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特集・コラム 2022-01-09

保育士等キャリアアップ研修とは? 受講するメリットと研修内容を紹介

保育士不足が叫ばれるなかで、保育士の処遇の見直しやひとりひとりの専門性を高め、保育の質を向上させる重要性が高まってきました。

このようななか、各都道府県では保育士等キャリアアップ研修が実施されているようです。今回は、この研修の内容や受講するメリットなどをくわしくご紹介します。

保育士等キャリアアップ研修とは?

保育士等キャリアアップ研修とは、一体どのような研修なのでしょうか。ここでは、研修の概要や研修の対象となる人の条件をくわしく解説します。

リーダー的職員の育成を目指す|2017年に厚生労働省が制定

保育士等キャリアアップ研修は、保育所など保育士が働く現場において、指導をおこなうリーダー的な役割を担う職員を育成するための研修です。厚生労働省が保育士たちのキャリアアップの仕組みを構築するために、2017年に制定しました。

研修の目的|保育士の処遇改善

ここでは、この研修の目的について解説します。研修を受けることにより、生まれる新しい役職について確認しておきましょう。

副主任保育士|経験年数約7年以上

副主任保育士は、保育施設のまとめ役として主任保育士のサポートにあたります。施設の健全な運営という視点で人材だけでなく、物品やお金、施設などの管理を総合的に担うマネジメント能力が求められる役職です。

就任するための条件としては、保育士としての経験年数が約7年以上であることが必須となります。

専門リーダー|経験年数約7年以上

専門リーダーは園長や副主任保育士のサポートをおこないながら、職務分野別リーダーを含むほかの職員のまとめ役、相談役、指示役としての役割を担います。

就任するための条件としては、職務分野別リーダーを経験していること、保育士としての経験年数が7年以上であることが条件です。

職務分野別リーダー|経験年数約3年以上

職務分野別リーダーとは、乳児保育、幼児保育、障がい児保育など各専門分野の研修を受け、「乳児リーダー」や「幼児リーダー」など専門知識やスキルを持つ者として、各職員への指導やアドバイス、教育なども担い、現場の保育の質向上を目指します。

就任するための条件としては、職務分野別リーダー研修の対象者は保育士としての経験年数が約3年以上であることが条件です。

研修適用要件|2026年度に完全実施

つづいては、2026年度に完全実施となる各研修の適用要件をご紹介します。どのような研修があるのかを事前にチェックしておきましょう。

副主任保育士・中核リーダー等

副主任保育士や中核リーダー等の適応要件は、4分野(60時間以上)が研修修了要件となっています。2023年より段階的に適用され、2026年度に完全実施となる予定です。

職務分野別リーダー・若手リーダー

職務分野別リーダーや若手のリーダーの適用要件は、6つの分野にわかれた研修のうち担当する1分野(15時間以上)が研修修了要件となっています。こちらは2024年より適用され、同年中に完全実施となる予定です。

キャリアアップ研修を受講するメリットとは?

保育士等キャリアアップ研修を受けることによって、どのようなメリットが得られるのでしょうか。ここでは、この研修を受講するメリットを解説します。

1. 保育士の処遇改善に繋がる

この研修を受けることによって、手当が各役割に与えられるため、保育士の処遇改善につながるでしょう。

しかし、研修修了者に直接手渡されるわけではなく、一旦勤務先の保育所に支給されたのち分配される仕組みです。手当が与えられて給料がアップすれば、離職防止にもつながるというメリットも生まれます。

2. 保育の専門知識を深めることができる

保育士不足の今、「保育の質向上」という点からは職員ひとりひとりの専門性を高めることが各現場で求められています。

この研修を修了することで専門知識を身につけることができ、現場に還元できるというのも大きなメリットです。

3. 転職や復職にも役立つ

この研修を修了したという実績は、退職や転職と同時に消えるものではありません。そのため、職場が変わったとしても、次の勤務先で自分の強みとしてアピールすることが可能です。

転職や復職する際にも役立つ研修のため、受講しておいて損はないでしょう。

保育士資格を生かせる職場が探せる

どんなことを学ぶの?2021年度東京都の実施内容を紹介

保育士等キャリアアップ研修の受講対象者の条件は、こまかく定められているため事前によく確認しておくことが大切です。ここでは、2021年度の東京都の実施内容にもとづいた研修内容をご紹介します

1. 受講対象者

受講するには、まずは自分が対象者になっているかを確認しておきましょう。つづいては、受講対象者の条件をご紹介します。

東京都内の認可保育園・認定こども園などに勤務する方

東京都の場合、都内で厚生労働省の設置基準などを満たしている認定保育園や認定こども園などに勤務する保育士が受講対象となります。国の基準を満たしていない無認可保育園や認可外保育園の保育士の場合、受講対象外となるため、注意しましょう。

専門リーダーなどの役職やリーダー候補者

東京都内の認可保育園や認定こども園で働いており、副主任や専門リーダー、職務分野別リーダーなど現場で指導する立場にある職員やリーダー候補となっている職員も受講対象となります。ただし、園長や副園長、主任は受講対象から外れるので、注意してください。

2. 研修時間・修了認定

受講対象者がわかったところで、つづいては研修時間や修了認定の基準を解説していきます。どれくらいの研修を受けると、修了認定されるのでしょうか。

修了認定と修了証の交付

研修は2日間にわたっておこなわれ、1日の研修時間は7.5時間です。つまり、2日間の研修を修了すると、1分野15時間の研修が修了したということになります。研修に参加する場合には勤務交代や有給の活用など、職場で勤務を調整して参加するのがおすすめです。

また、研修に参加するだけでは修了認定はもらえません。テストではなく、レポート提出が必須です。レポート提出をして問題なければ、さ修了証が交付されます。

3. 研修のねらい・研修内容

現場にて、実際に各専門分野でリーダー的役割を果たしている人を対象とした研修の具体的な内容を解説します。この研修には、どのようなねらいがあるのかを見ていきましょう。

乳児保育

おもに、0~3歳未満の乳児保育についての指導や適切な助言ができるリーダー育成をねらいとしています。

「乳児突然死症候群」や「揺さぶられ症候群」など保育する側がリスクを知ることで防げる事故もあり、乳児とのかかわりや環境整備のポイント、指導計画や記録、評価についてなど幅広い内容が盛り込まれているのが特徴です。

幼児教育

おもに3歳以上の幼児に関する保育内容の研修がおこなわれているのが特徴です。幼児教育では各年齢や個人の発達段階に応じたかかわりが重要となり、ほかの職員に指導やアドバイスをする立場として専門知識やスキルの習得を目指します。

また、小学校へのスムーズな進学の点で、学校との連携や接続も研修内容に含まれます。

障がい児保育

障がい児に対する保育では、障がいを持たない幼児とは違った配慮や見守りなどのかかわりが求められます。

障がいの種類や特徴、かかわり方のポイントなどを専門的に学ぶとともに地域施設や小学校との連携の方法や重要性なども学ばなければなりません。

食育・アレルギー対応

気管支喘息やアトピー性皮膚炎、花粉症などのアレルギー疾患への理解や対応などを学びます。アレルギーを持つ幼児の情報管理や共有体制の構築、災害時などいつもと異なる環境で保育をおこなう場合の対応などを専門的に習得するのが目的です。

また、アナフィラキシーショックの具体的な症状や緊急対応など、万が一の際に看護師や栄養士などと連携しながら、迅速に対応できる知識を学習します。

保健衛生・安全対策

遊具での事故や給食後の体調不良などのニュースをみかけることもあるでしょう。園児が衛生的で安全な環境で過ごせるような仕組みづくり、事故防止の重要性などを学んで現場での指導に生かせるよう、専門知識を習得します。

保護者支援・子育て支援

虐待など子どもを取り巻く環境も、社会全体の課題です。子どもを世話する保護者への支援、子育て支援によって子どもが育つ環境にもよい影響をおよぼします。

研修では具体的な保護者への相談援助スキルや地域の子育て支援の活用、情報提供の重要性についても学びを深めるのが目的です。

マネジメント

保育所のマネジメントにおける課題やリーダーシップの重要性、保育の質を向上させるための職員ひとりひとりへの指導やかかわり、保育実習や職員のメンタルヘルス対策と幅広い内容の習得を目指します。

対象となるのは、専門研修の分野でリーダー的役割の経験を持ち、主任保育士のサポートをおこなう人です。

保育実践

子どもとのかかわり方や言葉、音楽を使った遊びなどについて専門的に学びます。

対象となるのは、保育士資格を保有してはいるものの、現場での経験が少ない人、ブランクがある人が対象です。

研修はどこで受講できるの?|指定研修実施機関を探そう

指定研修実施機関などに関する研修の情報は、各都道府県のホームページで入手できます。たとえば、東京都の場合、東京都福祉保健局のホームページで研修実施機関を一覧でチェックすることが可能です。

研修実施機関を確認後、どの機関に実施するかが決まったら直接電話やメールなどで問い合わせをおこない、申し込み方法について確認するとよいでしょう。

キャリアアップ研修を受けて保育の知識を深めよう!

保育士等キャリアアップ研修で専門的な知識やスキルを身につけ、現場でリーダー的な存在として学びを生かすことは保育の質の向上につながります。

また、各役割で手当てが支給されるため、待遇面でもメリットを感じられるでしょう。今回の研修を受講して、保育士としての専門知識を深めてみてはいかがでしょうか。

引用元サイト
東京都福祉保健局 東京都保育士等キャリアアップ研修に関すること
東京都福祉保健局 東京都保育士等キャリアアップ研修事業実施要綱
東京都福祉保健局 保育士等キャリアアップ研修の実施について
東京都福祉保健局 東京都保育士等キャリアアップ研修 指定研修一覧
東京都福祉専門学校 東京都保育士等キャリアアップ研修

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