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特集・コラム 2022-11-09

ケアマネジャーの資格は廃止になる? ケアマネジャー不要論とは|ケアマネジャーは将来性のある仕事?

介護の数ある資格のなかでも、ケアマネジャー(ケアマネ)は介護職に関するキャリアパスの上位にあり、将来的に目指したいと考える人が多い資格です。しかし、一部ではそのような重要な地位であるケアマネジャーを廃止するという意見が出ています。

なぜ廃止論が上がっているのか、そしてケアマネジャーの資格は本当に廃止されてしまうのか、心配になっている人もいるのではないでしょうか。そこで、ケアマネジャーの不要・廃止論が出た背景を解説するとともに、ケアマネジャーの将来性にも言及します。

将来ケアマネジャーとして働きたいと考えている人の役に立てば幸いです。

ケアマネジャー(介護支援専門員)の資格は廃止になる? ケアマネジャー不要論とは

結論からお伝えすると、現状としてケアマネジャーの資格は廃止になる予定はありません。では、なぜそんな意見が上がっているのか、以下でケアマネジャー不要論の背景を解説していきます。

ケアマネジャー不要・廃止論とは

ケアマネジャーの不要・廃止論とは、「介護サービスのマッチングや調整だけなら事業者と利用者間でできる」「ケアマネジャーの仕事が利用者や家族の要望を伝えるだけになっている」という見方があったことから出てきた、「ケアマネジャーは需要がないのでは」「ケアマネジャーの資格を廃止してはどうか」という意見のことです。

以下で論議の背景について詳しく紹介します。

1. 国家資格取得者の試験免除科目が廃止|合格者激減

ケアマネジャーの第17回試験(2014年度)までは、保有している介護の国家資格によって免除科目がありました。しかし、2015年度の第18回試験から免除が廃止になったことで、合格者がグンと減少してしまったのです。

2. 受験資格の厳格化|再度合格者の激減

さらに、2018年度の第21回試験からは、ケアマネジャーの質を向上させる目的のために、受験資格が厳格化されました。その結果、受験者数が大幅に減少したうえに、合格者も激減してしまいました。


各数値の推移については、下記の記事でも紹介しています。
ケアマネジャーの合格率はどれくらい? 難易度が高い理由とは|受験対策のポイントを紹介

3. 法改正の影響|管理者が主任ケアマネジャーのみに

2018年度に介護報酬が改定され、事業所管理者は主任ケアマネジャーに限定されることになりました。そのため、主任ケアマネジャーのニーズが高まった一方、ケアマネジャーが不要になるのではという意見が出てきたのです。

4. ケアプラン有料化論争

政府には、現在自己負担のないケアプランを、1人1カ月あたり1,000円などの規定を定めて有料化しようという意向があります。有料化することにより、利用者の減少や現場の混乱が起きることは想像に難くありません。

さらに、ケアマネジャーの代わりにケアプランの作成をおこなう民間事業所があったり、施設がケアマネジャーに頼らなくても自分たちでケアプランを作成できるという意識を持っていたりと、ケアマネジャーがいなくても業務が回ると考える傾向が一部にあります。

このように、さまざまな理由によってケアマネジャーの不要・廃止論が浮上しました。

しかし、実際にはケアマネジャーの業務は非常に複雑で、ケアマネジャーがいなければ現場はとても回りません。実情を知らない人々の考えによって、現場を困惑させるような意見が出ているのです。

ケアマネジャーの仕事を探したい人は、下記のサイトをチェックしてみてください。
介護・看護・リハビリの求人・転職・募集│リジョブ

ケアマネジャーは将来性のある仕事なの?


前章のような資格廃止・不要論があるケアマネジャーですが、実際のところ将来性のある仕事なのでしょうか。ケアマネジャーの今後についてお伝えします。

1. 進む高齢化に需要は一層高まる

令和2年の高齢者(65歳以上)の人口は3,619万人、高齢化率(全人口に占める高齢者の割合)は28.8%と、平成6年に14%を超えて以降高齢化はますます進行しています。

今後も高齢化率は増加の一途をたどり、令和18年には33.3%に到達すると予測されているため、進む高齢化においてケアマネジャーの需要は一層高まっていくでしょう。

2. ケアマネジャーの仕事はAIには任せられない

介護現場において、AI(人工知能)を導入する取り組みがおこなわれ始めています。

ケアマネジャーの業務のなかにも、ケアプランの作成補助のように、一部AIに任せられる仕事があります。

しかし、AIにできるのはあくまでも業務のサポートであり、利用者と真摯に向き合い、利用者の気持ちを尊重しながら内容を決めていくという過程はAIには任せられません。そのため、ケアマネジャーの需要が減ることはないと考えられます。

3. ケアマネジャーの高齢化

前述のように受験資格が厳しくなったことなどにより、若年層のケアマネジャーが少なくなっています。社会全体の高齢化だけでなくケアマネジャー自体の高齢化も進んでいるため、一層需要は高まっているうえ、ケアマネジャーがいなければ介護保険制度は成り立ちません。

一方で、ケアマネジャーは高齢になっても続けられる仕事である点がメリットです。詳しくは下記の記事をご覧ください。
ケアマネジャーに定年はあるの? 年を重ねてもケアマネジャーとして活躍するには?

4. 合格率も少しずつ上がっている

2018年度に過去最低の10.1%まで落ち込んだケアマネジャーの合格率は、2021年には23.3%まで上昇し、受験者数自体も回復傾向にあります。

5. 介護職の中では給与が高め|処遇改善に期待できる

介護職にはさまざまな仕事がありますが、そのなかでもケアマネジャーの給与は高めです。一般的な介護職の月収が30万円前後であるのに対し、ケアマネジャーは35万円前後という結果があります。

もともとの給与が高いぶん一旦見送られてしまいましたが、激務かつ資格のハードルが高いことから、ケアマネジャーの処遇改善論は根強くあるため、今後の待遇の改善にも期待されています。

ケアマネジャーの収入の状況については、以下の記事もチェックしてみてください。
ケアマネジャーの平均年収・給与はどれくらい? 収入アップを目指す方法とは

6. 国家資格化の可能性

ケアマネジャーは今のところ民間資格ですが、日本介護支援専門員協会が以前から国家資格化を訴えてきたこともあり、今後国家資格になる可能性があります。国家資格になれば目指す人も増え、多くの人材がケアマネジャーとして輩出されていくでしょう。

7. 資格失効条件の緩和化

現在、ケアマネジャーの資格は5年ごとの更新手続きが必要で、手続きを忘れると登録が抹消されてしまいます。

しかし、日常のせわしい業務のなかでうっかり失効してしまうケースも多く、条件の緩和化が強く求められているため、今後の法改正によって緩和されることが期待できます。

ケアマネジャーはこれからも必要とされるお仕事!


ケアマネジャーの仕事は、AIなどが取って代わることのできない、複雑かつ専門性の高い仕事です。

実際のケアマネジャーの重要性を知らない人たちが出した廃止論によって、介護業界に衝撃と不安をもたらしましたが、さらに進行する高齢化の時代においてこれからも需要が高く、必要とされる存在であることは間違いありません。

介護職を志す人は、社会を支えるための重要な役割を担うケアマネジャーをぜひ将来的に目指してみてください。

引用元
第22回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について
令和3年版高齢社会白書(全体版)

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