ひたすら練習した日々から得た大きな財産 『pour toi』
自身が描いた夢の通り、30歳で独立を果たし「pour toi」のオーナースタイリストとなった中川さん。その確かな技術と高いセンス、ヘアスタイリストとしての華やかな経歴に注目が集まっていますが、実はその内側にはたくさんの努力がありました。後編となる今回は、中川さんのヘアスタイリスト観を中心に伺います。
猪突猛進？決めたらとにかく前を見る
――そもそも中川さんが美容師という職業を意識したのはいつの頃ですか？
「中学2年生の時で、美容師になりたい！と思った翌日にいつも通っている床屋に行き、そこで勉強のために働かせてくださいと直訴しました（笑）。もちろんお店の人は驚いて、最初は断られたものの学業をちゃんとする約束で土日だけ勉強させてもらえることになりました。実質働くというよりは仕事内容を見せてもらう感じでしたが、この時に目上の人や年配のお客様と話す機会が多く、結果的にそれがコミュニケーション力の土台になったのかなと思います。その後高校在学時にも理容室でアルバイトをし、卒業後美容専門学校へ進んだのですが、まあ不器用で（笑）。みんなができることができないから、ひたすら練習。朝も昼も夜も練習しましたね（笑）。負けん気が強い性格も幸いし、自分が不器用だという自覚もあったのであれほど練習できたんだと思いますが、その後就職しても何度も壁にぶち当たりました。壁が出現するたびに辞めちゃおうかと思いましたが、いつも周囲の人に助けられてここまで来られたんです」
技術職は10年で一人前、という祖父の言葉
――30歳を機に独立したのには理由がおありなのでしょうか？
「美容師にとって特に早いわけではない30歳での独立を僕が目処にしていた理由は祖父の言葉でした。祖父が“技術職は10年やって1人前”と常々言っていたことが頭にあり、10年目となる30の年に独立をと決めていましたね。先ほど言ったように僕は不器用だったこともあって、何度も美容師を辞めようかと思ったことがありましたが、やっぱりこの仕事は楽しい。まだ独立して間がないのでこれからの展開は漠然としていますが、今後信頼できる仲間に恵まれればこの店もスタッフを増やし、できれば異なるコンセプトのお店を新たに出店したいですね。とはいえ、まだ経営者としては勉強中なので、現在はセミナーなどにも参加し、経営について学んでいる最中です。ただ、僕自身が周囲の人に支えられてここまでやって来られたので、次は支える側になれればいいなと常々思っています」
サロンワークでゲストを満足させるために
――中川さんご自身がヘアスタイリストとしてスタイリングの際に気をつけている点はどこでしょう？
「再現性です。ハンドブローでどこまでサロンで作ったスタイルになれるかを重視し、お客様ご自身で思い通りのヘアスタイルが作れるカットを心がけていますね。また、お客様のオーダーを叶えるために必要となる施術のプロセスやそれに掛かる料金をしっかりと説明することも大切。こうなるためにはこうする必要がある、ということを正しく伝えることで、安心して通えるサロンになると思っています。よくインタビューの際に美容師になって良かったと感じる瞬間を聞かれるのですが、お客様が笑顔になるとか喜んでもらえるというのは基本のことなので、僕は今なお自分が美容師として感じる大きなやりがいを模索中なんです。それを見つけるために、これからもっとお客様の目線や気持ちに寄り添う店作りをしていきたいなと感じています」
サロンワークを通してその人の美や個性をより引き出す手腕に長けた中川さんだからこそ、ゲストひとりひとりに徹底して向き合える空間づくりにこだわったのだなとインタビューを終えて強く感じました。単に髪を切る、美しくしてもらう、といった以上の何かがある空間。それがpour toiの唯一無二の魅力なのではないでしょうか。
Profile
中川大地さん
オーナースタイリスト
東京生まれの大阪育ちで、小学３年生の時に大阪に。独立以前は大阪や東京を中心に全国で店舗を展開する有名サロンで長く活躍し、2017年に独立。ヘアスタイリストとして10年のキャリアを持ち、ナチュラル系やコンサバティブなスタイリングをはじめ、様々なヘアデザインに対応してくれる。
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