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特集・コラム 2021-06-01

訪問介護で開業するにはどんなことが必要なの? 開業までの流れを解説!

介護事業にはさまざまな種類があり、それぞれ開業に必要な手続きや流れが異なります。介護職に就いていた人が、独立開業しようと考えた際、実際に働いていたとしても開業の流れはわからないことが多いという人も少なくありません。

事前に必要な準備を理解しておくことで、いざ手続きをおこなう際にスムーズに進められるでしょう。こちらでは、訪問介護事業を開業しようと考えている人に向けて、必要な準備や流れについてくわしく解説しています。

訪問介護で開業するために必要なものとは? 流れを解説!

訪問介護を開業するために、必要となるものはあるのでしょうか。こちらでは、訪問介護事業の開業に必要な条件や手続きについて解説します。

訪問介護開業に必要な資格・条件|人員・法人格

訪問介護事業所の開業に必要な資格や条件について解説します。開業をする前に、必要となるものを確認しておきましょう。

常勤のサービス提供責任者|介護福祉士など

まず、介護サービスを提供する訪問介護員が必要となります。配置基準は、常勤の介護員が2.5人以上であること、介護員に必要な資格は介護福祉士や介護職員基礎研修課程修了者、もしくは看護師または准看護師、ヘルパー1級課程修了者、ヘルパー2級課程修了者などです。

さらに、これらのサービス提供者の責任者も必要になります。サービス提供責任者の配置基準は1名以上です。これらの資格要件や配置基準は、各自治体によって異なる場合があります。事前に、開業予定の自治体のホームページなどを確認するようにしましょう。

法人格の取得|株式会社・NPOなど

訪問介護事業の開業は、法人でなければおこなうことができません。法人の種類は株式会社やNPO法人、社会福祉法人、合同会社などさまざまありますが、どの法人格でも大丈夫です。まずは法人格を取得してから、開業手続きを開始してください。

法人格を取得している場合は、定款に「通所リハビリテーション事業」という事業目的があることが必須条件となりますので、文言があるかどうかを確認しておくことが大切です。ない場合は、追記しておきましょう。

事務所を設立する|設備や人員に関する基準

訪問介護で事務所を設立する場合には、どのように対処するとよいのでしょうか。こちらでは、訪問介護事業の事務所設立にあたり、満たすべき基準について解説します。

設備基準|事務室や相談室など

事務所の広さに決まりはありませんが、事務作業をおこなうための机や椅子が設置できるスペースがあることが条件です。また、利用者の情報を管理する書類などを整理するためのキャビネットも置く必要があります。

人員基準|管理者・サービス提供責任者・訪問介護員

訪問介護事業の管理者を1名以上配置することが条件です。サービス提供責任者や訪問介護員の配置基準は、先述のとおりとなります。さきほども触れていますが、各自治体で資格要件や人員配置基準が異なることがあるため、必ず自治体のホームページを確認してください。

必要な備品を揃える

設備基準や人員基準を確認したら、施設運営に必要な備品を揃えましょう。備品にはさまざまなものがありますが、たとえば電話やFAX、事務作業をおこなうためのパソコンやプリンターなどです。ほかにも、鍵のついた金庫や書類を入れる棚、タイムカードなども必要になります。

衛生面に関する必要な備品としては、洗面台や液体石鹸、消毒液、清潔なタオル(ペーパータオルも可)などが必要です。

運営基準|経営や業務に関するとりきめ

介護事業所の運営基準は、介護事業を開業するにあたり事業所が留意すべき運営ルールだと考えるとわかりやすいです。運営基準をサービス利用者やその家族に文書で説明し、同意をえたうえでサービスを提供することが可能となります。

訪問介護の運営基準は以下です。

・利用申込者にサービスの提供内容や手続きについて説明し、同意をえること
・提供を拒否することはできない
・被保険者資格があるか、要介護認定を受けているか、その有効期間の確認をする
・サービス担当者会議等をおこない、心身の状況を把握しておく
・サービスの提供内容を記録する
・利用料を受けとる
・訪問介護計画の作成し、利用者の同意をえる
・利用者に関する必要な情報を市町村に通知する
・利用者の病状急変など、緊急事態が発生した際は速やかに主治医への連絡等の対応を取る
・事業運営についての重要事項に関する運営規定を定める
・介護サービスなど総合的なサービス提供をする
・訪問介護員等の健康状態の管理や設備などの衛生管理をおこなうこと
・苦情窓口を設置し、苦情処理に必要な措置と記録を取る
・事故発生時は、市町村や利用者の家族、居宅介護支援者等への連絡など、必要な対応を速やかにおこなう

介護事業所の運営基準についても、自治体により内容が異なる可能性があります。必ず自治体ホームページなどを確認してください。

審査を受ける|指定申請書類の提出

訪問介護事業の開業の必要な準備が整ったら、指定された申請書類を用意して提出しましょう。東京都の場合、申請前に管理者が研修を受講し、受講後に申請をおこないます。申請や審査についても、各自治体で異なる可能性がありますので、確認したうえで申請をおこなってください。

新規指定申請にはどんな書類が必要なの?

新規に指定を受けるにあたり必要な書類は、東京都の場合規定の申請書や作成した運営規程、料金表などです。必要な書類についても、各自治体によって異なる可能性がありますので、確認した上で準備してください。

訪問介護事業所を設立するメリットと注意点とは?

訪問介護事業を開業するうえでのメリットについても、確認しておきましょう。また、注意点について解説していきます。

訪問介護事業所を設立するメリット|開業のハードルが低め

訪問介護事業を開業するメリットのひとつとして、「開業しやすいこと」が挙げられます。大がかりな介護施設が必要ないため、開業資金も比較的少額で開業できますし、人員の配置基準もハードルが低いです。訪問介護の特性上、利用者が多くなっても自社の施設を増設するなどといった必要がないため、将来的にコストがかかるといった心配もありません。

また、利用者が増えてきたら人員を増やすなど、無理のない事業拡大が可能なので、運営しやすい点も開業のメリットだといえます。

さらに、「人員を確保しやすい」ことも、訪問介護事業を開業するメリットのひとつです。訪問介護員は「介護職員初任者研修」を取得している人であれば、実務に就くことができます。これは介護の資格のなかでも比較的取得しやすいため、有資格者が多く、採用しやすいからです。

訪問介護事業所を設立するときの注意点|利用者確保と労働環境

訪問介護事業は、利用者が施設を訪れるのではなく介護員が利用者宅を訪問してサービスを提供します。そのため、目立った施設などがないことから、事業の存在をアピールしにくいです。より多くの利用者をつかみたいと思うのであれば、相当の営業力が必要になるでしょう。

また、訪問介護事業は開業しやすいぶん同業他社が多く、利用者の奪い合いが起きているという現状があります。この点からも、より高い営業力で利用者をつかむこと、また利用者離れを防ぐために高品質のサービスを提供することが求められるのです。

また、介護職は職員が定着しないことも悩みの種といえます。重労働であるわりに報酬は決して高くないため、従業員離れが起きやすいからです。利用者を確保しても、就業してくれる職員がいないと事業所を運営することはできません。適切な雇用条件を提示し、従業員が働きやすい環境を作ることも、訪問介護事業を運営するうえで重要な要素だといえるでしょう。

独立開業に備えて準備をはじめよう!

今回は訪問介護事業の開業や運営について、必要な条件や流れについてご紹介しました。基本的に訪問介護事業は比較的開業しやすく、無理なく運営することができる事業のひとつでもあります。そのため、開業を検討している人はぜひ行動してみるとよいでしょう。

ただし、開業に必要な条件は各自治体によって異なります。今回ご紹介した情報を参考に、自治体に確認したうえで手続きをおこなうようにしてくださいね。

参照元:
東京都福祉保健局 1 訪問介護(新規に指定を受けたい方へ)
東京都福祉保健局 介護保険 事業者指定のガイドブック

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