【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本vol.44】利用者が目の前で突然けいれんを起こした!! どうすればいい?
目の前で突然、利用者がけいれんを起こしたら…。頻繁に起こる症状ではないからこそ、大抵の人がその状態に驚いて動揺してしまいます。今回は、けいれんの時の対処法をご紹介します。
利用者がけいれんを起こした! どう対処すればいい?
「けいれん」という言葉には聞き馴染みがあっても、実際の症状を見たことがある人は少ないのではないでしょうか。てんかんの発作や高熱時の熱性けいれんのように子どもの病気と思われがちですが、高齢者がなりやすい脱水症からの電解質異常や糖尿病性昏睡、肝性昏睡などが原因でも起こります。万が一に備えて、知識として頭に入れておいて損はありません。
けいれんには、全身の筋肉が硬くなってつっぱり、眼球が上を向く硬直性けいれんと、ガクガクとした動きが段々とゆっくりとなる間代性けいれんの二種類ありますが、対応の手順は同じです。突然のけいれんにパニックに陥りそうになったとしても、それはあなただけではありませんので、一度深呼吸をして動揺を受け止め、心を落ち着けて対処できるように備えておきましょう。
お話を伺ったのは…
中浜 崇之さん
介護ラボしゅう 代表/株式会社Salud代表取締役/NPO法人 Ubdobe(医療福祉エンターテイメント) 理事/株式会社介護コネクション 執行役
1983年東京生まれ。ヘルパー2級を取得後、アルバイト先の特別養護老人ホームにて正規職員へ。約10年、特別養護老人ホームとデイサービスで勤務。その後、デイサービスや入居施設などの立ち上げから携わる。現在は、介護現場で勤務しながらNPO法人Ubdobe理事、株式会社介護コネクション執行役なども務める。2010年に「介護を文化へ」をテーマに『介護ラボしゅう』を立ち上げ、毎月の定例勉強会などを通じて、介護事業者のネットワーク作りに尽力している。
ポイント1: まずは安全の確保を
まずやるべきことは、安全の確保です。次の4点を押さえて、嘔吐物や唾液を誤飲したり、周囲にあるもので怪我をしたりといった事故につながることがない環境を作りましょう。
☑ 仰向けに寝かせて顔を横に向ける
※ベッドの上の場合は転落防止のために柵を上げる
☑ 衣服の襟元やベルトをゆるめる
☑ 周囲の危険なもの(刃物、火の気、メガネetc.)を遠ざける
☑ 応援を呼ぶ
ポイント2: けいれんのはじまった時刻を確認
けいれんは多くの場合、数秒~1分ほどで終わります。長くても5分以内には治まることがほとんどです。後に医療者へ正確に引き継ぐためにも、5分以上続いた場合に迅速に救急車を呼ぶためにも、けいれんのはじまった時刻は必ず確認しておきましょう。
ポイント3: けいれんの状態を観察する
けいれんの原因としては、発熱や感染症の他に、てんかんや尿毒症、肝性昏睡、電解質異常、糖尿病性昏睡なども考えられます。医療者へ正しい情報を提供するために、けいれんの様子をしっかりと観察しましょう。
☑体のどこから始まったか
☑ 左右差があるか(右半身/左半身/全身)
☑ 体がガクガクしていたか
☑ 眼球や頭はどちらに向いていたか
☑ 手足はつっぱって硬くなっていたか
ポイント4: 医療者へ引き継ぐ
どのように医療者へ引き継ぐかの分かれ道は、けいれんの持続時間です。5分経っても治まらない時は、迷わず救急車を呼びましょう。5分以内にけいれんが治まった場合は、その時刻の確認を忘れずに。バイタルサインと意識レベルをチェックして、主治医など医療者へ、けいれん中の状態とともに連絡・報告し、指示を仰ぎましょう。
けいれんの対応時にやってはいけない3つのこと
1. 割り箸をかませる
2. 口にハンカチ等を詰める
3. 体をゆらすなどして刺激する
けいれんを起こしている利用者を目の前にすると、焦りを感じたり、不安になったりすると思います。舌を噛んでしまわないか、歯が欠けてしまわないかなどを心配するあまり、つい良かれと思ってやってしまいそうなのが、割り箸をかませたり、口にハンカチを詰めたりという行為。気持ちはわからなくはないですが、これは喉を刺激して嘔吐を招いたり、窒息の危険を高めたりしてしまうので、絶対にNGです。
また、「大丈夫ですか!?」「しっかりしてください!」という気持ちから体をゆらして刺激を与えたくなるのも分かります。しかし、これもけいれんを長引かせる危険があるためNGです。気持ちをしっかり持って、安全な状況にしたらけいれんの状態を観察することに集中しましょう。
監修・中浜さんの「実際にこんなことありました!」
私自身にも、利用者のけいれん発作を目の当たりにして「正直、どうしたら良いのか…」と焦ってしまった経験があります。その方はデイサービスのご利用者様でした。持病にけいれんがあることは聞いてはいたのですが、実際にけいれんを起こした様子を目の当たりにすると不安を感じたのを覚えています。
その時はけいれん発作の時間も短く、ご本人の意識も比較的すぐに戻ったので大事には至りませんでしたが、今振り返ってもあの時の気持ちが思い出されるほどの体験だったのには間違いありません。
今回のテーマである「けいれん」はもちろんですがその他の発作についても、実際に目の前で起こった時は、いくら準備していても私のように焦ってしまう方が多く見受けられると思います。注意点とNG行動については、焦ったり気が動転したりしていることを大前提として何度も繰り返し確認をしておくといいですよ。そうすると、たとえ焦ったとしても、その時のことを思い出しながら目の前の状況に対応できるかと思います。
急病の対応については、「焦って当然!」を念頭に事前に備えていきましょう。
文:細川光恵
参考:「介護現場で使える 急変時対応便利帖」株式会社翔泳社