNSから新天地開拓の時代へ #1

榊原章哲さん率いる「Garland」(ガーランド)は、オープンから6年にして都内に4店舗を運営する実力派サロン。東京ブレンドのメンバーでもある榊原さんは、サロンワーク以外にも雑誌の撮影やヘアーショー、勉強会などを精力的にこなす毎日を送っています。
サロン名の「Garland」とは、花冠や花飾りの意味が込められているそうで、施術後にまるで花冠をつけた時のように、心弾むヘアスタイルを提案しているのだとか。
作品を見れば誰もが “可愛くて可憐で、男の子から愛されそうなデザイン”と感じる程、その世界感はハッピーオーラに満ちています。きれいになりたい女性の心を鷲づかみにする「Garland」とは、一体どんなサロンなのでしょうか。

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成熟した街より、発展途上の街に可能性はある

――この頃のご時世を考えると、6年で4店舗を運営できるなんて驚異です。
「そうですか? そんな感じはないんですけどね。ただ、スタッフが増えていて、現在レセプションやネイリストも含めると約40人在籍しています。だから、必然的に箱を増やすしかないという感じですかね」

――初のオープンは原宿ですね。
「はい。次に吉祥寺、その次に原宿の「Galand」の隣に別ブランドの「CIECA.」をオープンさせ、一番新しい場所が池袋店です」

――池袋って、ちょっと意外でした。なんとなく榊原さんのイメージとは違うというか…
「僕はこの段階で、美容が発展途上している地域に出したかったんです。原宿や青山、銀座などはもう成熟してしまっていて正直、次につながる隙があまりない。池袋は、練馬エリアの方や埼玉に住む方にとって“都心への玄関口”ですよね。人もとても多いです。とはいえ、僕自身も池袋にはちょっと怖いイメージを持っていたんですけど」

――でも実際は違いましたか?
「はい、違いました。今は駅前もとてもきれいで、おしゃれなカフェやショップもどんどん増えていますね。池袋を拠点にしてお買いものを楽しむ方も大変多いですから、新規の方もたくさんいらっしゃいます」

――最近は、有名店が郊外などに出店することが目立ってきていますね。でも、原宿や青山など、美容の聖地を目指して就職した若い子が郊外などに移動になると、なかなか納得しないと耳にします。その辺はどうお考えですか?
「確かにそうですね。ですから、池袋店のアシスタントは現地採用で新規募集しました。
スタイリストの場合は、何年か技術者をやるとわかってきますね。表参道界隈などはもう飽和状態が長く続いているわけで。努力すれば数字が上がるという時代ではないですよね。
だから、先のことを見据えたスタッフなんかは、新天地でのチャレンジに理解を示してくれています。実際、池袋店は新規のお客様も多く、常に右肩上がりの状態です」

榊原さんの作品
↑榊原さんの作品。女性の可愛らしさを引き出しつつ、エッジのあるおしゃれ感を残すデザインは業界内でも評価が高い。

独立志向がなかった僕が出店を目指した理由

――美容業界の集客の仕方は、ここ数年どんどん変化してきていますよね。榊原さんはどう感じていますか?
「僕はもともと、独立志向はあまりなかったんです。7~8年前までは集客のひとつに雑誌掲載があったと思うんですけど、当時は雑誌撮影の仕事も多かったので充実していました。
でも、SNSの普及と共に急激にネット集客が主流になった。その少し前ぐらいからですかね、僕自身にオリジナリティが出てきたわけです。これからは自分で撮影して自分で発信して、つまりサロンワークも撮影もPRも全てサロンの中で行えるスペースが欲しくなったんです」

――すべてをサロンで…ですか?
「はい。簡単に言いますと、ハウススタジオのようなスペースの中でサロンを運営してみてはどうかと…」

――面白い発想ですね。
「だから、一軒家を探していましたね。そこをリノベーションしてハウススタジオのような作りにしたんです。自然光も美しく入り、いろいろな場所に撮影シーンがあるといった感じです。ありがたいことにそれまで散々、一般誌の撮影をしてきていますからスペースの完成形は見えていました。さほど難しい作業ではなかったです」

――その完成形こそが「Garland」ですね。
「はい。そこからは自社のホームページやSNSなどを通じてどんどん作品を発信してきました。早い段階でここに着目していたので、効果は大きかったです。集客にもさほど困ることなく、オープン後はすぐに売り上げが安定しました」

榊原章哲さん
↑原宿店は一軒家をリノベーションしているため、まるで避暑地の別荘のよう。原宿とは思えない癒し感のあるおしゃれな空間が素敵です。

――順調なスタートを切れたわけですね。
「そうだと思います。でも、今はSNSをやってさえいれば集客できるという時代ではない。若い美容師さんほど大変な時代です。だから、先ほどの池袋店の話に戻ってしまいますが、地域性を大事にする、その地域ならではのお客さまを新規で取り入れることが、地味ではありますが大切かと」

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店長と女性スタッフ。2本柱がサロンを支えてくれている

――本当にその通りですね。
「それと僕は各店舗、基本的に店長のやりたいように運営してもらっているんです。もちろん毎月、幹部会議は行って僕の方針を伝えているのですが。例えばネイルを行うサロンとそうでないサロンがありますし、アイラッシュをやりたいスタッフがいればアイラッシュのサロンを作ります。だから、アイリストを探している最中なんですよ」

――店長が決めていいんですか。その地域に必要なものは取り入れるスタンスなんですね。榊原さんって、とてもニュートラルな思考をお持ちなんですね。
「店長がその店のチーム力をつけていくというやり方です。そのせいかわからないですけど、うちは離職率も少ないほうだと思います。女性のスタッフも多いですし。よく、“女性ばかりの職場だとやりにくいでしょう?”なんて質問されるんですけど、そんなこともないですよ。それに、サロン全体の雰囲気が明るくなるんですよ。雰囲気を作るのはやはり女性のほうが上手だなぁと思いますね」

――女性を多く雇用することで気を付けている点はなんですか?
「体力的には男性にかなわないこともありますから、ダウンしそうになったら休ませることも大事ですね。それと、問題がおきたときには直ぐに話し合わない(笑)。少し時間をおき、クールダウンさせてからコミュニケーションを取るほうが冷静に物事が進みます。この仕事は体力的にも精神的にもきついですが、休暇を与えたり、時間をかけて励ますことで
もう一度這い上がってくる女の子もたくさんいます。落ちて上がった子というのは怖いものなしで、その先は急成長しますよ」

美容業界で知名度のある榊原さんですが、話してみると脇役を好む印象で、常にスタッフの気持ちや、やる気を優先させた運営を心がけています。第二回目は“くじけないアシスタントを育てる方法”や“若手スタッフのモチベーション”について伺います。

取材・文/小澤佐知子
撮影/石田健一

Salon Data

店内
店内
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Garland(ガーランド)

可愛くてハッピーオーラ漂うヘアスタイルが得意と言われるサロン。
そのため、ファッション誌やヘアカタログの常連で、おしゃれ女子たちの注目を集めている。現在、一軒家をリノベーションして作られた原宿店と吉祥寺、池袋に各1店舗を経営する他、別ブランドのCIECA.も原宿にある。

http://garland-tokyo.jp/

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