介護職は精神を病むことが多い?うつ病や燃え尽き症候群などの対処法について解説!
精神的な負担も少なくない介護職。その仕事に従事する人のなかには、精神を病んでしまう人も少なくありません。
しかし、その原因をよく理解し、しっかりと対策を講じながら日々の業務に従事すれば、精神を病むことを避けられる可能性も。ここでは、介護職が精神を病んでしまう理由とその対処法を解説します。
介護職が精神を病む7つの理由
介護職が精神を病む理由として、この職種ならではの環境や業務の特色が関係しています。しかし、それらの原因はどこの職場でも存在するものではなく、環境や働き方次第では精神を病むことなく、心身の健康を保ちながら従事することが可能です。
ここでは、介護職が精神を病む7つの理由について確認しておきましょう。
理由1|人手不足
介護業界では介護を必要とする人の増加などにより、慢性的な人手不足に陥っています。じゅうぶんな人員を確保できていない施設では、ひとりの職員やスタッフにかかる負担も大きく、そのことがストレスの原因となり、精神を病んでしまう人も少なくありません。
厚生労働省の調査によると、人手不足を感じている介護系施設は全体の半数以上を占めていることがわかっており、このことは看過できない問題のひとつとなっています。
理由2|身体的な負担が大きい
介護職が精神を病んでしまう原因としては身体的な負担が大きいことも挙げられます。利用者の症状にもよりますが、介護業務では入浴介助などの身体を支えたり、持ち上げたりする重労働も多く、体力の限界を感じてしまう人も少なくありません。
つねに身体が疲れた状態にあると、それはやがて精神にも影響するようになることから、病んでしまう人も少なくないようです。
理由3|職場内での人間関係
介護業界では、職場の人間関係に悩む人も少なくないようです。その原因としてはこの業界にさまざまな年齢・経歴を持つ人が集まりやすく、派閥や対立が生じやすいことが挙げられます。
また、この業界では看護師やケアマネジャー、リハビリ専門職などの介護職以外の人とかかわることが多いです。そこで意見の対立が生じやすいことも、精神を病む人が多い原因といえます。
理由4|利用者やその家族との人間関係
介護職では、利用者やその家族との人間関係で悩む人も珍しくありません。実際の現場では利用者やその家族から心無い言葉をかけられることもあり、それが精神を病んでしまったり、退職・転職を決断したりするきっかけとなることも多いようです。
また、介護系施設ではクレームへの対応も介護職に従事するスタッフがおこなうことが多く、その精神的負担が病んでしまう原因となることもあります。
理由5|給与面など待遇への不満
介護職では、給与面での待遇に不満を持つ人も多いようです。ハローワークの求人統計データによると2020年度の介護職の平均月収は19.9万円となっており、仕事のハードさに比例するほどの給料をもらえていないと感じている人が一定数存在することが想定できます。
一方で、国による介護職を対象とした待遇改善の施策もおこなわれてきました。2020年度の厚生労働省の調査では全体の93.5%の施設がその利用届け出を提出したことがわかっています。それでも待遇の大幅な改善は実現しておらず、依然として給与水準は低いままのようです。
理由6|夜勤などの勤務体系
多くの介護系施設では、勤務体系を2交代や3交代としています。これは24時間体制で利用者に対応している施設が多いためで、この勤務形態が精神を病んでしまう原因となることもあるようです。
2交代や3交代の勤務体系の場合、スタッフは夜勤と日勤の繰り返しとなることが多く、睡眠の質が下がってしまい、そこから体調を崩して離職せざるを得なくなってしまう人も少なくありません。
理由7|施設の方針が合わない
介護業界では各々の施設に異なる特色があり、その方針が合わないことが精神を病んでしまう原因となることもあります。
たとえば、スタッフ側は利用者に寄り添った仕事をしたいと思っているのに、施設側は効率を重視しているといったケースがあるとしましょう。この場合、そのギャップに不満を感じ、仕事へのモチベーションを保てなくなってしまう人も少なくありません。
介護職におけるうつ病や燃え尽き症候群について解説
厚生労働省が2020年度におこなった「過労死等の労災補償状況」の調査結果によると、精神障害の請求件数がもっとも多い業種は「医療、福祉」のカテゴリーに分離される「社会保険・社会福祉・介護事業」でした。
この業種に分類される介護職では、うつ病や燃え尽き症候群を発症してしまう人も少なくなく、有効な対処方法を知り、実行することが大切です。
うつ病の症状や対処方法
うつ病を発症すると過食・拒食のほか、食欲不振や不眠などの症状もあらわれます。これらの症状が出た場合、まずは病院へ行き、適切な対処方法を聞いたうえで治療をするとよいでしょう。
仮にうつ病と診断されたとしても、労働基準法によりすぐに解雇されることはありません。そのため、まずはゆっくりと休み、症状の改善を図ることが大切です。
また、悪化してしまったとしてもすぐに退職を決断せず、症状が緩和してきたら転職も視野に入れながら、ゆっくりと今後について考えるのがよいでしょう。
うつ病は労災認定されにくい場合がある
仕事が原因となってうつ病を発症した場合、労災認定がされにくいことも知っておきましょう。労災はストレスが重大事故につながるかどうかを認定の指標としますが、介護職ではストレスが重大事故につながると考えられることが少なく、労災認定がされにくくなっています。
このことから、労災認定をされるためには出退勤の記録やメールのやり取り、心身の変化などを記録しておくことが大切です。
燃え尽き症候群の症状や対処方法
燃え尽き症候群は責任感が強く、頑張りすぎてしまう人が発症するケースが多く、介護職でもその発症事例は少なくありません。症状としては、以下のようなものが挙げられます。
・吐き気
・食欲不振
・息切れ
・頭痛
・胃腸障害
・高血圧
・イライラしやすくなる
・意欲の低下
・他人に無関心になる
・自信がなくなる
・疲れを強く感じる
燃え尽き症候群の予防方法としては完璧主義にならないことや一人で抱え込まないこと、日常的にストレスを発散することなどが有効とされています。また、発症してしまった場合には、うつ病と同様に無理をせず休むことが大切です。
介護職で精神を病まないようにするには?
介護職では精神を病んでしまう人も少なくありませんが、しっかりと予防策を講じておけば、うつ病や燃え尽き症候群などの発症も防げます。
つづいては、介護職で病まないようにするためのポイントを確認しておきましょう。
第三者に話を聞いてもらう
仕事で感じた不満や不安は、誰かに話すだけでもその負担を軽減させられることがあります。仕事で不満・不安を感じたら、できるだけ家族や友人などの仕事関係以外の身近な人に話を聞いてもらうのがよいでしょう。
また、その際には答えを見つけることを重視するのではなく、話を聞いてもらうだけで意味があるのだと考えることも大切です。
体を動かす
仕事で抱え込んだストレスは、定期的に発散する機会を設けることも重要です。適度な運動はストレスの発散方法として非常に効果的で、友人と好きなスポーツを楽しんだり、ジムに通ったりする習慣を身につけるのもよいでしょう。
また、ハードな運動は避けたい方は近所を散歩する習慣を身につけるだけでもストレス発散になるため、こちらもおすすめです。
きちんと食事をとる
精神を病んでしまうと、食事をおろそかにしてしまいがちです。栄養バランスの偏った食事は心身の不調を促進させる原因にもなりかねず、さらに症状が悪化してしまうことも少なくありません。
そのため、心労を実感したらバランスのよい食事をとるようにするのが効果的です。
キャリアアップのためと割り切る
精神の不調は、考え方を変えるだけで改善できることもあります。たとえば、現在の仕事をキャリアアップのために必要な経験だと割り切って考えれば、前向きに日々の業務に臨めるようになるかもしれません。
また、キャリアアップをしたあとの未来のことを想像すると、内面に抱え込んだ不安や不満とうまく折り合いをつけられることもあります。
転職する
精神を病んでしまったことが原因で休職をしている人が復職を検討する場合は、同じ職場に復帰するのではなく転職をするのもおすすめです。介護職にはさまざまな職種があるため、ひとつの職種にこだわらず転職先を探してみるとよいでしょう。
また、転職時には病院なども含めた幅広い勤務先を候補に入れ、可能であれば先に新たな資格を取得しておくのも有効です。その際には、介護専門の転職支援サービスを活用するとよいでしょう。
精神的負担が大きいと感じたら限界が来る前に対処しよう
介護職は精神を病むことが少なくない職種ですが、日頃から対策をしっかりと講じておけば心身ともに健康な状態を維持しながら働き続けられます。
また、仮にこの仕事に従事している最中に精神を病みそうだと感じたら、限界まで頑張らずに早めに対処するのがおすすめです。それでも症状が回復しない場合には転職も視野に入れ、将来について検討するのがよいでしょう。
ケアマネジャーを辞めたいと思う理由とは? 悩んだときにはどうすればいいの?
引用元サイト
厚生労働省 介護人材の確保・介護現場の革新 人手不足の現状(従業員の過不足の状況①) 5/84ページ
厚生労働省 令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要 Ⅰ 介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算の取得状況等について 3/25ページ
厚生労働省 令和2年度過労死等の労災補償状況 表2‐2‐1 精神障害の請求件数の多い業種(中分類の上位15業種) 3/12ページ