お店のファンが増え続ける秘訣とは? 安定成長する『THE CENTRAL』の取り組みに迫る!
『THE CENTRAL』はニューヨークで活躍していた美容師が集結し、立ち上げた美容室。サロンは渋谷駅からほど近い高級住宅街である松濤の高台に位置しており、米軍が所有していたマンションの一室を改装したという店内には、ニューヨークの空気感が漂っています。
今回はそんな同サロンのゼネラルマネジャーである小嶋猛さんに、サロン経営の秘訣を伺いました。
大切なのは『美容室経営』ではなく、『居心地のよいコミュニティ』を作ること
————まず、『THE CENTRAL』が持つ強みは何でしょう?
「強みはニューヨークで身に付けたハイライトの技術です。ここ最近、日本の美容業界でもハイライトの技術が普及していますが、私たちはそれよりも難しいスキルを習得しています。たとえば髪に立体感を与える、暗いトーンの髪をふんわり明るく見せる技術などが挙げられますね。ただ、高い技術力を備えているのは美容師として当たり前のことで、私はこうした技術よりも、サロンの雰囲気のよさやお客さまとの親密な関わりのほうが、ファンを掴んでいる理由だと思います」
————「雰囲気のよさ」や「お客さまとの親密な関わり」について具体的に教えてください。
「『友達の家にいる感覚でくつろいでもらう』をコンセプトにサロン作りをしています。『THE CENTRAL』というコミュニティのなかに、たまたま髪を切ることができる私たちがいるイメージですね。そのため豊富にドリンクを揃えたり、常連の方にいただいた差し入れを、他のお客さまにおすそ分けをしたりすることも多く、このスタイルがハマる方はファンになってくださいます。
またバーベキュー大会や、開店1周年、2周年パーティーといったイベントを定期的に開催しているんです。お客さまが友達を誘って足を運んでくださるので、毎回100人くらいの規模になります。イベントをきっかけにお店を気に入っていただいた方が、後日髪を切りにご来店されることも多く、好循環が生まれていますね」
旧来の美容室とはまるで異なる採用や教育
————こちらのスタッフは何名いらっしゃいますか?
「常勤のスタッフが4名、指名されたお客さまだけに対応する『面貸し』のスタッフが3名います。面貸しのスタッフは『THE CENTRAL』のスタイルをよく知っている方からの紹介を受けた美容師がほとんどです。また、新たな採用も知り合いからの紹介ですね。そのため『THE CENTRAL』のノリをよく理解したうえで入社しています。また、こちらもコンセプトに沿った発信を続けているので、それに共鳴した人が自然に集まっていると思いますね」
————スタッフの研修や教育で意識していることはありますか?
「勉強会などを定期的に開くことはありませんが、月に1回ミーティングを行っています。そこでは売上の話よりも、それぞれが将来どうしたいか、自分の夢を語り合っているんです。そしてそれに対して『こうしたほうがいいかもね』と意見を出し合い、お互いのプラスになるコミュニケーションを意識しています」
————アシスタント方はいないのでしょうか?
「アシスタントは1名在籍しています。美容師歴は5年目なので、基礎の技術は身につけていますね。スタッフの指導については『無理やり教え込むことは意味がない』と、オーナーの深津ともよく話をしているんです。技術は本人の意思があって初めて身につくものなので、閉店後に練習を強要することは一切ありません。
ちなみに、私自身が若手の頃を振り返ってみると、やはり悔しさを感じた時がもっとも技術が伸びました。ニューヨークに行き、何もできない自分に対して本当に不甲斐なさを感じたんです。『なんとかしなければならない』と必死に取り組んだ当時の経験が今に生きていると思います」
内装はお客さまとともに作り上げる
————「サロンの内装」について、どんな工夫をされていますか?
「当初の内装のコンセプトは『ニューヨークの雰囲気を再現する』でしたが、最近はお客さまからいただいたドライフラワー、手作りのアクセサリー、キャンドルなどを飾っています。お客さまは気に入ったアイテムを持ってきてくださいますから、それを大切に扱うことでサロンに愛着を感じていただけますからね。また松濤エリアを中心に、交流があるお店のショップカードも置いています」
————なぜショップカードを置いているのでしょうか?
「おすすめのお店を紹介するためです。施術中の会話を通して、お客さまの趣味と合いそうだと感じたら積極的にショップカードを渡してお店の特徴をお伝えしています。
また先ほどの『手作りのアクセサリー』などは、サロン内で販売もしているんです。髪をショートにした方に『いまの髪型には、このアクセサリーが似合うと思いますよ』とご提案するなど、ちょっとしたサービスにつながりとてもよろこんでいただけています。そして購入いただけた場合には、代金をそのアクセサリーを作ったお客さまにお渡ししているんです。
ちなみに、松濤エリアのアパレルショップや飲食店など、交流があるお店さんは『THE CENTRAL』のショップカードを置いてくれています。それぞれのお店でお互いを紹介し合うよい循環が生まれていて、このやり方をたとえると『バーベキュー』に似ているかもしれません。バーベキューは多くの人がさまざまな食材を持って集まることで、楽しい交流の場ができると思います。
同様に、松濤のエリアにはいろいろな技術を持った方がいますから、そういった技術を持ち寄ることで、おもしろいコミュニティができると感じているんです。こんな風に『まわりとの距離感が近い』美容室は少ないかもしれませんね」
お店のファンを増やしていく極意
お店が終わったあとは、よくスタッフと近隣の飲食店に顔を出すという小嶋さん。お店のファンを増やしていく極意をまとめると、下記の3つでした。
1.ニューヨーク仕込みの優れた技術だけに頼らず、温かいコミュニティ作りに注力
2.採用や教育も「居心地のよいコミュニティ」というコンセプトに沿って行う
3.お客さまや周辺の店舗を巻き込んだサロン作りで愛着を高める
後編では価格設定や情報発信、リピートの作り方について迫ります。
▽後編はこちら▽
お店のこだわりを貫くことで顧客がファンになる。リピート顧客が増え続ける『THE CENTRAL』の秘訣に迫る>>