子どもたちの可能性を信じた福祉サポートで、一人一人が輝ける社会へ/介護リレーインタビュー Vol.37【保育士・支援現場リーダー 大石真希さん】#2
介護業界に携わる皆様のインタビューを通して、業界の魅力、多様な働き方をご紹介する本連載。今回お話を伺ったのは、「児童発達支援・放課後等デイサービス キッズプレイスたかなわだい」の保育士であり、支援現場リーダーとしても活躍する大石真希さん。
前編では、大石さんがこの業界に進んだきっかけや、事業所の特徴、一日の働き方について伺いました。後編では、仕事で大切にしている思いややりがい、今後の目標について伺います。
正解を求めすぎず、柔軟に。将来を見据えたサポートを!
――お仕事で大切にしていることを教えてください。
社会貢献と素直さ、コミュニケーションですね。
社会貢献は、特にこの業界、重要なキーワードになってくると思います。仕事って、慣れてくるとどうしても「作業をこなす」っていう感じになったり、「誰かのため」ではなく「自分のため」になってしまいがちだと思うんです。でも、この業界の仕事は、誰かを笑顔にしたいとか、自分が関わったことで相手に幸せになってほしいとか、そういう思いが欠かせないはず。だから私は、「社会貢献する仕事」ということに誇りを持って取り組みたいと思っています。
素直さは、ただ従順に従うって意味ではなく、自分の意見を相手に伝えたり、嫌なことは嫌と言ったりするのも大切で、自己肯定感につながると思うんです。素直であれば可愛がられる……っていうのは語弊があるかもしれませんが、やっぱり素直な人には手を差し伸べたくなるじゃないですか。そういう人としての素直さは、どの仕事でも大切なんじゃないかと思います。
コミュニケーションは前編でもお伝えしましたが、スタッフ同士の意思疎通のために欠かせません。もちろん、子どもたちとのコミュニケーションも重要ですね。
――子どもたちと向き合うとき、気をつけていることはありますか?
今だけじゃなく将来のことまで見据えて、その子に必要なサポートを考えるようにしています。将来自立して社会の中で生活していく時、生きやすい環境にしてあげるには、どういうスキルを身につけておく必要があるかなって。それは一人一人違うので、個別に考える必要がありますね。
ここに通っている子たちは、特別支援学級や特別支援学校に通っている子もいれば、普通学級に通っている子もいて、必要なサポートはさまざま。小学1年生だからこう、3年生だからこう、というカリキュラムは通用せず、子どもの数だけ答えがあります。さらにいれば、同じ子でもその日の体調、その時の体調で答えが変わってくることもありますし、支援のあり方に正解はないのかもしれません。正解を求めすぎず柔軟に、今だけではなく将来に目を向けて、最善のサポートができるよう、心がけています。
――やりがいを感じるのはどんな時ですか?
やっぱり、子どもたちの笑顔を見た時ですね。今までできなかったことができるようになったっていう瞬間に立ち会えた時、「この仕事をしていてよかった!」って思います。これは、この仕事をする前、短大の時に特別支援学校の子どもたちにサッカーを教えていた時から、変わりませんね。
相手の目線に立って物事を考えることが、福祉支援の第一歩
――この業界はどんな人に向いていると思いますか?
人のため、社会のために仕事をしたいって考えている人は、天職だと思います。あとは根気強く人と関わっていける人。特に児童発達支援の場合は、子どもたちと信頼関係を築くところから、ちょっと大変だったりします。どうしても環境の変化が苦手な子が多いので、子どもたちの発する小さなメッセージをひとつひとつ、丁寧に受け止めてあげる必要がありますね。そのためには、自分の目線で物事を判断するのではなく、相手の目線に立って物事を考えられるかどうか、っていうのも重要かもしれません。
――この業界を目指す人が、経験しておくべきこと、勉強しておくべきことはありますか?
やはり資格は必要です。とはいえ、この業界もいろんな分野があるので、どの分野の福祉と関わっていきたいか、というのでそれぞれ資格が違うのですが。児童発達支援だと保育士や幼稚園教諭。作業療法士や理学療法士、言語聴覚士もいいと思います。あと、社会福祉士とか、精神保健福祉士とか。何事も、勉強しておくに越したことはないです(笑)。
子どもたちに安心と自由を与える場所を増やしたい
――この業界に、「今後もっとこうなってほしい」というような思いはありますか?
そうですね、私が思うに、今の社会福祉って「できないこと」にフォーカスしすぎなのかなと。もちろん、できないことをフォローして助けてあげることは大切で、必要な支援なのですが、もっとこう「できること」だったり、「その人の可能性」っていうところにも注目して、それをサポートしてあげるのも必要なんじゃないかなと思います。その人の得意なことを発揮できるような環境を整えてあげたり、役割を与えてあげたりすることも、福祉の仕事なはず。なので私が関わる人たちには、その人が幸せを感じながら明るく楽しい人生を送っていけるようにしてあげたい。「現状維持」ではなく、ワンステップ、ツーステップ上の可能性を引き出してあげたい、と思っています。
――大石さん自身の今後の目標は?
まずは、この「キッズプレイスたかなわだい」が素敵な場所だよ、最高な場所だよ、っていうことを広めたい! そして、今働いているスタッフを大切に育てる! そうしていつか、そのスタッフたちが新しい場所のリーダーとして「キッズプレイスたかなわだい」を広げていってくれるといいな、と思います。そうすれば、ここに通っている子どもたちだけでなく、もっともっとたくさんの子どもたちが幸せになれますよね。
この社会は、障害を持っていてもいなくても、それぞれが輝ける場所であるべきだと思います。一人一人が愛を持って支え合い、認め合いながら、笑顔が溢れる社会になると嬉しいです。
――素敵な目標です! ずばり、大石さんが思う児童発達支援の保育士3か条は?
「子どもたちに安心と自由を与える」
ここは安心できる場所だよ、ここでは自由に表現したり発言したりしていいんだよ、っていう場所を提供してあげること。安心できれば、いろんなことに一人でチャレンジしてみようって思えるし、自分で自由に選択できるっていう可能性に気づけば、自立にもつながると思います。
「協力できる」
ここの主体はあくまで子どもたちなので、「目標に向かって心を合わせて努力する」という意味で、スタッフ同士が協力して、子どもの気持ちや心の変化に寄り添うことが大切ですね。時には手を貸さず、離れて見守ることも必要なので、みんなで協力して子どもたちに「自分でできた」という感覚を身につけてもらうようにしています。
「スモールステップを大切に」
目標に向かってちょっとずつステップをふめば、子どもたちは成功体験をたくさん得られるし、自信につながります。いきなり大きな目標を掲げてしまうと、失敗した時、自己肯定感が下がりますし、どこがダメだったのかというのにも気づきにくいです。スモールステップで取り組めはどこでつまずいたかというのにも気づけるので、より子どもたちの成長につながりますよ。
前編後編を通して、どんな質問にもひとつひとつ丁寧に答えてくださった大石さん。お仕事をする上で大切になさっている「社会貢献」「素直さ」「コミュニケーション」のお話は、この業界だけに限らず、どんな職業でも等しく大切なこと。改めて意識することで、仕事への取り組み方を見直すいいきっかけになりそうです。
貴重なお話をありがとうございました!
取材・文/児玉知子
撮影/喜多 二三雄