勉強だけでなく、『人生観を広げること』が最も重要 介護リレーインタビュー Vol.20【理学療法士 酒井健吾さん】#2
介護業界に携わる皆様のインタビューを通して、介護業界の魅力、多様な働き方を紹介する本連載。今回お話を伺ったのは、多摩市にある地域密着型の天本病院で理学療法士として働いている酒井健吾さん。
前編では、理学療法士になったキッカケや病院の取り組みについてお聞きしました。後編は、副主任としての立場や葛藤、今後の目標などについて伺います。
副主任としての大きな責任感
自分のキャリアよりも、後輩の成長が嬉しい
―副主任になり、新たに感じたことや葛藤したことなどはありますか?
ありますね。業務内で後輩ひとりひとりをみたり指導する時間が増え、僕自身の視野が広がったというところが大きいです。副主任になる前は、自分自身のキャリアや専門性を高めたいという意識が強かったのですが、副主任になってからは後輩の成長も嬉しく感じるようになり、以前と比べて仕事の視野が確実に広がったと実感しています。
同時に、より責任感も感じるようになりました。副主任になる前は、例えば後輩指導に関して周囲が問題と思っていることでも僕からみて問題とは思わないことに対しては後輩や上司に伝えず自分で完結していることもありました。
しかし、副主任は、伝える役割が増す役職になるので、自分の判断だけでは見過ごすわけにはいかず、どんな時も逐一報告・伝達することが求められます。なので、今は、指導の大切さを忘れず、取りこぼしのないように気を付けています。
―今まで以上に、副主任として気遣うところが増えてきたんですね。
副主任として上司と後輩の間に立ち、後輩たちがなかなか上司に言えないことを上司に伝えたり、上司の意見を現場に浸透させるために、常にわかりやすい形で伝えるように心がけています。僕は今年の4月に副主任になったばかりで、役職者としてはまだまだこれからの部分もたくさんありますが、まずはできることからやっていくように心がけています。
副主任として気を付けていること
それぞれの個性を活かし、一緒に成長する
―後輩の方へ指導の際に、酒井さんが気をつけていることはありますか?
僕は新卒でこの業界に飛び込んできましたが、自分よりも年上の方や社会人経験を積んでから入って来られる方も多いです。なので、先輩だからと決して偉ぶることはせずに、個人のバックグランドを見据えたうえで、接するようにしています。
最近だと、新卒で入って来る方たちは、僕が学生の時受けていた教育と比べて内容が変わってきています。特に今年入職した新人スタッフたちは、コロナ禍の影響で実習があまりできておらず、現場をほとんど知らないまま入社してきています。なので、最初からひとりでやってもらうのではなく、まずは一緒に実習の延長にある仕事から教え、少しずつ現場に慣れてもらうようにしています。
―副主任として、部署全体での今後の課題や目標があればお聞かせください。
まだまだ「質の高いリハビリテーション」を追求していきたいと思っています。そのためには、一緒に働いている介護職・看護職やドクターと意識を共有、統一させることが必要不可欠になるので、日々力を合わせることを忘れず、業務に励んでいきたいと思います。
これから理学療法士を目指す方たちへ
できれば、勉強<コミュニケーションスキルを磨く
―今後、理学療法士を目指す方へアドバイスをお願いします。
あまり勉強だけに注力してほしくないと思います。専門職としての勉強は実際に現場の仕事に就いてから、目の前の患者さんを良くするためにどうすべきかを、その都度勉強するのがいいと思うんです。
あとは、コミュニケーションがとても重要だと思います。特に高齢者の方は、リハビリに対して積極的じゃない方も多いので、コミュニケーションをとって信頼関係を築く。すると少しずつ取り組んでくれるようになります。また、より良いコミュニケーション力を鍛えるためには、いろんな人と話して人生観を広げておくと良いですね。
人生観を広げておくと、たくさんの知識や趣味を得られるので、いざ患者さんとコミュニケーションをとった時にその知識や趣味がつながったりして、よりよいコミュニケーションが図れることもありますね。理学療法士を目指すためには、勉強も大事ですが、コミュニケーションスキルに磨きをかけるために人生観を高める努力をしておくと、実際に仕事をした時に必ず活きてきます。
―勉強だけではなく、コミュニケーションにも力を入れることが大切なのですね。酒井さんがそのことに気づくきっかけとなる出来事があったのですか?
そうですね。僕は学生時代に、介護のデイサービスでアルバイトをして実際に理学療法士さんの助手として現場を経験したことが、コミュニケーションの大切さや人生観を広げることの重要性に気付く、大きなきっかけになりました。僕はたまたまデイサービスのバイトをしていましたが、コンビニとか居酒屋などのバイトも人と接することができていいと思います。重要なのは、人と接する経験があるということなので。ただ、昨今は、今までのように気軽に人と接する機会が少なくてなかなか難しいとは思います。そんな中でも、できるだけ学生のうちに身近な人と関係を築く意識をするなど、「今」できる範囲で人と関わることの重要さを学んでもらえたらいいと思います。
―酒井さんのお話から、理学療法士は学ぶことがとても多いお仕事だと思いましたが、日常との区別をつけるためにon/offを切り替えることは大事になりますか?
僕自身は、on/offを切り替えることは苦手です。ただ、理学療法士は生涯学習みたいなところがあって、気づくと仕事に熱中しすぎてしまうこともあります。なので、そこをうまく切り替えたい人は、自分の中のライフバランスを上手に立てながら仕事していくのが理想的だと思います。
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日々、知識・技術を向上する気持ちを忘れず誠実に取り組む酒井さんの姿は、職種は違えど、響くお話ばかりでとても勉強になりました。コミュニケーションは患者さんとはもちろん、スタッフ間をつなぐ大事なツールだと教えていただきました。
取材・文/東 菜々(レ・キャトル)
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天本病院
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