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介護・看護・リハビリ 2022-03-16

この子たちが18歳になるまでに、今私ができることを/介護リレーインタビュー Vol.32【児童発達支援管理責任者 福川紀代美さん】#1

介護業界に携わる皆様のインタビューを通して、業界の魅力、多様な働き方をご紹介する本連載。今回お話を伺ったのは、放課後等デイサービスを行う「はるはうすkids」の管理者であり、児童発達支援管理責任者の福川紀代美さん。

前編では、福川さんがこの仕事に就いたきっかけや、心がけていることについてお話を伺います。

母と同じ介護の道へ!移動支援で障害を持った子どもたちと出会い、児童福祉に興味が湧いた

――はじめに、福川さんがこの仕事を選んだきっかけを教えてください。

そうですね、もともと母がヘルパーとして働いていて、介護職が身近にあったというのが一つ。あと、当時商業高校に通っていたので、学校に求人情報がたくさん届くんですね。その中から、将来資格が取れるような仕事を探していて、福祉の道に進もうと思いました。

――ちなみに、卒業後初めて就職したところも児童福祉の施設だったんですか?

いえ、初めは母と同じように高齢者のヘルパーをしていました。その会社が大きい会社で、移動支援も行っていたんです。そこで初めて知的・発達障害のある子どもたちと出会いました。みんな一人一人個性があって、すごく素直で。感情をストレートに表してくれるので、「そういう考え方もあるんだ!」って気づかされることも多かったんですね。児童福祉に興味が湧いたのはその頃です。

その後、ちょうど会社で新たに児童デイサービス(現在の放課後等デイサービス)を立ち上げることになり、異動しました。「ここで本格的に子どもたちの支援を!」と思っていたのですが、残念ながらその事業所がなくなってしまって……。再び高齢者のデイサービスをしていた時期もありましたが、縁あって今の会社に転職。今は管理者として働いています。

同じ障害を持っていても一人一人違う。個性を大切にしながら、その子に合わせたサポートを

――「はるはうすkids」について教えてください。

ここでは「放課後等デイサービス」を行なっていて、小学1年生から高校3年生までの子どもたちが約25人通っています。週に1回の子から週に5回通っている子もいて、1日の定員は10人ですね。個別活動や集団活動を通して生活スキルの向上を目指していますが、お子さんによって障害の程度はさまざまなので、保護者の方とも面談しながらその子に合わせた目標を立てています。

――例えばどんな目標があるんですか?

中重度のお子さんだったら、名前を書けるようになろうとか、靴の紐を結べるようになろうとか。軽度のお子さんだったら、学校の宿題をちゃんとしようとか、気持ちを上手に伝えられるようになろうとかですね。半年や1年、時間をかけて立てる目標が多いです。

でも一番大切なのは、ここを卒業した後にその子が生きて行きやすいようにしてあげることだと思うんです。ここは18歳までの施設ですが、人生「18歳まで」より「18歳から」の方が長いですから。ここに通っている子たちは、今後も誰かの手を借りることが少なくないと思うので、嫌なことは嫌と伝える、ヘルプサインを正しく伝える、手伝ってもらったらきちんと感謝を伝える、そういうことがすごく大切かなと。

――確かに、誰かの手を借りた時、感謝の気持ちを伝えられるかどうかって、その後の関わりを考えるとすごく重要かもしれないですね。

はい。でも、「ありがとう」や「ごめんなさい」って意外と難しくて、うまく伝えられない子が多いんです。特に「ごめんなさい」が難しい。言えない時は、ちゃんと怒ります。よくよく考えると、私はここで一番怒る人かもしれないです(笑)。

――そうなんですか!?

はい(笑)。でも、やっちゃいけないことをしたとして、ただただ「ダメ!」と言うことはしないようにしていますね。それぞれ何かしら、子ども同士のやりとりや関わりの中で、理由があってトラブルが起きているので。ちゃんと向き合って理由を聞きつつ「それは違うよ」とか、「やり方が違うよ」って伝えるようにしています。

自分が発することがブレないように芯を持つことが大切

――「怒る人」の役回りはちょっと辛そうですが……でも、大切なことですよね。

そうですね。でも怒る人は一人いれば十分。ありがたいことに、ここのスタッフはみんなフォローしてくれるので、怒られた後の子どものサポートもできています。
あと、怒るためにはブレない芯を持つことが大切だと思います。言っていることがブレてしまうと、子どもたちもなんで怒られているのかわからなくなるだろうし、周りでフォローするスタッフたちも困惑させてしまうし。

――福川さんの「芯」はなんですか?

やっぱり、子どもたちの笑顔を守ること。それは今だけじゃなくて、将来私たちの手から離れても笑顔でいてほしい、ってところですね。
この子たちは、ここを卒業した後も、多くの大人と関わって生きていかなくちゃいけない。だからこそ、みんなが気持ちよく手を貸してくれるような、愛される人になってほしいと願っています。


お母様と同じ福祉の道に進まれたこと、移動支援で子どもたちと出会い、児童福祉に興味を持ったことなど、この業界で働くきっかけをせきららに語ってくれた福川さん。終始笑顔でお話しされる姿を見ていると「怒る人」という役回りが嘘のようでしたが、子どもたちへの愛が溢れるお言葉にとても感銘を受けました。

後編では、この仕事のやりがいや事業所の管理者としてお話、今後の目標についてお話を伺います。

取材・文/児玉知子
撮影/喜多 二三雄

Information

はるはうすkids
住所:東京都大田区東六郷2丁目9-16阿部ビル1F
TEL:03-6715-7366

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