美容師のノルマの内容は?ノルマなしで働けるサロンもある?
美容師の世界でもノルマはあります。ノルマの内容やレベルはサロンによって差がありますが、何らかのノルマを課しているサロンが主流です。これから美容師になる人は、美容師のノルマの詳細を知りたいことが多いでしょう。また、すでにサロンに勤務している美容師も、自店のノルマが業界全体と比較してどうなのか気になる時もあるでしょう。ここでは美容師のノルマの一般的なパターンや、ノルマなしのサロンで働く選択肢などをまとめます。
ノルマとは?意味と由来のまとめ
ノルマとは、各個人やチームなどに課された仕事の基準量のことです。『デジタル大辞泉』によれば元はロシア語で、第二次大戦後にシベリア抑留から帰還した旧日本兵たちが伝えたとされています。ノルマは多くの業界で導入されており、美容業界も例外ではありません。
なお、法律的には従業員に対するノルマは否定されています。民法62条により労働者の義務は「労働に従事すること」だけとされており、「結果を出すこと」は入っていないのです。しかし、実際にはノルマをこなせないと職場にいづらくなるので、法律に関係なくノルマをこなす従業員が多くなっています。
美容師のノルマの5つの種類とは?
美容師のノルマには5つの種類があります。1つ目は販売ノルマです。シャンプー・トリートメントなどの商品をお客様に販売する数のノルマです。シャンプーなどの販売はこれらのサービスをした直後が一番しやすいため、アシスタントに課されることがよくあります。シャンプーなどは主にアシスタントの仕事だからです。特にアシスタントはカットでサロン運営に貢献することができないため、入店したばかりでも厳しめのノルマが課されることがあります。
アシスタントを卒業してスタイリストになっても、販売ノルマがなくなるわけではありません。多くのサロンである程度のノルマは課しています。しかしアシスタントと違いカット関係のノルマが多くあるため、販売ノルマがアシスタント時代より減るサロンもあります。
2つ目は「カットノルマ」です。「お客様のカットを月に何人分担当しなければいけない」というものです。アシスタントを卒業してスタイリストになると課されます。サロンの来客数は日によってかなり変動があるので「1日何人」のような日割のノルマはめったにありません。大部分は月割になります。
3つ目は「広告ノルマ」です。チラシやクーポンを店先で配布する枚数のノルマです。アシスタントを中心に課されることが多いですが、お客様が少ないサロンだと集客のためにスタイリストにも課されることがあります。
4つ目は「モデルカットノルマ」です。特にアシスタントがスタイリストに昇格するための条件として課されることが多くあります。「ヘアモデルを○人カットしたら昇格」というような仕組みです。合計○人と決めることもあれば、月○人を連続何ヶ月と決めることもあります。単純にモデルの人数にノルマがあるだけでなく、ボブ・ミディアム・ロングなど髪型別の人数が決まっているパターンもあります。サロンによってはアシスタントだけでなく、スタイリストに対しても定期的にモデルカットノルマを課しています。
5つ目は「指名ノルマ」です。カットノルマは指名なしのフリーのお客様もカウントしますが、指名ノルマは指名のお客様の人数だけをカウントします。これはカットノルマと比較すると、導入していないサロンが多くあります。サロンの営業スタイルによっては新規のお客様がほとんどということもあるからです。特に多数店舗を展開していて値段が安いサロンはその傾向が見られます。
ここまでのノルマはすべてアシスタント・スタイリストに課されるものです。さらに昇格してチーフ・ディレクター・マネージャーなどのポジションになると、ノルマの種類や内容も変わります。こうしたノルマを部下数人に対して達成させるなど、教育に関するノルマが課されることがあります。また、店舗の集客自体に対してのノルマもよく見られるものです。
ノルマをこなせなかった場合にどうなるかは、サロンによってルールが異なります。即座に退職を迫られるサロンは少ないですが、居心地が悪くなることが普通です。「ノルマに耐えられなくて辞めた」という退職理由は、美容師の世界でも多く聞かれます。
美容師へのノルマがないサロンもある?
サロンの中には美容師へのノルマを課していない所もあります。ノルマを課さない理由はサロンによってさまざまですが、大別すると3つになります。
1つ目の理由は「ノルマが必要ないくらいの人気店である」ということです。サロンがノルマを課す理由は売上を伸ばすためですが、すでに売上が十分に高い状態ならあえてノルマを課す必要はないのです。オーナーとしてはさらに高い売上を望むこともあるでしょうが、ノルマを課せば美容師の不満が増えて雰囲気が悪くなる、離職率が高くなるなどのリスクもあります。そのようなリスクを招いてうまく進んでいる現状を壊すよりは、現状の売上に満足してノルマをなしにした方がいいと考えるオーナーも多いのです。
2つ目の理由は「オーナーの個人的なこだわり」です。多くのオーナーはサロン勤務を経て独立していますが、サロン勤務時代にノルマで嫌な思いをしたオーナーは、自分のサロンではノルマを課さないと決めていることがあります。
3つ目の理由は「グループのイメージアップのためにしている」というパターンです。企業として多店舗を展開しているサロンに見られます。美容師の多くはノルマがないサロンで働きたいと思っているため、ノルマなしのサロンは人材採用で有利なのです。その分、売上は減るリスクがありますが、「採用のコストが減る」「優秀な人材が集ることで売上が伸びる可能性がある」というメリットもあります。このリスクとメリットを比較して、メリットが大きいと判断したグループはノルマを撤廃しているわけです。
ノルマなしのサロンに転職することも考えよう
美容師はもともとアーティストタイプの人が多く、営業ノルマをこなすのは苦手という人が多数派です。今のサロンでノルマをこなしている美容師も「できればノルマのないサロンに転職したい」と思うことはあるでしょう。
ノルマなしのサロンは徐々に増えています。たとえば自サロンのサイト・ブログ・SNSなどで効率的に集客ができている店舗は、ノルマなしのケースがよく見られます。むしろノルマをなしにして美容師に活き活きと働いてもらい、その様子をwebで伝えた方がプラスになるなどの理由です。このようなサロンは美容師にとっても働きやすい環境と言えます。
ノルマがないサロンで働きたいと思っている人は、まず多くの求人情報をチェックするといいでしょう。ノルマがないことは人材採用で大きなプラスになりますから、ノルマなしの店舗はほとんどが「ノルマなし」と求人情報に明記しています。webで求人情報を探す場合はキーワード検索で「ノルマなし」と打ち込むことで、該当する店舗だけを見ることもできます。多くの求人情報を探すには、やはり美容関連の求人情報に特化しているサイトを利用するのがいいでしょう。たとえばリジョブなどですが、美容関連の情報に特化している分、美容師が求める条件で絞り込んで検索することも容易になっています。
ノルマはうまく機能している店舗なら「全員が一丸となってサロンを成長させる一体感がある」「自身の美容師としてのレベルも上がる」というメリットもあります。しかし、単純に美容師に負担を強いているだけのサロンも少なくありません。ノルマのいい面・悪い面を両方理解した上で「自分はノルマのない店舗で働きたい」と思った人は、サイトでサロンの求人情報をチェックしてみるといいでしょう。苦手な営業から解放されてスタイリングや接客に専念できることで、お客様にとって今よりいい美容師になれる可能性も高いでしょう。