当たり前を最上級にして届ける、できるだけ“普通の”美容室でありたい『THE DAY』
学芸大学駅から徒歩3分のところにある『THE DAY』。「なんでもない1日が、少しでも素敵な1日になるように」というコンセプトの通り、ペンやコーヒーカップに至るまで洗練された物で取り揃えられています。しかしオーナーの小澤さんは意外にもごく普通の美容室でありたいと思っているのだとか。そこに込められた思いについて伺いました。
スタッフ全員で作り上げ、お店に愛着をもってもらう
――店内に置かれているものにもこだわりを感じますね。
「よくそのように言っていただくのですが、僕自身は何か特別なことをしているというつもりはなく、できるだけ普通の美容室でありたいと思っています。地元に愛されて育ててもらえるようなお店でありたいんですよね。ただ、妥協せず当たり前のものを最上級にして届けることは意識していて、一番いいものを選んでいるという自信はあります。ここに置いてあるものはペン1本に至るまでなんでもそうです。そして、それを僕ひとりで選ぶのではなく、スタッフ全員を巻き込んで楽しみながらやるということを大切にしています」
――スタッフ全員で選ぶというのはすごいですね。
「たとえば最近コーヒーカップを新調したのですが、スタッフそれぞれでインスタやネットを見たり、インテリアショップに行ったりして、全員で案を持ち寄り、最終的には岐阜県多治見で3人の陶芸作家さんによって作られている、3RD CERAMICSさんの黒泥土のカップに決めました。これを選ぶのに1年かかっているんですよ(笑)。たかだかコーヒーカップの話なんですけど、スタッフがお客さまにコーヒーをお出ししたときに、『このコーヒーカップは』とお話できると思うんですね。そうするとお客さまもスタッフもお店のことを好きになってくれるし、ここにいたらまた新しい情報が手に入るかもしれないと思ってくれるはずです。なので、こだわってやるというより、楽しんで、最上級のものを見つけるというスタンスです」
自分の周りの人を幸せにしていきたい
――炭酸泉を導入しているとお聞きしましたが。
「はい。炭酸泉自体は珍しいものではないですし、導入しているお店はあると思いますが、追加料金なしで使っているお店はあまりないんじゃないかと。炭酸泉は血行を促進し、クレンジング効果が高いんです。あとは髪の修繕効果があるので、髪にツヤがでます。地肌のケアだったり、薬剤の仕上がりとか考えると、1年に1回くらい今日は贅沢して炭酸泉のオプションを付けようと思われるより、毎回のクオリティをあげて提供することのほうが大切だと思うんですね。1、2ヵ月に1回来てもらうと、定期的に地肌のリセットができるので、長く通ってくれるきっかけになるのかなと。インテリアの話もそうですけど、このお店って常によくしようと努力しているよね、と感じてくれれば、がんばっているから応援してあげようと思っていただけると思っています」
――オリジナルシャンプーも作られているそうですね。
「これは一周年記念の時に何かしたいなという思いがありまして。今まで僕が働いていたサロンだと、そういうときにキャンペーンをやるお店が多かったんですよね。でも僕は1年間お店を経営できたことへの感謝の気持ちをプレゼントに込めたいと思って、内容成分にこだわったシャンプーをプレゼントしたんです。それがとても評判がよくて、商品化した次第です。ちょうど今も2周年限定配合にして配ったところで。うちのお店はキャンペーンというのはしたことがないんです。僕としてはちゃんとした技術を提供して、お金もきちんといただくのが基本スタンスで、感謝を伝えるときはプレゼントしたいという思いがありますね」
――最後に今後の目標を教えてください。
「お店としてこういう形にしていきたいという思いはあまりなくて、スタンスを崩さず、自分自身がスタッフを大切にすることを続けていきたいと思っています。その形が変わっていくだけかなと。たとえば、今だったらスタッフにお客さまがついて楽しく働けて、しっかりとした給料を出すことを念頭に置いていますが、2年後、3年後に、そのスタッフがこのお店のトップになっていたら店舗展開が必要になるかもしれないですし。周りにいるひとりずつを思い浮かべて、その人に対してベストな環境を提供し続けたいと思っています。毎日顔を合わせたいスタッフと仕事を真面目に、楽しく取り組むところさえブレなければ、必然的にいい形になっていくはずです。お店を何店舗持っているとか、売上げがどれくらいあがったということより、自分と一緒にいてよかったと思ってくれる人がどれくらいいるかということのほうが、幸せだと僕は思うんですよね」
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