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特集・コラム 2022-03-04

【2022年】保育士の処遇改善とは? 保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業についても解説!

2013年にはじまった制度が、保育士処遇改善等加算です。この制度は着実に進化を遂げ、2017年には「技能・経験に応じた保育士等の処遇改善」という新たな制度もスタートしました。この制度を活用してよい環境で保育士として働いていきたいものですが、そのためにはまず制度を理解することが大切です。

ここでは、保育士処遇改善等加算が一体どのような制度なのか、ほかにも保育士の処遇に関する制度があるのかをご紹介します。

保育士の処遇改善制度をくわしく解説!

まず知っておきたいのは、保育士処遇改善加算がどのような制度であるのかということ。この制度を皮切りにほかの制度が発展してきているので、まずはこの制度を理解しておく必要があります。

そもそも保育士処遇改善加算とは、一体どのような制度なのかを確認しておきましょう。

処遇改善加算Ⅰ|職員の平均経験年数の上昇に応じた昇給に要する費用

2013年にはじめて導入された処遇改善加算Ⅰとは、職員1人当たりの経験年数に応じて給料のベースを上げていこうという制度です。

これは、正社員だけでなくパートやアルバイトの職員も対象。この加算については、基礎分、キャリアパス要件分を含む賃金改善要件分から算出されています。

基礎分|平均経験年数によって加算率が違う

基礎分とは、平均経験年数に合わせて設定される加算率のことを指します。経験年数に応じて増加する加算額については、昇給などに充当して保育士へ加算することが必要です。

この加算率は2~12%となり、おおむね入職1年未満の職員で2%、その後9年以上10年未満まで1%ずつ上昇していき、10年以上からは12%となります。

平均経験年数は保育士以外の職種も含められ、1日6時間以上、もしくは月20日以上勤務している職員については常勤にカウントして計算する仕組みです。

賃金改善要件分|賃金改善と報告書を提出している施設に適用

賃金改善要件分とは、「基準年度の賃金水準を適用した場合の賃金総額」および「人件費の改定状況を踏まえた部分」に対し、賃金改善をおこなうことです。

平均勤続年数が11年以上となる施設は一律7%が加算されますが、11年未満の場合は一律6%となります。基準年度の賃金水準からの改善が要件になるのが特徴です。

キャリアパス要件分|職員のキャリア形成をおこなっている施設に適用

キャリアパス要件分とは、当該施設の取り組みが以下の要件を満たしている場合に加算対象となります。

・職員の職位、職責または職務内容などに応じた勤務条件などの要件と賃金体系を職員が理解しているか
・資質向上のための計画に沿って、研修機会の提供または技術指導などを実施するとともに、職員の能力評価をおこなう
・幼稚園教諭免許状・保育士資格等を取得しようとするものがいる場合は、資格 取得のための支援をしているか

これらを満たしていることを基本とし、満たしていない場合には賃金改善要件分から2%減額されてしまいます。

処遇改善加算Ⅱ|職員の技能・経験の向上に応じた追加的な賃金の改善に要する費用

職員の技能・経験に応じた人件費の加算として位置づけられたのが、処遇改善加算Ⅱです。管理職まではいかないものの、ある程度の実務経験を要するリーダーレベルの職員を対象としています。

キャリアパスの仕組みを構築し、保育士などの処遇改善に取り組んでいる施設・事業所に対して処遇改善の費用を加算したものです。

この加算を受けるためには、以下の要件を満たしている必要があります。
・加算額を確実に賃金改善に充てるため、賃金改善計画の策定および実績報告をおこなう
・処遇改善の対象者が以下の基準を満たすものとなっていること
・職務手当を含む月給により賃金改善がおこなわれていること

キャリアアップ研修とは?|役職や経験に合わせたリーダー職員の育成

2017年よりはじまった保育士等キャリアアップ研修。厚生労働省がガイドラインを作成して制定したもので、一定の経験を積んだ保育士などを対象に、乳児保育、障害児保育、食育・アレルギーなど各分野の研修を実施。研修は役職や経験に合わせて実施され、研修を受けたことで処遇改善加算の対象となります。

副主任保育士や専門および中核リーダーなどの職位は、キャリアアップ研修を受けることで月額4万円の処遇改善を受けることが可能です。一方、職務分野別および若手リーダーの場合は、月額5,000円の処遇改善の対象となります。

保育士等キャリアアップ研修についてはこちら

副主任保育士

副主任保育士は主任保育士の補佐にあたる役職で、就任するためには経験年数がおおむね7年以上必要です。副主任保育士は主任保育士と同様にほかの保育士のマネジメントをするだけでなく、金銭面や物品管理など施設の総合的な管理能力が求められます。

専門リーダー

専門リーダーは延長や副主任の補佐をしつつ、ほかのスタッフの相談にのったり、指示を出したりするスタッフのまとめ役ともいえる役職です。副主任保育士と同様に、就任するためには経験年数がおおむね7年以上必要となります。

職務分野別リーダー

職務分野別リーダーとは、厚生労働省で定めた保育士キャリアアップ研修を受けて、専門知識やスキルを保有しているリーダーのこと。受けられる研修分野は乳児保育や障害児保育、食育・アレルギーなどについてです。

身に着けたスキルや知識を活かしてほかのスタッフへ指導、教育、アドバイスなどをして、職員の質の底上げを目指します。職務分野別リーダーは、経験年数がおおむね3年以上あることが必要です。

処遇改善加算ⅠとⅡはどこが違うの?

制度ができた時期が異なる処遇改善のⅠとⅡには、一体どのような違いがあるのでしょうか。ここでは、ⅠとⅡの違いをご紹介します。

1. 対象となる保育士が違う|勤務条件・研修受講

処遇改善Ⅰは、勤務条件が処遇改善加算の対象です。そのため、新卒の職員からベテランの職員まで、さらにはある程度の時間数勤務をしているパートやアルバイト従業員も対象となり、幅広いスタッフが対象となります。

一方、処遇改善Ⅱはキャリアアップ研修を受ける必要があるため、役職などがある限られた職員しか対象になりません。

2. 給与への加え方が違う|加算・月額上乗せ

処遇改善Ⅰは、加算率の計算によって給与を増やすだけでなく減らすことにもなります。キャリアパス要件分を見てみると、キャリアパス要件分を満たしていなかった場合には、賃金改善要件分から2%減額をすると定められています。

一方で、処遇改善Ⅱは要件を満たしている場合に月給に上乗せするという形になるので、給料が減るということはありません。この給料への加え方も、ⅠとⅡの大きな特徴です。

3. 配分方法が違う|基本給や手当にプラス・分配OK

処遇改善Ⅰでは、賃金改善要件分はほかにわけてもよいものの、基礎分は原則として基本給や手当などに充てなければなりません。

しかし、処遇改善Ⅱにおいては、該当職員以外のほかの職員への分配もよいとしています。分配することで職員全体の処遇改善にもなるため、職員全体のやる気にもつながるでしょう。

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2022年2月から実施|保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業とは

2022年2月から、保育士・幼稚園教諭などの処遇改善に関する新たな特例事業が開始されます。新しい事業であるため、なかには知らない人もいるでしょう。

ここでは、一体どのような事業であり、保育士・幼稚園教諭にとってはどのようなメリットがあるのかをご紹介します。

目的|コロナ+少子高齢化の対応の下で働く職員の待遇改善

2022年2月からはじまる保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業とは、2021年 11 月 19 日閣議決定されたコロナ克服および新時代開拓のための経済対策の一環としてスタートする事業です。

社会問題としてもともと取り上げられていた少子高齢化への対応に加えて、近年では新型コロナウイルス感染症への対応も重なり、保育園や幼稚園では多忙を極めています。

つねに最前線において働く、幼稚園、保育所、認定こども園および地域型保育事業所等における保育士、幼稚園教諭、保育教諭などの処遇を改善することが必要であると考えられました。

一次的な賃上げではなく、賃上げ効果が継続される取組をおこなうことを前提として、この事業がはじまります。

対象施設と対象者|保育士だけでなく調理員や栄養士などすべての職員

賃上げの制度は、保育に携わる方がおもな対象者となっていました。しかし、保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業では施設に従事する職員すべてが対象となるため、雇用形態も正規、非正規を問いません。

対象となる職種は保育士や幼稚園教諭、保育教諭に加えて、調理員や栄養士、事務職員など、各施設に 勤務する職員です。ただし、法人役員を兼務する施設長は対象外です。

ほかにも、延長保育や預かり保育などにのみ従事する職員も対象外となるので、注意しましょう。

補助内容|収入を3%程度引き上げるための費用を補助

2022年2月から9月までの間、対象となる職員に対して3%程度(月額 9,000 円程度)の賃金改善をおこなうために必要な費用が補助されます。ただし、施設・事業所の職員配置状況などによっては、引上げ額が月額9,000円を下回る場合もあるようです。

2021年に国家公務員給与の改定がおこなわれますが、もしも2022年度の公定価格に反映された場合、それによる減額分(-0.9%)に上乗せして補助されます。

補助要件|補助額の全額を賃金改善に充てる

補助要件についてさまざまな要件がありますが、おもに知っておいていただきたいのが以下の5つです。

・原則として、2022年2月から職員に対する賃金改善を実施する
・本事業による賃金改善の計画書や事業報告書を事業者は作成して市町村へ提出する。事業の計画については該当職員へ周知する
・補助額の全額を賃金改善に充てる
・賃金改善について最低でも改善額全体の3分の2以上を基本給または決まって毎月支払われる手当によりおこなう
・改善をおこなう賃金項目以外の賃金項目の水準を低下させない

2022年10月以降はどうなるの?

この事業の特例期間は9月までなので、10月には特例期間の対象外となってしまいます。補助要件を見てみると、「2022年10月以降においても、本事業により講じた賃金改善の水準を維持する こと」と記されていました。そのため、いきなり賃金の水準が下がるということは無いと考えられています。

また、10月以降も公定価格の見直しにより同程度収入を引き上げる措置が継続される予定です。

2022年は新たな処遇改善がプラス|キャリアアップ研修に参加してみよう

2022年より新たな処遇改善がプラスされ、保育士や幼稚園教諭の待遇はますますよくなっていくといえます。今まで通りに従事していても処遇改善は見込めますが、キャリアアップ研修を受けることによりさらなる処遇改善が見込めるでしょう。

この機会にぜひキャリアアップ研修に参加し、知識を磨きつつ処遇をさらに改善してみてはいかがでしょうか。

引用元サイト
内閣府 施設型給付費等に係る処遇改善等加算Ⅰ及び処遇改善等加算Ⅱについて
内閣府 技能・経験に応じた処遇改善等加算Ⅱの仕組み
内閣府 保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業の実施について
内閣府 令和4年2月から教育・保育の現場で働く方々の収入の引上げに必要な費用を補助します
内閣府 保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業等に係るFAQ
厚生労働省 保育士等キャリアアップ研修ガイドラインの概要

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