多角的サロン経営を目指して! CANAAN代表・長崎英広さん #1
ヘアカラーの分野で実績を上げる「CANAAN」(カナン)は、今や日本を飛び出し、東アジアの美容業界でも名を馳せるほど注目されているサロンです。
代表の長崎英広さんは、高橋マサトモさん率いるMINX(ミンクス)出身で、当時からヘアカラーに対して研究熱心でした。その後、独立し、今や年間で約120本ものカラーに関する外部活動をこなすほどの実力者へと飛躍しました。
乱立する原宿界隈のヘアサロンの中で、決して埋もれることなく、どのようにサロンを成長させたのか。その秘訣についてお伺いしました。
強烈な強みを持たないと日本一の激戦区では埋もれてしまう
CANAANは明治神宮前のキャットストリート沿いに店を構えています。原宿や表参道、渋谷からも人が集まる、まさに美容室激戦区。四方八方に有名サロンが出店しているエリアですが、CANAANには幅広い年齢のお客様が集って来ます。
――長崎さんと言えばヘアカラーの巨匠という印象です。なぜ、カラーにこだわりを持っているのですか?
「独立するにあたって、僕は強みを打ち出したかったんです。CANAANというブランドを広めるためには、なにか特徴がないといけない。このエリアに出店するなら、強みがないとやっていけないと思っているんです」
――なるほど。その強みがヘアカラーだったのですね。
「僕は独立前、MINXに15年以上勤めていました。MINXは非常にフレキシブルな経営方針で、時代に合わせた戦略をスムーズに取り入れる姿勢があります。そんな中、僕は“これからはカラーの比率が上がる”と思うシーンがあって、そこを追求する活動を始めたんです。当時からMINXはとてもブランド力がありましたから、その後押しもあって僕が30歳の頃には、どんどんカラーセミナーの依頼がくるようになりました」
――つまり、今から15年ぐらい前からカラーセミナーや商品開発をされていたということですね?
「はい、そうですね」
――当時はカラーを武器にしているサロンはそんなに多くなかった印象です。先見の明がありますね。
「とはいえ、カラーリストという存在が認知されはじめた頃ですからね。メーカーさんにとっても、当時はカラー剤が生命線だったと思います。じゃあ、今はどうかというとSNSでヘアカラーの作品をアップする美容師が多いから、デザインカラーがブームになっています。その結果、カラーテクニックを学びたい美容師さんは全国にたくさんいるのだと思いますね」
――年間で120本も外部活動のお仕事があるなんて、驚きです。
「ですから、僕は月曜日~木曜日はセミナーや商品開発でスケジュールが埋まってしまうんですね。金曜~日曜の3日間はサロンワークをしています。これが僕の基本的なルーティンです。ただ、今では中国、韓国、台湾などの東アジアで行うセミナーも多いため、2週間サロンワークに出られないときもあるのですが…」
将来的には全く違うタイプのサロンを運営したい
――最近は渋谷や原宿などでも低価格なカラーを売りにしたサロンが増えてきたと思うのですが…
「そうですね。でも僕は否定しません。むしろアリだと思っています。ひとつのビジネスモデルですよ。だって、ブランドサロン的なやり方だけでは今の時代は通用しないと思いますよ。僕がアシスタントだった頃とは違いますから…。
僕も将来的には別ブランドの出店も考えているのですが、それは郊外で展開したい。でも、郊外で今のCANAANのスタイルを通そうとは思わないです」
――なんだか勿体ないお話し…(笑)。
「原宿・表参道界隈のサロンは端的に言えば“デザインを買いに来る場所”なんです。でも、郊外は“長く通えるサロン”が求められている。長く通えるための条件は、価格もそうですが、やはり美容師側の人間性がとても問われる。当然、同じ経営方法ではないんですね。
これらのことを含めると、僕は低価格サロンってアリだと思うんです。でも、CANAANのスタッフなら、僕も含めて郊外や地方サロンに技術を教えることができるのも利点。その辺を企業の中でうまく動かすことができると思っています」
――豪華な社内向けセミナーですね。効率的なアイデアだと思います。
「表参道周辺のサロンに勤めるなら、なによりデザインがずば抜けていないとダメ。その中からスター選手を何人輩出できるかが肝になってくるのですが、地方の場合は長く太く働ける環境作りが大切だと思うんです。だから、地方で大成功されているサロンの経営者の方は、とにかく人を大事に育てていらっしゃる。これは、とても勉強になりますね。
僕はMINXで学んだブランドサロンの在り方と、郊外で成功しているサロンの人材育成と経営手腕、このふたつを上手に融合させながら運営を考えていくことが、これからの時代は大切なんじゃないかと考えています」
ブランドサロンに必要なのは技、センス、接客の3拍子
――ではブランドサロンと低価格サロンの違いはなんだと思われますか?
「それなりの値段設定をするということは、技術、センス、接客の3つが長けていないと成立しません。この3つで勝負するのがブランドサロンです。確かに低価格サロンが増えていますが、以上の3つで差別化を図ることが大事。特にブランドサロンにおける接客によるサービスは、これから先、よりシビアにチェックされる部分だと感じます。
これらをクリアできるかどうかは、教育にかかっています。以前に働いていたMINXは、僕が入社当時の社員数は30人程度でしたが、独立したときには200人に増えていました。会社が成長する過程を見ることができたことは僕の財産です。代表取締役の高橋マサトモさん、奥様である故・鈴木美枝子さんはスタッフへの思いが深く、教育に非常に熱心でしたし、美枝子さんに関してはお亡くなりになる間際まで僕たちを育ててくれました。その経験から、なにより教育の大切さを実感しているし、教育がきちんとできていないサロンは、長く残れないと思っています」
2回目のインタビューでは「長崎さん流・信頼を勝ち取るプレゼンテーション術」についてお伺いします。
取材・文/小澤佐知子
撮影/田中大三
Salon Data
CANAAN(カナン)
染めるたびに髪質改善できる白髪染めなど、5社以上の中からオーダーメイドなカラーをカスタムしてくれるサロン。カラーや白髪染めによるダメージを気にする人の間で、「髪が傷まない」「ツヤがアップした」と評判のサロンです。
また、余分な薬剤をオフするかけ流しの高濃度・炭酸泉スパシャンプーを採用。クリーンで健康的な頭皮が蘇り、美髪を育みます。
http://www.canaan-salon.jp/
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