【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.26】スポーツアロマ・コンディショニング® センター 軽部修子さんがトレーナーになったきっかけとは
ヘルスケア業界のさまざまな職種にフォーカスし、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』の企画。
今回は、スポーツ選手へのケアにアロマトリートメントを取り入れた「スポーツアロマ・コンディショニング®」を行っている軽部修子さんにインタビュー。軽部さんがヘルスケア業界を目指したきっかけから、現在に至る道のりについて、詳しく伺いました。
教えてくれたのは…
スポーツアロマ・コンディショニング® センター
チーフトレーナー 軽部修子さん
一般社団法人スポーツアロマ・コンディショニング®代表理事。プロスポーツ選手を中心にケアサポートをすると共に、一般の方の健康促進のためのフィジカル・アロマテラピーを行う。各種セミナー、講演活動を通じたスポーツアロマテラピーの啓蒙、トレーナーの養成も。著書に、スピードスケート菊池彩花選手との共著『菊池彩花式 トリバランス・トレーニング』(2020年)など。
仕事の「軸」を模索し、思いついたスポーツ×アロマ
―まず、軽部さんがトレーナーになった経緯を教えてください。
新卒でスポーツメーカーに入社後、一度退職して主婦になり、もう一度働こうとスキーメーカーに就職しました。10年間ブランドマネージャーを務めましたが、そのスキーメーカーでは、事務員ではない女性第一号でした。残念ながら会社が倒産してしまったので、フリーランスで仕事を続けることになったんです。
でもフリーランスで仕事をしていくにあたって、何か自分の軸となるものがないと、厳しいんじゃないかと思って。いろいろ模索していた時に、アロマとの出会いがありました。
―アロマとの出会いとは?
アロマとの出会いは、鍼とアロマを組み合わせた施術を受けたことでした。フリーで働き出したころで、すごく忙しくて身体がボロボロだったんですが、その施術を受けると元気になる。アロマって、リラクゼーションだけじゃないんだと知りました。
それと、私、もともとひどいアレルギー持ちで。一年中ずっとくしゃみをしている感じだったんです。ある時、アロマを勉強し始めたころに風邪をひいて。「今回は薬を使わずにアロマを使ってみよう」と試してみたんです。治るまで1カ月半かかったんですけど、それから鼻炎もなくなったんですよね。そこから、アロマの自然療法ってすごい! リラクゼーションではないアロマのイメージを、もっと世の中に広めたい! と強く思うようになりました。
―軽部さんの施術は、いわゆるアロマトリートメントとは違いますよね。
アロマというと、リラクゼーションやエステなど、美容的なイメージですよね。でも、そういうのには最初から興味がありませんでした。もともと自分もスポーツをしていて、周りにもスポーツに関わっている人が多かったので、そこでやっていきたいという気持ちもありましたね。
でもスタートは自宅サロンで、知り合いに対して始めた感じだったんですよ。そうしたら、周りのアスリートの仲間からも頼まれるようになって、試合会場にベッドを持って行ったりして。当時は、スポーツとアロマテラピーを組み合わせたものがなくて、関連情報も全然ありませんでした。だから自分でいろいろ試して、検証しながら、情報を集めていきました。ほかの仕事と並行して、ライフワークとして。
そんなことを続けていたら、2001年にプロのテニス選手と知り合って、グランドスラムに帯同することになったんです。
―それは大きな出会いですね。
でも、それまでのアプローチでは全然足りなくて、いろんなことが。腰が痛い、肘が痛いと言われた時、すぐ試合があるのに施術して動かなくなったらどうしようとか。選手は痛いところを施術して欲しがるけど、本当にそこにアプローチしていいの? という不安もあったりして…。「これではダメだ」と思って、そこから2年くらい施術を封印して、より深く学びなおすことにしたんです。
いろんな施術のセミナーを受け、有名な先生の施術を実際に受けたり、解剖図を見たりして、いろんなアプローチの仕方を取り入れました。いろんな知識を蓄積していって、それをアロマに取り入れていく感じですね。
精油についても、本に書いてあることを真似しながら、自分でも検証していきました。ノート5冊くらいブレンドを書いて、そのなかで効果を感じたもの、感じなかったものを分類していったり。
それを実際に、自分の体や、スポーツをしている友人に試して。片足だけ塗ってみたり、濃度を変えてみたり…。そんな感じで、みんなからの評価を集めていきました。
―とても大変そうですね…。
おもしろがってしていたことなので、その時は大変とは全然思いませんでしたね。逆に、スクールで黙って授業を聞いているより、楽しかったですよ。
アロマを追求するなかで、仕事にすることを決意
―「スポーツアロマ・コンディショニング®」としてスタートしたきっかけは?
2004年に、フリーで契約していた会社から、役員になるか辞めるかという選択を迫られたんです。そこで、「アロマを仕事にしていこう」と決意しました。
でも、そこから大変でしたね。月収3万円みたいな日々が、1年近く続きました。
―軌道にのったきっかけは何かあったんですか?
2005年に、1冊目の本を出したんです。その本の帯に、帯同させていただいたテニス選手が顔を出してくださって。それから動きが変わりましたね。
あと、その少し前にスキー雑誌の連載をしていたんですが、それを読んだ方から技術を教えて欲しいという声が届いたんですね。そこから「教える」ということも始め出して。セミナーや講師を頼まれることも増えていきました。
そのころ、初めて自宅を離れて、スクールとサロンを開きました。
―軽部さんは2010年に順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科の修士過程を修了していますが、そのタイミングで大学院に行かれたのはなぜですか?
サロンを開いて2年後に少し広いところに引っ越して、落ち着いたタイミングで何かの勉強をしようと思って。今思うと、そこで国家検定を取ればよかったんですけど(笑)。
私がしているアロマのアプローチが、身体にどういう影響を与えるのか、ずっと疑問だったんです。リラクゼーションと、していることは全然違うんですけど、実際どう違うのか。それについて、社会人大学院に通って、2年間実験を繰り返して研究しました。
もう本当にノイローゼみたいになっていましたけど(笑)。でもそこで初めて、アロマの精神面への効果も体感できましたね。
―2011年に青山にサロン&スクールを移されてから、現在はどんな働き方を?
お客様次第なので、その日の予定は本当にバラバラなんですが(笑)。
サロンは完全予約制です。施術は、お客様が来てから帰るまで、大体3時間くらい。長時間の施術になるので、1日3~4人までですね。
スクールはコース毎に、月に2日間×4カ月か、2日間×5カ月で行っています。受講する方に合わせて、2週間に1回の場合もありますし、遠方からいらっしゃる場合は2日連続で行うこともあります。
スポーツ関連ですと、私のお客様は、自転車や競輪の選手が多いので、レースがあれば会場に行きます。多い時は年間100日くらい出張して試合に帯同することも。今はコロナの影響でスポーツ業界自体ほとんど動いていませんが、お客様にオリンピックが決まっている選手もいるので、今後どうなるかなってところですね。
………………………………………………………………………………………………………………
スポーツ業界に身を置く傍ら、アロマにどんどん惹かれていったという軽部さん。お仕事としてスタートする前から、ライフワークとしてアロマトリートメントの研究を続け、身近にいたアスリートたちが求めることに応えていくなかで、「アロマスポーツ・コンディショニング®」は確立されていきました。次回は、そんな軽部さんが、お仕事に感じている魅力について教えていただきます。
▽#2はこちら▽
【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.26】スポーツアロマ・コンディショニング® センター 軽部修子さんが語る、トレーナーのお仕事の魅力>>
取材・文/山本二季
撮影/高嶋佳代