作業療法士のやりがいとは?仕事で苦労する場面と将来性についても解説
患者に寄り添ってリハビリを行なう作業療法士は、やりがいを感じる場面が多い仕事です。しかし、どんなシーンでやりがいを感じるのか想像できない方もいるでしょう。
今回は、作業療法士として働く上でのやりがいや苦労、将来性があると言われる3つの理由について紹介します。作業療法士を目指す上で、自分が患者のために働く姿をイメージしながら、どのような作業療法士になりたいのかを考えてみましょう。
作業療法士として働く上でのやりがい
作業療法士として働く際には、より患者に適したリハビリプランを提案したり、社会復帰をサポートしたりと、長期間にわたって患者に寄り添ってサポートします。
患者から感謝の言葉をもらう機会も多く、やりがいを感じる場面も多い仕事です。
作業療法士の資格については、下記の記事も参考にしてみてください。
参考記事:作業療法士になるには資格が必要?|理学療法士や言語聴覚士とはどこが違うの?
1.二人三脚で利用者の心身をサポートできる
作業療法士は、物理的・運動的な療法を用いて、座る・立つ・歩くなどの基本動作の獲得をサポートするだけではありません。家事や買い物、創作活動など作業への参加も促し、患者の社会復帰や日常生活の質の向上を目指します。
患者と二人三脚で身体機能の回復を目指してリハビリしていくだけでなく、精神的なケアも担当し、リハビリを経て患者が自立した際のやりがいはひとしおです。
2.社会復帰するまでの過程を見届けられる
突然の怪我や障害によって日常生活を送るのが困難になってしまった患者は、心身に大きなショックを抱えており、立ち直るまで時間がかかることも少なくありません。
作業療法士としてリハビリや社会復帰するまでの長期間にわたるサポートをすることで、運動機能が回復していく過程から、社会復帰するまでのプロセスを見守ります。
患者が望む形での社会復帰を実現した時に、やりがいを感じることが多いでしょう。
3.業務を遂行していく中で専門性を高められる
作業療法士としてのリハビリサポートを経験していく中で、ある特定の症例やリハビリに特化して専門性を高めることもできます。また、認定作業療法士や専門作業療法士など、作業療法士よりも、さらに専門性の高い資格にチャレンジすることも可能です。
たとえば、認定作業療法士になるためには、作業療法士に登録して5年以上の臨床経験を積み、生涯教育基礎研修を修了していることが、資格を取得するための前提条件です。
その後、教育や研究、管理・運営に関する研修を36時間以上、専門領域に関する研修を24時間以上受講し、認定試験に合格することで、晴れて認定作業療法士になれます。
専門性を高めて幅広い業務に従事していく中で、やりがいを感じられるでしょう。
引用元:日本作業療法士協会:認定作業療法士の役割 専門作業療法士との関連
4.自分なりのリハビリサポートを提案できる
二人の患者が同じような症状で悩んでいたとしても、人によってベストなリハビリサポートは異なります。相手の表情やリアクション、要望を聞き出しながら、目の前にいる患者にとって、どのようなリハビリをしていくのがベストなのかを考えていきます。
患者に自分なりに考えたリハビリを受けてもらった結果、身体機能が改善して、感謝の言葉をもらった瞬間などに、やりがいを感じることが多いでしょう。
5.リハビリを通した新たな学びや成長の機会がある
患者のリハビリをサポートしていく中で、自分でも気がつかなかった発見や学びの機会に遭遇することもあります。また、自分のプライベートな趣味や経験をリハビリの業務に活かせる場合もあり、常に新しい発見があり、成長を感じられるのがやりがいです。
作業療法士の仕事が大変だと感じる3つの場面
作業療法士はやりがいだけでなく、苦労を感じる場面もあります。作業療法士がどんな場面に苦労を感じてしまうのかを知って、自分に向いている仕事かどうか判断しましょう。
作業療法士が辛くてやめたいと思った場合の対処法については、下記の記事を参考にしてみてください。
参考記事:作業療法士をやめたいと思うのはどんなとき? やめたくなったらどうすればいいの?
1.肉体労働をしなければならない
作業療法士の仕事では、基本的に肉体労働をする場面が多いです。患者のリハビリや移動、レクリエーションの準備・片付けなど、現場では身体を動かす業務が多くあります。
また、患者の自宅におもむいてリハビリを行なうこともあり、リハビリや身の回りの世話をすることで、体力的に疲れ果てて大変だと思ってしまうこともあるでしょう。
2.常に学習しなければならない
医療や介護の業界の技術の進歩や常識のアップデートは日進月歩なので、日々新しい技術や理論を学んで、患者にとってベストなリハビリを提案する必要があります。
また、職場によっては、研修会や勉強会を実施しているところもあり、地道な学習と実践のプロセスを繰り返すのが大変だと感じる方もいるようです。
3.結果がすぐには出ないことも多い
患者のリハビリの成果は、少しずつしか見えてこないことがほとんどです。中長期的なリハビリプランを立てて、リハビリの効果や身体の変化に気づけるような工夫をしないと、成果が見えにくい長期間のリハビリに心身が疲れてしまうこともあるでしょう。
作業療法士には将来性がある!3つの理由を紹介
作業療法士の仕事には、やりがいと大変な部分が両面ありますが、将来性が期待されている職業でもあります。将来性があると言われる3つの理由について見ていきましょう。
人手が足りていない医療・介護施設もある
作業療法士の数が増加していますが、施設によっては作業療法士のニーズに供給が追いついておらず、人手が足りていない施設もあります。医療施設では人材は足りている場合もありますが、以下のような介護・福祉施設では人材不足だと言われています。
日本作業療法士協会によれば、認定試験に合格した協会員の就職率は100%を達成しています。人手の足りていない就職先を選べば、就職しやすい業界だといえるでしょう。
高齢者の人口比率が増加してニーズは増えていく
高齢化は今後も進んでいくことが予想されているので、高齢者向けの介護施設などでは、作業療法士の求人はこれからも増えていく一方でしょう。
厚生労働省の推計によれば、2020年に28.6%だった高齢者(65歳以上)の人口比率は、2070年には38.7%まで増加することが予想されています。
高齢者の人口比率の高まりによって、介護施設を中心に人手が足りない状況が予測されます。求人数の増加が予想される点が、作業療法士の将来性が明るいと言われる理由です。
機械には代替できない業務が多い
作業療法士の仕事は、患者に寄り添って日常動作のリハビリや精神的なケアを行います。患者のそばに寄り添って最適なリハビリを実行できるのは人間だけです。
リハビリメニューの考案は機械に代行される可能性もあると言われていますが、肝心の患者とのやりとりに関しては、今後も作業療法士が担当していくことになるでしょう。
機械に主な仕事を奪われるリスクが少ない点が、将来性があると言われる理由です。
作業療法士として働くやりがいと苦労を確認して、作業療法士を目指すべきか考えよう!
作業療法士は、患者に寄り添ってリハビリや精神的なサポートをする仕事です。患者がリハビリを開始してから社会復帰までの過程を見守り、患者から感謝の言葉をもらうことで、「作業療法士として働いてよかった」とやりがいを感じることが多いです。
ただし、ハードな肉体労働に耐えなければならず、リハビリの成果が見えにくく、新しい技術や理論を学び続けなければいけないなど、大変に感じてしまう場面もあるでしょう。
高齢者が進んでいる日本では、高齢者向けの介護施設を中心に就職先が多く、機械によって仕事が奪われるリスクが少ない作業療法士は、将来性のある仕事だといわれています。
働くうえで感じる作業療法士としてのやりがいに興味を持った方は、ぜひ目指してみてください。
引用元
日本作業療法士協会:認定作業療法士の役割 専門作業療法士との関連
日本作業療法士協会:作業療法士の資格と仕事
厚生労働省:将来推計人口(令和5年度推計)の概要