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特集・コラム 2019-11-14

私の手にしかできない仕事 Work.2 Harriet Ginza総院長・関口賢(前編)

「自己治癒力を高め、元の姿に戻す鍼灸治療」を治療方針に掲げ、治療を通じて日々「HEAL the WORLD ~世界を癒そう~」のメッセージを発信し続けている、Harriet Ginza(ハリエット ギンザ)。のべ7万人を指導してきた総院長の関口賢先生は昨年『月曜断食 「究極の健康法」でみるみる痩せる!』(文藝春秋)を上梓(じょうし)し、「鍼灸界のカリスマ」と呼ばれています。

「患者さまの健康に貢献できる鍼灸治療の仕事に就けて、本当に幸せです。自分の天職だと確信しています」と語る、関口先生。「私の手にしかできない仕事」を手にした過程やその仕事でかなえたいことについて、お聞きしました。

「鍼灸の力で人の人生を豊かにしていく」ビジョンを掲げた男に宿る市船の「Life is Challenge」スピリット

——関口さんが鍼灸師になろうと思ったきっかけを、教えてください。

中学生のときにサッカーの全国大会で優勝した経緯もあり、高校入学前、たくさんのJリーガーを輩出している千葉県の名門・船橋市立船橋高等学校(通称:市船〈いちふな〉)からスカウトされました。そして、中学校3年時に市船が『全国高等学校サッカー選手権大会』で優勝した瞬間を国立(国立競技場)で見届けたこともあり、「あの(市船の)青いユニフォームを着てサッカーをやりたいな」と強く思うようになったんです。

ただ、開業歯科医で、高校在学中に他界してしまった父は、僕に跡を継がせたかったのか、よく「自分と同じ大学の歯学部に進学させる」と言っていました。おそらく父は、高校の3年間を勉学に費やしてほしかったはずです。けれど僕は、高校3年間が終わったら浪人してでも父と同じ大学の歯学部に行くことを条件に「高校3年間は市船でサッカーをやらせてほしい」と強く依頼しました。

結果、父は僕の気持ちを理解してくれて、市船への入学が決まったんですが……プロを目指すつもりはありませんでした。なぜなら、父が治療で人に貢献する姿を見て育ったこともあり、「自分もいつかは父のような歯科医になって人に貢献したい」と考えていたからです。

——最初は歯科医を目指されていたんですね。そこから鍼灸師を選んだ理由は何だったのでしょうか?

市船時代にケガをしたとき、治療の一環として鍼灸を受けたことです。それがきっかけで鍼灸の世界に興味を持ち、「鍼灸師になって父のように人に貢献しよう」と考え、鍼灸師の道を選びました。

市船卒業後、東京メディカル・スポーツ専門学校に進学し、国家資格を取得して都内の治療院で働き始めたんですが、初めて鍼をした患者さんに言われた「あんた、下手ね。代わって」の一言は、今でも忘れられませんね。その日のためにすごく練習して自信もあったので、悔しくて泣いてしまいました。この程度の技術では、人から認められないんだと。それからというもの、時間を見つけては友達や知り合い、スタッフに声をかけ、時間が空いている人の体を貸してもらって、練習を重ねました。

その後、努力が実を結んだのか、患者さんから評価されたり先輩から認められたり自分の予約が埋まったりと結果が出るようになったのですが……もともと自己承認力が低いタイプだったので、実感はありませんでしたね。

——とはいえ、その結果が伴っての院長着任のように感じます。入社2年目で院長、は業界的に早い方なんでしょうか?

早いペースだと思います。僕が入社したとき、先輩の鍼灸師は約10人いました。中には辞めてしまった人もいたんですが、実力が認められて、入社2年目から院長を任せてもらえるようになったんです。ただ、院長を任されたとき、僕の「Life is Challenge」の精神が強すぎて、当時4~5人いたスタッフから退職者が出たり「一緒に仕事したくない」と批判されたりする事態を招いてしまって……。

僕は「患者さんのために」の気持ちがあれば、営業後に残って練習をすることや患者さんのためになるような知恵を出すことは当然だと思っていました。しかし、スタッフに「当然だと考える理由」を伝えずに自分のエゴを押しつけていたので、スタッフはみんな窮屈に感じていたんです。もともとキャプテン気質ではないし、正直、人と向き合うことも苦手なので、見事に「自分が避けてきた壁」にぶち当たりました。スタッフと腹を割って話し、自分を変える努力をして壁を乗り越えましたが……一番成長したといえる時期でしたね。

——Life is Challenge」の精神とは、どのような考えですか?

市船のサッカー部は、大事な試合の前に、控室で昔の有名選手が活躍したショートムービーをみんなで見るんです。そのとき、監督が掲げる信念「Life is Challenge(人生は挑戦)」のスローガンを掛け合わせて、「人生は挑戦だ。よっしゃ、いくぞ!」とテンションを上げていくんですが、これが大好きで。「Life is Challenge」は社会の場に出た現在でもすごく大切にしている言葉です。

——2010年の開業前、ロンドンに渡航し、現地での開業を検討したそうですね。

勤務していた治療院を辞めるとき、リフレッシュ休暇を使って大好きなロンドンに行きました。イギリスでは日本のように鍼灸の国家資格がなく、就労ビザがあれば鍼灸師として働けるため、ロンドンでの開業を見据えて渡英したんですが……結局、就労ビザが下りず断念せざるを得ませんでした。

だからといって、帰国しても「辞める」と言った手前、今さら元いた治療院には戻れません。であれば、自分で開業しようと。ポジティブな理由での開業ではなく、しょうがなく開業した感じですね。院長を任されてから2年後の出来事でした。

——開業後しばらくは患者さんが少なかったと聞いています。

開業して成功する自信は何となくあったのですが、ふたを開けてみたら約半年間、患者さんが全く来院しませんでした。半年たってようやく増えてきたかな……と思ったら、東日本大震災が起きて再び減ってしまって。開業当初の頃は、大半がうまくいきませんでしたね。

けれど、今思えば当たり前だと思っています。「しょうがなく」開業し、院のビジョンが不明瞭だったからです。この理由に気づいたのは、開業から1年たったときでした。そこから、この治療院をどういう場所にしたいのか、来てくれる患者さんにとってどんな場所であるべきなのか、自分がかなえたいことは何なのかといった「院のビジョンを明確にする作業」を始めたんです。

僕が導き出したビジョンは、「女性が生まれ変われるような鍼灸院にしたい。人の人生を鍼灸の力で豊かにしていこう」でした。このビジョンに基づいて物事を進めたところ、自分と治療院の環境が大きく変わり、患者さんも増えていったんです。ビジョンが不明瞭だったときは「引き寄せの法則」ではありませんが、多分、院のスタンスの曖昧さが患者さんに伝わっていたんでしょうね。自分の生活を成り立たせるためだけに仕事をする。何か目的をかなえるために仕事をする。この2つの差は大きかったように思います。

——2010年に開業してからこれまでの9年間を振り返ってみて、率直にどんな印象を持たれていますか?

9年間、院としてうまくいったかどうかは正直よくわかりません。とにかく、あっという間でした。はたから見たら、うまくいっているように見える部分もあったのかもしれませんが……。ただ、『ONE PIECE』で「“海賊王”に!!! おれはなるっ!!!!」と宣言したルフィの周りに人が集まってくるように、僕が掲げる「鍼灸の力で人の人生を豊かにしていく」の理念に共感・コミットした仲間が増えていく過程はすごくうれしいですし、楽しいです。

——逆に、9年間の中で一番つらかった時期はいつ頃でしょうか?

よく「3年目・5年目はつらい」といわれますが、自分もそれに当てはまっていて、頑張ってもうまくいかず、どちらも2回くらい人が離れてしまう危機があり、とにかくつらい時期を過ごしました。成長したくてとにかく夢中で仕事をし、休みが月に2日あるかないか……といったときもありましたね。

仕事で結果が出ないと、自分自身が満たされなくなります。ただ、人生において「つらいこと」からは絶対に逃れられないと思っているので、そのときどういった対応をするかが肝心だと考えています。

「今耐えていれば、また上向くはず」といった淡い期待を持ったりただやり過したりすることはせず、「今、何が足りていないのだろう」と自問自答し、危機に向き合って「原因は何だろう」と深掘りしていくことが大事です。また、自分と向き合う際、自分で「自分は(悪い方向に)変わっていない」と思っていても部下から見たら「先生のこういう部分が変わりました」と指摘される部分が絶対あります。その指摘には、しっかりと耳を傾けるべきでしょう。

Harriet Ginzaのクレドの1つに、「物心両面で豊かになる」があります。「仕事=お金を稼ぐため」でもいいんですが、1週間で少なくとも5日は仕事しているので、仕事の充実度は人生の充実度に直結すると思うんです。プライベートが楽しくて仕事も楽しかったら、最高ですよね。

あと、僕は「縁」という言葉が好きです。うまくいかないとき、周りの人にかなり助けてもらいました。例えば、「ちょっとうまくいってないんだよね……」と相談をしたら患者さんを紹介してもらったり、異業種の先輩からアドバイスをもらったり。Harriet Ginzaのスタッフとの縁もそうですが、“縁”に助けられてつらい時期を乗り越え、現在(いま)がある実感はありますね。

仕事の充実が人生の充実につながっていると熱く語る関口さん。後編では、気になる採用方法、集客、そして人生で大切にしていることについて伺います。

私の手にしかできない仕事 Work.2 Harriet Ginza総院長・関口賢(後編)>>

Harriet Ginza[ハリエット ギンザ](旧:関口鍼灸治療院)

2010年開業。「自己治癒力を高めて、元の姿に戻す鍼灸治療」を診療方針に掲げ、業界初となる鍼灸とファスティングを併せた治療を実現。2018年、文藝春秋から出版した関口院長の著書『月曜断食 「究極の健康法」でみるみる痩せる!』が話題に。
URL:https://harriet-ginza.com/

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