生活相談員配置等加算とは|概要・種類と単位数・算定要件を解説
少子高齢化の進行により介護業界を取り巻く環境には大きな変化が生じています。それに対応するために介護関係の制度の新設や改定も頻繁におこなわれており、とくに介護サービスを提供する施設にとっては、それらにうまく適応し、制度を有効活用していくことが求められます。
そんな介護関係の制度のなかでも、とくに生活相談員が在籍する事業所に大きく関係する制度があります。それは「生活相談員配置等加算」と呼ばれる制度です。
この制度では、生活相談員を配置している事業所が受けられる支援に関する取り決めがされています。比較的新しい制度でもあることから、多くの注目を集めています。
今回はそんな生活相談員配置等加算の概要や指定を受けられる事業所の種類、さらにはこの制度に大きく関係する共生サービスやその算定要件などについても解説します。
生活相談員配置等加算とは
介護サービスを提供する事業所に対しては、円滑なサービス提供をおこなえるようにするためのさまざまな制度が用意されています。
これらの制度にはそれぞれに適用条件が定められており、その条件を満たす事業所は申請をおこなうことで多種多様な支援を受けることができます。介護を必要とする人だけでなく介護を提供する側へかかる負担も軽減するための仕組みは日々構築されているのです。
生活相談員配置等加算もまた、このような介護サービスを提供する事業所へかかる負担を軽減するための制度のひとつです。ここでは、そんな生活相談員配置等加算の詳細について解説していきます。
概要|平成30年度の介護報酬改定により新設
そもそも介護サービスを提供する事業所に対する支援とは、「介護報酬」と呼ばれる金銭的な支援のことを指します。そして、この介護報酬の金額は「各事業所がどれくらい算定基準を満たしているか」で決められ、それらは単位数によって評価されます。
介護サービスを提供する事業所への「加算」は、この単位数が増えると、より多くの介護報酬をえられる仕組みとなっています。生活相談員配置等加算では、生活相談員を事業所内に配置することで単位数が加算されます。
このような加算をおこなう制度は以前から多数存在しましたが、平成30年度に介護報酬改定がおこなわれたことで新たな制度が必要となり、生活相談員配置等加算もまたこの際に新設されました。生活相談員配置等加算は、生活相談員の存在が介護サービスの質の向上において不可欠であるとの認識が高まった現代だからこそ誕生した制度といえます。
対象|指定を受けた事業所のみ
事業所が生活相談員配置等加算を受けるためには、国が規定する基準を満たし、指定を受けることが絶対条件となります。この指定は「生活介護事業所」や「短期入所事業所」などに該当する事業所のみが受けることができます。
一方、生活相談員配置等加算を受けるためには、上述の条件を満たし、指定を受けていることだけでなく、規定に則った人数だけ生活相談員が在籍していることも必須です。ただし、現行の取り決めでは、ほとんどの介護関係の施設が1名以上の生活相談員の在籍が義務づけられているため、問題なく運営がされている限り、この条件を満たすことは簡単といえるでしょう。
単位数|共生型通所介護
通所介護・地域密着型通所介護の一種である共生型通所介護は、おもに障害を持つ人を対象とした生活介護・自立支援・自動発達支援・放課後等デイサービスをおこなう施設です。この施設では生活相談員を既定の人数以上配置することで生活相談員配置等加算を受けることができます。
共生型通所施設における生活相談員配置等加算は、平成30年度の制度改正以前には存在しませんでした。しかし制度改正後は、共生型通所施設の基本報酬が「所定単位数に93/100を乗じた単位数」と規定され、生活相談員配置等加算は、1日につき13単位算定されます。
毎日算定要件を満たす事業をおこなっている事業所であれば年間で相当数の単位が加算されることとなるのです。
共生型サービスとは?
従来の制度では同じ介護を必要とする人であっても、高齢者と障害を持つ人は区別されており、介護や機能回復のための訓練ではそれぞれで異なる施設を利用していました。しかし、近年では要介護高齢者の増加などからこのような区別を撤廃し、同じ施設内で高齢者も障害を持つ人も介護サービスを受けられるようにする必要があるとの声が高まったのです。
その結果、区別を撤廃した高齢者と障害を持つ人の両方へのサービスをおこなう施設が誕生し、このようなサービスのことを「共生型サービス」と呼ぶこととなりました。
共生型サービスが制度で認められて誕生したのは平成30年度からで、上述の生活相談員配置等加算と同じ時期に誕生したことになります。そのため、これら2つは介護業界における変化に対応する目的で新たに誕生したといえるでしょう。
算定要件
共生型通所介護事業所が生活相談員配置等加算の対象になるためには、規定された算定要件を満たす必要があります。算定要件のひとつには、社会福祉士など、生活相談員として働くための規定を満たした人を生活相談員として配置していることが挙げられます。
生活相談員配置等加算の対象になるためには、生活相談員の配置だけでなく、地域に貢献する活動をおこなっているかどうかも判定基準となります。この活動の一例としては、地域交流の場の提供や認知症カフェの運営などが挙げられます。ただ介護サービスを提供しているだけでは算定条件を満たすのは難しいといえるでしょう。
なお、この算定要件は、共生型通所介護事業所だけでなく、共生型短期入所生活介護事業所の場合も同様です。
報酬設定の基本的な考え方
共生型通所介護事業所や共生型短期入所生活介護事業所は、介護保険サービスを提供する介護保険事業所の基準を満たさない事業所であるため、サービスの質という観点において区別する必要があります。
このような考え方から、共生型通所介護事業所や共生型短期入所生活介護事業所の介護報酬は、本来の介護報酬区分とは区別されています。生活相談員配置等加算の導入は、介護保険事業所の指定を受けられない共生型通所介護事業所や共生型短期入所生活介護事業所の取り組みを評価して報酬に反映することが可能になったのです。
しかし、生活相談員配置等加算は、障害を持つ人が高齢者に達した段階で介護保険に切り替わることで、介護サービスを提供する事業所の報酬が減るというデメリットが生じます。このことは少子高齢化が進む昨今において適切でないとの意見が多く出たことから、おおむね障害福祉制度における報酬の水準を担保することが定められました。
生活相談員配置等加算は共生型事業所の取り組みを評価する加算
生活相談員配置等加算を受けるためには算定要件を満たしたうえで申請をおこなう必要があるため若干の手間はかかります。しかしながら、この指定を受けることができれば、施設側が負担を減らせるだけでなく、障害を持つ高齢の人なども大きな恩恵を受けられることから、算定要件を満たすための努力をする価値は充分にあるといえます。
一方、この生活相談員配置等加算は、制度の改定によって誕生した共生型事業所の取り組みを評価するものであることから、介護における共生型サービスのさらなる発展に寄与することのできる制度ともいえるでしょう。
出典元
厚生労働省 共生型サービス
平成30年度介護報酬改定における各サービス毎の改定事項について