理学療法士の資格を取得するには?試験内容や受験ルート、勉強法を紹介
リハビリを通して、日常生活に欠かせない身体的な運動機能の維持・回復をサポートする理学療法士ですが、どのように資格を取得すればいいのかわからない方もいるでしょう。
本記事では、理学療法士の仕事内容や国家試験の概要、資格を取得するために学ぶ内容、教育機関ごとの特徴やおすすめの勉強方法について解説します。
理学療法士を目指そうと考えている方はぜひ参考にして、理学療法士になるための道筋を明確にしましょう。
理学療法士ってどんな仕事?
理学療法士の仕事は、物理療法や運動療法を用い、医学的なリハビリテーションを行う医療系の専門職です。
怪我や病気で身体に障害があったり、障害の発生が予想されたりする方で、基本動作の回復、障害の悪化を予防する目的で日常生活を送るためのリハビリサポートを行います。
理学療法士国家試験に合格する必要がある
理学療法士として働くためには、理学療法士国家試験に合格しなければなりません。試験に合格すると、理学療法士及び作業療法士法に基づく厚生労働省の免許を受け取れます。
リハビリの専門家として働く理学療法士は、身体機能の維持・回復だけでなく、家族への介助指導や生活改善に向けたアドバイスなど、生活全般に関するサポートをします。
理学療法士国家試験の出題内容
理学療法士国家試験の出題内容は、一般問題・実地問題の2科目からなり、重度の視力障がい者向けには口述試験及び実技試験も実施されています。それぞれの科目の出題範囲について、チェックしてみましょう。
一般問題
教育機関で学習する基礎科目には、リハビリテーションの基礎・歴史、外科・内科、運動学・解剖学・神経学などがあり、試験では一般問題として出題されます。
実地問題
専門科目として学ぶ科目は、理学療法評価学・地域理学療法・理学療法治療学・運動療法学・日常生活技術学があり、試験では実地問題として出題される領域です。
口述試験及び実技試験
重度の視力障がい者向けには、実地問題の代わりに口頭試験や実技試験が実施されます。出題されるのは、運動学・臨床心理学・リハビリテーション医学・臨床医学大要・理学療法といった科目です。
理学療法士になるためにはどんなことを学ぶの?
理学療法士とは病院や介護施設で、患者や利用者の身体機能を維持・回復させるための理学療法をおこなう医療従事者です。
ただし、理学療法士の国家資格を受験するためには、養成校で3年以上勉強して必要な知識と技術を身につけなければなりません。ここでは、理学療法士を目指すために押さえておくべきポイントをご紹介します。
受験資格|大学や専門学校などの養成校で3年以上の勉強が必要
理学療法士の受験資格を得るためには、文部科学大臣が指定する下記の養成校でカリキュラムを履修し、専門知識と技術を学ぶ必要があります。
・4年制大学
・短大(3年制)
・専門学校(3〜4年制)
また、海外で理学療法の学校や養成施設を卒業し、上記と同等の知識・技能があると認められる人は、書類審査による厚生労働大臣の認定を経て受験資格を得ることができます。
理学療法士になるための勉強内容を紹介!
理学療法士を目指すための養成校では、理念や基礎、専門知識や技術まで学ばなければなりません。1年次は基礎知識の学習からはじまり、学年が進むにつれて専門分野の教育を受けることになります。
カリキュラムには、臨床実習が必須です。そのため、病院や介護施設などの現場で経験を積む必要もあります。
基礎科目からはじめる|解剖学・リハビリテーションなど
養成校に入学して最初に学ぶことは、基礎科目です。ここで、医療従事者として必要な基礎知識を勉強します。基礎科目といっても、学ぶことはたくさんあります。具体的な内容は、下記のとおりです。
・解剖学
人体の骨・筋肉・臓器などの形態や構造を学び、研究するための学問
・生理学
神経や細胞など、人体を構成する重要な組織の役割を知り、それぞれの機能を学ぶ
・運動学
全身にある関節や筋肉の働きを知り、それぞれの特徴について学ぶ
・リハビリテーション概論
リハビリテーションの定義と概念を学び、理学療法士としての役割を理解する
1年次は、上記の基礎科目を中心とした勉強を進めていくことになります。
専門科目や臨床実習へと移行
基礎科目を修めたあとは「専門科目」や「臨床実験」など、より知識と技術が必要となる段階へと進みます。
・運動器障害理学療法学
運動器障害の評価・診断の方法や注意点についての知識を深め、運動器に障害を持つ対象者に関する理学療法を学ぶ
・理学療法技術論
より現場に近い環境で、実際の状況を想定した援助・指導の仮想訓練をおこなう
・義肢装具学
義肢装具の目的を知り、装具の疾患別装着法や理学療法との関連性を学ぶ
・神経障害理学療法学
脳や神経の障害によって生じる運動機能の問題を改善するための学問を学ぶ
上記のような専門的学問を修めて、最終的には国家試験対策へと臨みます。
国家試験対策も
国家試験対策は、過去の出題を把握して傾向と対策を練ることが重要です。養成校では国家試験対策もおこない、卒業とあわせて国家試験受験資格の取得、そして「理学療法士」の免許取得を目指します。
大学と専門学校では学ぶものは違うの?
理学療法士は、大学と短大、専門学校で学ぶ内容に大きな違いはあるのでしょうか。ここでは、教育機関の種類によってどのような違いがあるのかを解説します。
大学の特徴|4年間で幅広く学ぶ
大学は、専門学校に比べて教養科目が充実している点が特徴。理学療法士の国家資格取得だけではなく、外国語など一般教養の授業も受けることができます。「グラウンドや体育館が必要」「図書館が必要」といった法的要件があるので、このような施設・設備が整っているという点も大学の特徴です。
また、理学療法やそのほかの学問を深く研究するための研究室が備わっているという点も特徴のひとつでしょう。臨床実習では大学附属の病院や介護施設、個人のクリニックなどで実習することが多いです。
大学がおすすめなのはこんな方!
大学がおすすめなのは、次のような方です。
・卒業後、理学療法士以外の進路を選択肢に残したい人
・大学という充実した施設で学生生活を送りたい人
・理学療法士の資格取得だけでなく、一般教養などさまざまな学問を学びたい人
国家資格取得後に理学療法士として働くのではなく、理学療法をさらに深めるための研究に就きたいという方は大学がよいでしょう。将来のために理学療法士以外の進路を選択肢に残したいという人にも、おすすめです。
杏林大学|リハビリテーション学科 理学療法学専攻
理学療法士の国家資格を取得できる大学のひとつに、杏林大学があります。こちらの大学ではリハビリテーション学科を設置しており、理学療法学専攻では、理学療法の知識と技術を基礎から応用にいたるまで深く学ぶことが可能です。
また、杏林大学医学部付属病院や近郊の大学附属病院、実績のある病院などでの臨床実習が可能で、現場に則した実践的な学習を受けられます。
卒業後は理学療法士として医療機関や介護施設・スポーツチームなどに就職するだけでなく、大学院や研究機関で研究職として採用される実績もあるのが特徴です。
短大の特徴|短期間で必要なカリキュラムを学ぶ
短大は、3年間のカリキュラムで職業や生活に役立つ科目を学べるのが特徴です。厚生労働省の定義によれば、短大は地域の身近な高等教育機関として、短期間で大学としての教養教育やそれを基本とした専門教育を提供する点にあるとされています。
実際に、大学と比較すると短大の県内進学率は際立って高く、地域の身近な高等教育機関としての役割を果たしていることがわかります。
短大がおすすめなのはこんな方!
短大がおすすめなのは、次のような方です。
必要単位だけを取得して短い期間でで理学療法士を目指したい
私立の4年制大学よりも安く学校に通いたい
途中から4年制大学への編入も視野に入れている
受験要件に必要な3年間と必要最低限のカリキュラムで理学療法士を目指したいと考えている方には、短大がおすすめです。学費が4年制私大より安いのもポイントです。
平成医療短期大学|リハビリテーション学科 理学療法専攻
理学療法士の資格を取得できる短大の一つが、平成医療大学です。高い専門性・人間性・社会性を身につけられるカリキュラムが魅力で、保険・医療・福祉に関する基礎から応用的な知識はもちろん、実践的なカリキュラムでリハビリテーションを学べます。
コミュニケーション能力や倫理観、チームワークを重視した授業スタイルで、卒業後に理学療法士として活躍していくための基礎的な能力を効果的に身につけられますよ。
引用元
学校法人 誠広学園 平成医療短期大学:リハビリテーション学科 理学療法専攻
専門学校の特徴|3年または4年で実践的に学ぶ
専門学校では理学療法士の国家資格取得を目指し、現場で働くための実践的な教育を集中して学ぶことができます。大学のように一般教養を学ぶことはなく、理学療法士としての「資格取得」と「就職」に特化しているのが特徴です。
また、修学期間を「3年」か「4年」か選択できることも専門学校の魅力でしょう。なるべく短期間で国家資格取得を目指すか、時間をかけてしっかりと学ぶかを選ぶことができます。
専門学校がおすすめなのはこんな方!
専門学校がおすすめなのは、次のような方です。
一般教養は不要で、理学療法を集中して学びたい人
卒業生の資格合格率・就職率を重要視したい人
専門学校ならではの国家試験サポート・就職サポートを受けたい人
手厚いサポートがある点が、専門学校の魅力です。卒業後は理学療法士としての就職を決めている人、短期間で集中的に理学療法士に必要なことを学びたい人は、専門学校を選択するとよいでしょう。
東京メディカルスポーツ専門学校|理学療法士科(夜間部アリ)
理学療法士の専門学校の一例としては、東京メディカルスポーツ専門学校があります。この専門学校では、将来やりたいことや目標に合わせた授業選択が可能です。担任や各講師陣のダブルサポートにより着実に国家試験合格を目指せること、就職希望者の就職率100%である点が同校の特徴といえます。
また、夜間部も開講しており、自身のスケジュールに合わせて時間割を作ることも可能です。フレキシブルに学習を重ねることができます。
理学療法士国家試験を取得するための勉強方法
理学療法士として働くためには、理学療法士国家試験に合格する必要があります。例年の合格率は8割前後と高いので、コツをおさえて勉強すれば問題なく合格できるはずです。
効率的に勉強できる時間帯を有効活用する
理学療法士国家試験に合格するための勉強のコツは、自分が集中できる時間帯に学習する習慣を身につけることです。また、朝起きてから2〜3時間が脳が最も活発に働く時間といわれています。この朝の時間帯と、記憶に定着しやすい夜の時間帯に集中して勉強するのもよいでしょう。
集中力を高める工夫をする
勉強にどうしても集中できない場合は、ガムを噛んで集中力を維持したり、コーヒーや紅茶などに含まれるカフェインを摂取して眠気を覚ましたりするのがおすすめです。また、お気に入りのアロマを焚いて気分をリフレッシュするのもいいでしょう。
過去問を解いて問題の傾向に慣れる
理学療法士国家試験に合格するためには、問題の傾向に慣れて、出題範囲や出題される問題にどのような特徴があるのかを分析し、本番の試験に備えておく必要があります。過去数年度分の過去問を何度も解いて、試験で合格点以上とれるように準備しましょう。
理学療法士になるための資格取得ルートと勉強方法を知って、国家資格の取得を目指そう!
理学療法士の資格を取得するためには、養成校で3年以上のカリキュラムを履修して、理学療法士国家試験に合格しなければなりません。
養成校には大学や短大、専門学校の3つの選択肢があり、カリキュラムや学費、学習期間を考慮して、学びやすい養成校を選ぶことが、理学療法士になるための近道です。
また、国家試験に合格するためには、勉強するタイミングや過去問に慣れることが必須。資格取得のルートと勉強法をおさえて、理学療法士国家試験の合格を目指しましょう。
引用元
厚生労働省:理学療法士国家試験の施行
文部科学省:短期大学について
学校法人 誠広学園 平成医療短期大学:リハビリテーション学科 理学療法専攻
杏林大学:リハビリテーション学科 理学療法学専攻
東京メディカル・スポーツ専門学校:理学療法士科