山形でUターン開業。ホームページとネット予約の基本を押さえて差別化【ambino オーナー 蛸井タケミネさん】#1

コーヒーの香りが心地よく漂うブルックリン風のサロン「ambino」。オーナーの蛸井タケミネさんは船橋・原宿・銀座で10年以上経験を積んだのち、故郷の山形県鶴岡市にUターン。開業するにあたり、都内ではなく地元を選んだのは「身近な人をカットしたい」という想いがあったから。とはいえ、都内と比べて接客人数が減るのでは…?という不安も少なからずあったとのことですが、オープン当初から月200人来店を記録し、好調なスタートを切れたようです。

前編では、地元にUターンをした経緯、オープン前の集客準備、ローカル地域で有利になり得る「ホームページづくり」などについてお聞きします。

教えてくれたのは…

「ambino」オーナー 蛸井タケミネさん

千葉県船橋市のサロンでスタイリストデビュー後、原宿の店長を5年ほど経験。その後独立し、共同経営として銀座にサロンをオープン。都内で10年以上働いたのち、故郷の山形県鶴岡市(人口約12万人)にUターンし、「ambino」を開業。都会と格差のない技術力&商材はもちろん、距離感の近いお客様づきあいで、現在の新規来店は紹介によるものがほとんど。

Instagram:@ambino.tsuruoka

月150人をカットするなら、満員電車の隣の人より、知り合いを集めたい

「ambinoを開業したとき、千葉・都内時代のお客様たちが山形に訪れてくれることもありました」と蛸井さん。都内時代からお客様と親密な関係性を築いてきたことが伺えます

――まず、都内時代についてお聞かせください。

船橋のサロンでスタイリストデビューをし、その1年後に原宿に出店するということで、僕が店長に抜擢されたんです。任せてもらえたのは大変光栄でしたが、スタイリストとして1年やって、ようやく売上もつきはじめ、これからという矢先の異動だったので、正直悔しさはありました。

――スタイリスト歴1年の新米店長が原宿店でゼロからのスタートですか。激戦区のため、千葉エリアとは違う厳しさもあったのでは?

これがとにかく大ゴケで…(笑)。スタッフを8人抱えていましたが、しばらくお客様ゼロの日が続き、毎月スタッフたちが他の店舗に吸収されていきました。

原宿の場合は、その界隈で名を上げた人が近くで独立する、というパターンが多かったため、千葉の美容室がゼロから原宿に出店するというのは難しかったのかもしれません。

売上がないため、このまま閉めようかとなったとき、「閉める前に料金体系や集客方法を僕に一任させてください」と言って、かなり改変しました。価格を大幅に下げたり、メニューを簡素化したりした結果、3年目くらいで何とか軌道に乗せることができました。

そのときに学んだ集客術・広告知識は「ambino」の開業に大きく役立ってくれたと思いますね。

――地元にUターンするまでにどんな経緯が?

原宿店で店長をやらせてもらった後、仲間と二人で独立し、銀座に出店したんです。でも、共同経営という形でスタートしたはずが、終わってみれば社長と店長という上下関係だったなと。自分一人で独立した方が性に合っていると思いました

実はフリーランスという選択肢も考えました。そうなると、一日に接客できる数は平均で6人、休みを入れると月に150人しかできないことになる。

満員電車に乗っているとき、「今この車両に乗っている人の髪をいつか切ることがあるのかな?」とぼんやり思ったんです。限られた人数しかカットできないのであれば、知らない人を150人集めるより、友達のお母さんや同級生の奥さんなど、身近な人を集めた方が楽しいんじゃないかって。コンビニやラーメン屋でばったりお客様に会ったりする、そういう密な関係性が僕は好きだったんです

それと、出店に伴う広告費やテナント賃料、自分の住居の家賃などを総合的に考えた結果、山形に戻っても良いかもと思ったんです。

ホームページでサロン情報をわかりやすく記載するだけで差別化できる

開業準備中は東京〜山形の往復が大変だったよう。「仕事が終わったら夜行バスで山形まで帰り、内装の打ち合わせをして、また夜行バスで東京に戻る。後半は月2で帰っていましたね(笑)」(蛸井さん)

――地元・山形での開業。いかがでしたか?

月に何百人と動く場所で働いてきたため、人がいないんじゃないかという不安はありました。一日に2〜3人しか来なかったらどうしようって。僕の中では、一日3人来てくれればまだ何とかなる、という計算をしていました。

実際にオープンしてみると、初月の来店数は200人。当時はシャンプーしかできないアシスタントと2人体制で、今だから言えますが、キャンセルがでたらちょっと嬉しいくらいでした(笑)。

――好調なスタートを切れたようですね。その勝因とは?

まず、「チラシ」ですね。集客ツールとして大手広告サイトをメインで使用し、オープン時だけチラシを全力で配りました

僕が住む鶴岡市には「コミュニティしんぶん」という優秀な媒体があり、そこに折り込んでもらったのですが、配布エリアを町名まで細かく設定できるため、予算を抑えてピンポイントで打つことができたんですよ。

やはりこっちでは学区内で動くというか、近隣の方の来店がすごく多くて。僕自身もよその学区にはあまり出かけないですからね。なので、まずは同じ学区内の世帯にチラシを配りたかったんです

あとは、サロンの公式ホームページも意識してつくり込みました

――ホームページのどんなところを工夫されたのですか?

田舎あるあるかもしれませんが、この辺りの美容室って情報が不透明なところが多いんです。開業するにあたり、地域の美容室情報を集めていたとき、ホームページすらない美容室が多すぎて、ほとんど情報を集められなかったんです。

だから、片っ端から美容室に電話をかけました。「母が白髪を染めたいと言っていて。根本にちょっと白い毛が見えはじめたんですが、その場合いくらくらいで染められます?」とお客様のフリをして。今思うとかなり怪しかったですけど(笑)。

こっちの地域では「ホームページがあり、スタッフの顔写真が載っていて、料金が明確に記載されている」という風に、当たり前のことをきちんと発信しているだけで差別化をはかれるんです

また、ホームページにも予約窓口を開設しました。「ネット予約ができる」というだけでもかなりのアドバンテージになるからです

――近隣地域の美容室のうち、ネット予約が可能なサロンは少数なのでしょうか?

オープン当時の5年前は、大手広告サイトに掲載している美容室は市内で13店舗くらいだったと記憶しています。今は25店舗くらいにまで増えましたが、やはりまだ少数派だと思います。うちも「ネット予約ができたので来ました」というお客様は多いですね。

――ところで、車社会の地域となると、店の立地はあまり売上・集客に直結しないのでしょうか?

これが意外に関係するんですよ。

土地から購入しようと思って場所を探していたとき、目星をつけていた場所があったのですが、周囲の友達にすごく反対されたんですね。どうやら冬になると地吹雪が激しいエリアらしくて。やっぱり女性だと冬の運転は怖いみたいで、「地吹雪エリアは避けて通る」という人が多かったんです。確かに、僕もこっちで運転するようになってそれを実感しましたね。

これは雪が降る地域ならではの落とし穴かもしれません。もしあの場所にお店を建てていたら、結果は全然違ったと思います。

地方での開業で押さえておくべきポイント

1 オープン時は同じ学区内にチラシを配布し、近隣住民に認識してもらう

2 ホームページで「スタッフの顔写真」「メニュー&料金」を明確に記載する

3 ネット予約をしやすい環境をつくる

ローカルな地域ではフランクなお客様付き合いができる反面、情報の不透明さが課題であることに気づいた蛸井さん。「ネット情報」を整備して透明化をはかったことで、幸先の良いスタートを切れたようです。後編では、地域に合うメニュー展開や、地方ゆえの若手スタッフの苦労についてお聞きします。

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Salon Data

ambino
住所:山形県鶴岡市大宝寺字日本国362-86
TEL:0235-33-8366
URL:http://ambino.jp
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