全身の関節を動かして体のバランスを整えるマシンピラティスとは【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.47 ピラティストレーナー 大澤麻菜さん #3】
ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』。
これまで2回に渡り、「MOHI PILATES」で活動するピラティスインストラクターの大澤麻菜さんにお話を聞いてきました。ピラティスの素晴らしさを伝えるためインストラクターになった大澤さんは、「MOHI PILATES」で働くようになり、以前にも増してピラティスを追求するようになったそう。
今回後編では、そんな大澤さんのセッションにフォーカス。クライアントとのコミュニケーションで大切にしていることや、セッション内容についてお聞きします。
お話を伺ったのは…
MOHI PILATES インストラクター 大澤麻菜さん
競技エアロビック元日本代表。11歳、9歳、6歳のママ。2017年よりマットピラティスインストラクターとして活動をスタート。2019年「MOHI PILATES」に参加し、マシンピラティスインストラクターに。2021年ベストボディジャパンにてレディースクラス5位入賞。
Instagram:@ manapilates.b.m.s
時間とお金をかけてよかったと思えるセッションを提供したい
——大澤さんがセッションで大切にしていることを教えてください。
一番大切にしているのは、クライアントさんに「この時間とお金をピラティスに使ってよかった」と思って帰っていただくことです。やっぱり安いものではないので、しっかり満足していただけるものを提供したいという気持ちは大きいですね。
セッションでは最初に体を見て状態を把握し、もっと体を良い状態、楽に過ごせる状態にするにはどういうアプローチをしたらいいのか考えます。そこで考えたアプローチを実践して上手くいけば、1回で体のラインも変わりますし、セッションが終わったときに「気持ちよかった」と思っていただけるんです。だから毎回それができるように取り組んでいます。
——クライアントさんとのコミュニケーションで意識していることはありますか?
まずは絶対に否定しないこと。「ここが嫌」「これができない」という言葉もまずは受け止めて、そうなった原因も否定せずに認められるように声掛けします。例えば、いっぱい食べちゃうというのも、ストレスから自分の身を守るためだったりするじゃないですか。それ自体は悪いことじゃないし、その時の自分には必要だったんだなと思えると、前向きに一歩が踏み出せるようになると思うんです。
あとは、ポジティブな変化を声に出して伝えること。言葉ってすごく繊細で、言っても言わなくてもいいけど、言われたら嬉しいことってあるじゃないですか。だから自分が言われたら嬉しいと思うことは、積極的に伝えるようにしています。セッションのなかで、すごく頑張ったこと、すごく良かった動き、体の変化などを伝えてあげると、もう一歩頑張ろうというモチベーションにもつながりますから。
全身の関節を動かし、バランスの取れた体を作るマシンピラティス
——セッションの内容について教えてください。
「MOHI PILATES」はパーソナルセッションなので、その方の年齢や体の状態に合わせてワークを組み立てています。共通しているのは、マシンを使って全身の関節をくまなく動かすこと。
人によって動き方にはクセがあるので、使えていない筋肉と使いすぎている筋肉が出てきます。正しい姿勢や動作で関節を動かし続けることで、使いすぎて発達している筋肉は余計な部分を落とし、使えていなかった筋肉は強化する。そうしてバランスの取れた体を作っていくんです。
——マシンピラティスの嬉しい効果とは?
マシンピラティスは、美しいボディラインになるのはもちろん、姿勢がよくなることで人間本来の内臓機能や循環機能が整っていく効果もあります。私が産後に悩んでいた便秘やむくみなどのマイナートラブルを解消できたのも、これのおかげ。
ピラティスはインナーマッスルを強くしていけるエクササイズ。妊娠出産で内臓まわりの筋肉がゆるんでいたことで、内蔵がどんどん下に落ちて押しつぶされ正常に機能しなくなるから、便秘やむくみが起きていた。内臓を支える筋肉をピラティスで強化すると、内臓が引き上がって本来の状態に整うんですよね。
滞る部分がなくなることで、血流も改善されます。美容の印象が強いピラティスですが、健康面への効果も大きいんですよ。
セッション内容をチラ見せ!
「MOHI PILATES」で行っているワークをご紹介。マシンを使うことで、マットよりも効率的&効果的に負荷がかかり、体の変化もわかりやすいのだとか。60分のセッションのなかで、体の状態に合わせて様々なワークを組み合わせていきます。
ストレッチパート
セッションはストレッチからスタート。写真は股関節の柔軟性の向上、臀部・体幹部の筋力強化が期待できるエクササイズ。
アブドミナル
膝を90度にセットし、ストラップを引き下げながら上体を起こす。息を吸ってダウン、吐いてアップを繰り返す。呼吸とともにエクササイズを行うことで、深層部から腹筋群を強化。
マーメイド
腹斜筋を強化しながら、背骨や股関節周りの柔軟性を高めることができるエクササイズ。フットバーに対して足が反対になるように横座りし、片手をバーにセット、反対の手を真横にのばす。腹斜筋を使ってキャリッジ(乗っている台)を動かし、同時に反対側の腕を上げる。
体側が伸びた状態で回旋し、上げていた腕もフットバーへ。順にスタートポジションに戻す。途中ストレッチが入るので、肩こりや背中の張りなどがある方にも効果的。
——インストラクター側はどんなことに注意してセッションをしていますか?
大切なのは正しい動作を覚えていただくことなので、ワーク中は正しい位置にセットできているかをチェックし、誘導しながら動作をサポートします。例えば、「膝を90度に曲げる」という動作も、自分では90度だと思っているポジションが外から見ると違っていたりする。正しい位置を伝えられるのはインストラクターだけです。
その正しい位置、姿勢をワークの動作のなかで覚えると、日常の動作も正しくなっていくんです。そうすると体はもっと変わります。その変化をいっぱい感じていただけたらと思っています。
キツイ印象のあるマシンピラティス。大澤さんのお話から、クライアントに続けてもらうために必要なのは、ポジティブになれるマインドケアと、きちんと効果が実感できるワーク指導にあるのだと感じました。大澤さんのセッション、ぜひチェックしてみてください!
取材・文/山本二季
撮影/米玉利朋子(G.P.FRAG)