【SNS活用術】1対100にならないために。SNSのコミュニケーション次第で来店時の意識は変わる 「LIFE STORY」オーナー広瀬裕六さん #2
手でやさしく触れて、本人の身体が切に求めているものを見つけ出すスタイルの整体サロン「LIFE STORY」オーナーの広瀬裕六さん。集客・広告目的としてではなく、施術迷子になっている人々を救うために開設したInstagramでは、世間の当たり前の概念を覆すような内容を「長文」で伝えています。「読まれる文章」にするために工夫されているだけでなく、大衆向けのInstagramをきちんと「人対人」のツールとして使いこなしていることにも注目です。
後編では、読者目線で使い分ける投稿写真、共感してくれる人を増やすためのハッシュタグの選び方、フォロワーとのコミュニケーションの取り方について教えていただきます。
教えてくれたのは…
「LIFE STORY」
オーナー 広瀬裕六さん
鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、日本体育協会公認アスレティックトレーナー。表層的な身体の不具合を調整するというよりも、身体を通して本人のライフスタイルや思考といった根本的部分をケアし、健康においても美容においても「生命」がよろこぶあり方を導き出している。Instagramはフォロワー数約2000人(2021年8月現在)。施術や身体のことだけでなく、生き方についてなどの哲学的な投稿も多く「人生が救われた」と涙する人は多数。
Instagram:@lifestory_tokyo
フリーテーマは風景写真、講座は活字文字と使い分け
――風景を写した投稿写真が多いようですが、サロンのコンセプトに合わせているのでしょうか?
文章の雰囲気が伝わるような写真を選んでいます。強い内容の文章であれば、インパクトの強い写真を選んだりとか。
最近意識しているのが、僕の投稿だということがわかる写真にすること。
――確かに、毎回違う風景写真ですが、裕六さんの投稿だと何となくわかりますね。
特徴を説明するのは難しいのですが、僕の写真には共通の雰囲気があるみたいですね。
僕、自然が大好きで、以前は山梨にもサロンを構えていたんです。今は都内に一本化したのですが、周辺に植木や緑が多い立地を選びました。人間は自然の中で生きることが大事なので、写真からそういうメッセージを受け取ってくれたら良いなと。
――時折、文字のみの画像も見受けられますが、風景写真と区別して使っているのでしょうか?
そうですね。風景写真のときはフリーテーマというか、人生観や哲学的なことなど、僕が日常で感じたできごとを発信していますが、文字の画像では身体にまつわる解説やみんなの疑問に答えるような、講座チックな内容にしているんです。「最強の寝具」「最強の健康法」など比較的キャッチーな話題というか、初見の人がパッと見て「気になる」とタップしたくなるようなテーマを選んでいます。
風景写真の投稿はこれから何を語るのかがわかりにくいので、比較的常連さん向けですが、文字画像の場合はご新規の方のアクセスが多い印象です。
価値観に共感してくれる人が使いそうなハッシュタグを選ぶ
裕六さんの使うハッシュタグは「#丁寧な暮らし」「#オーガニック生活」などといったユニークなものも見受けられますが、実はきちんと目的があるようで…?
――なるほど。美容や健康とは関係のなさそうなハッシュタグを使っているのは、そういうわけだったのですね。
もう一つ理由がありまして。
僕は、「健康になるための健康法」「綺麗になるための美容」であってほしくないと思っているんです。健康になったことで仕事パフォーマンスが上がるとか、綺麗になったことで前向きに過ごせるとか、「施術を受けた先の豊かな暮らし」、そこを目指している人にささるようなハッシュタグを選ぶようにしています。
例えば「#オーガニック」で検索する人って、ワンコインのマッサージのような表面的な解決方法を求めているわけではないと思うんです。そういう人たちの方がこのサロンの価値観に共感してもらいやすく、フォローしてくださる方が多いんです。
SNSでも「1対1」を忘れなければ、来店時のお客様の意識も変わる
――ストーリーでもコミュニケーションをよく取っているようですね。
フォロワーさんとの距離感はわりと近い方だと思います。
僕はお客様とコミュニケーションを取るのが楽しいので、こちらからポーンと投げて「見たい人だけ見てください」という一方通行のやり方は好きではないんです。
先日、ものすごい長文をストーリーに投稿して「全部読んでくれた方はリアクションよろしくお願いします」と書いたら、数百件くらいのリアクションが来たんです。しかもそのうちの半分はDMでのお返事。
フォロワー数は何万人もいるけど、リアクションがいつも10件だけ…というアカウントは一定数あると思います。一方的な発信だけになっているというか、コミュニケーションができておらず、「人対人」のやり取りになっていないのではないかな…と少し心配になります。
――確かに、SNS上では相手とのキャッチボールがおざなりになりがちですね。
自分からすると「1対100」だけど、相手からすると「1対1」ですからね。
「いつも読んでいます」とコメントをいただいたら、「ありがとうございます」と言葉にして丁寧に返すようにしています。そういう些細な交流によってもフォロワーとの距離感を近づけることができると思っています。
――Instagram上で相談を受けることもあるのでしょうか?
身体の相談に関しては、徹底してInstagramを介して回答しないようにしています。なぜなら、お客様にとって一番必要なことを伝えることが僕の仕事なので、きちんと二人だけの空間をつくって向き合うことが必要だからです。
――それも勘違いされないための一つの予防線なのですね。投稿スタイルの変化とともに、来店時のお客様の意識にも変化はありましたか?
変化は確かに感じていて、施術する上でもスムーズになってきた感じはあります。
例えば「食事」や「水」の投稿に関しては、読んでくれただけでなく、実践してから来てくださる方が結構いらっしゃるんです。
僕の場合、「むくみだと思っているのはむくみではないですよ」「筋肉をきちんと使えば細くなるから、マッサージは無意味ですよ」などと世間の当たり前の認識を覆すので、胡散臭いと思われやすいんですね。けれど、それをサロンで伝えたとき「そんなバカな」という反応ではなく、「そうなんですね」と疑わずに素直に受け入れてくださる方が多くなったかもしれません。
共感してくれるフォロワーを増やすコツ
1. 少数のハッシュタグの中で検索上位の座をキープし、見つけてもらいやすく!
2. ターゲット層が普段使いそうなハッシュタグを選ぶ
3. クイズの出題やコメ返しで、フォロワーとのコミュニケーションの機会を増やす
▽前編はこちら▽
【SNS活用術】Instagramは「長文」で本気勝負。読者を裏切る構想で強く印象づける 「LIFE STORY」オーナー 広瀬裕六さん #1>>
取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)
撮影/石原麻里絵(fort)
イラスト/なとみ みわ