子どもがいても夢は叶う! 子育てしながら「本当にやりたいこと」を着実に実現 Beauty Salon Pink Keruruオーナー 高橋美穂さん#1
美容業界でキャリアを築きながら子育てもがんばっている方をご紹介するこの企画。今回は『Beauty Salon Pink Keruru』を主宰している高橋美穂さんにお話を伺いました。高橋さんの美容キャリアはちょっと遅めの30歳から。2人のお子さんを育てながらネイルのスキルを磨き、ご自身のサロンを主宰するまでになりました。
前編では、高橋さんが本当にやりたいことを見つけるまでのいきさつと、スキルを磨くために努力したこと、そして離婚という決断をするまでの葛藤について伺いました。
お話を伺ったのは…
Beauty Salon Pink Kereru オーナー
高橋美穂さん
四年制大学在学中に妊娠し、21歳で長女を出産。卒業後は家庭に入り子育てに専念。その後、長男を出産後にアルバイトや派遣社員として働く。30歳でネイリストを目指して技術を学び、ネイルサロンに勤務。1年後ご自宅にサロンを開き、2021年には川口にネイルのほか歯のセルフホワイトニング、ブラジリアンワックスなどができるビューティーサロンを開設する。
高橋美穂さんのInstagram:@beautysalonpinkkereru
育児とキャリアの両立を叶えるために選んだのが「自分のサロン」を持つこと
――30歳になるまで、まったく美容とは関係のないお仕事をなさっていたんですか?
美容に興味はありましたが、仕事にはしていませんでした。子どもが生まれてから、アパレルの販売や派遣で事務の仕事をしているうちに「私がしているのは誰にもできて、私がいなくてもすぐに代わりが見つかる仕事なんだな」って考えるようになったんです。子どもと一緒に過ごす時間もあって、私しかできない仕事は何だろう…とずっと探していました。ようやく「これだ!」と思ったのが、趣味でやっていたネイルです。
――ネイルを仕事にするには、技術の習得が必要ですよね?
29歳最後の日に派遣の仕事を辞めて、ハローワークの職業訓練校に通い始めました。でもこの6か月間ではネイル検定の2級、ジェルネイル検定の中級までしか取得できません。ネイルサロンにお勤めするならこの資格で十分ですが、私が目指していたのは自分のサロンを開くことだったので、さらにその上の資格が必要なんです。それで職業訓練校で教えてくださっていた先生に個人レッスンをお願いして、ネイル検定の1級、ジェルネイル検定の上級まで取得しました。
――高橋さんが通学している間、お子さんたちはどうしていましたか?
私が通っていた学校の授業は9時から4時までなので、小学生だった子どもたちにはそんなに影響しませんでした。小学校の授業が終わったら学童保育にそのまま行ってもらって、私の帰りが遅くなるときは、私の両親にサポートしてもらっていました。私の実家は家から自転車で5分もかからない場所にあるので、今でもいろいろ助けてもらっています。
――家事と育児をこなしながら検定の準備をするのは大変だったのでは?
大変というよりは、自分が好きなことだったので楽しかったですね。1年半かけてネイル検定の1級もジェルネイル検定の上級もすべて一発合格できました。
――資格を取って、すぐにご自身のサロンを開いたのですか?
学校で学んだことだけでは実際にお客さまに施術するのは不安だったので、ネイルサロンに1年間、修行するつもりで勤めました。そのサロンのオーナーはとてもいい人で、学校の行事や子どもの部活動を優先してシフトを組んでくれました。予約が入っていなければ、子どもの帰宅に合わせて時間を融通してくれたので、本当に助かりました。ネイリスト仲間たちの話をいろいろ聞きますが、子育てママのために考えてくれるサロンはなかなかないんですよね。私は運が良かったと思います。
これから…というときに離婚。そしてご自身のサロンを駅チカにオープン!
――ネイルサロンで修行して、いよいよご自宅でサロンを始めたのですね。
その当時は夫の持ち家に住んでいて、サロンを開くには理想的な間取りだったんです。玄関を入ってすぐにトイレ付きの部屋がありました。その部屋を私の仕事場にすれば、お客さまはリビングや台所、家族の居室を通らずに済むので、プライバシーはしっかり守れるんです。
自宅でサロン…というよりは、サロンを開く準備として友人たちのネイルを施術していました。最初のうちは「練習させて」ってお願いして、材料費だけいただいていたんです。どんどん数をこなすうちに自信がついてきて、材料費に少しずつ金額を上乗せしていきました。
――自宅サロンに理想的な間取りなのに、なぜ駅チカにご自身のサロンを作ったんですか?
夫と離婚してしまったので、諦めるしかなかったんです。その前から夫とは言い争うことが多かったのですが、そのたびに「出て行く!」って言いたくてもグッとこらえていました。だって、翌日にお客さまの予約が入っているから出ていきたくても、そうはいきませんから(笑)。
――離婚をするとなるとお子さんや仕事のことなど、いろいろと考えることが増えますね。
その当時の夫は仕事を辞めてしまっていたので、稼ぎ手は私だったんです。離婚をしたらどうなるのか、メリットとデメリットを考えました。夫と一緒に生活することがストレスになっていたので、このままガマンしていたら私が病気になってしまう…これはデメリットですよね。病んだ母親と暮らす子どもたちは、かわいそう…これもデメリット。一緒に暮らすデメリットの方が多かったので、離婚を決意しました。
その当時、下の子はまだ小学生で、離婚して私が引っ越したら学区が変わってしまうのが分かっていました。「中学生になるまで待とう」と思っていましたが、ガマンの限界を超えてしまって(笑)。下の子が6年生のときに離婚しました。
――お子さんたちにはどう説明したんですか?
「パパと一緒に生活していると、ママは病気になっちゃいそうだから離婚する。2人には寂しい思いをさせると思う。でも3人だからできることはたくさんあるし、3人だけで生活した方が楽しいと思う」と伝えました。長女は「分かった。ママに付いていく」と即答してくれました。長男は「それでも4人で暮らしたい」って。息子はすごく優しい性格なんです。みんながこの家を出て行ったら「パパが一人っきりになる」って思ったんでしょうね。
私の「離婚したい」という気持ちが変わらないことが分かると、私のことを「僕が守る!」って言ってくれました。もう胸がキュンとなりました。
――お子さんと父親との関係はどうなりましたか?
今の私の家は一緒に生活していた家と近いので、子どもたちはよく遊びに行っていますよ。特に息子は、自分で朝ご飯にフレンチトーストを焼いたら「パパにも食べさせてあげたい」って持って行ってますね。娘も夫の誕生日にプレゼントを持って行ったり、バレンタインデーにチョコレートを手作りしたり。私たちは離婚しましたが、子どもたちにとって「パパであること」は変わりないので私は何も言いません。
――離婚するとご自宅のサロンはもう使えなくなりますね。
昨年の4月にこの場所にサロンをオープンして、これなら「やっていける」という自信が持てたので、5月には離婚しました(笑)
高橋さん流! 子育てしながら本当にやりたいことを叶える方法
1.必要な資格や学びには集中して時間をつくる
2.子どもたちには自分の想いや状況を隠さずに伝える
3.子どもたちがやりたいことを応援し、サポートすること
30歳を目前に決意したネイリストの道が、5年後にはビューティーサロンのオーナーとなって結実。夢を実現するためだけに時間を使うのではなく、お子さんたちと過ごす時間も大切にしてきました。だからこそ、両親が離婚を決意したとき、お子さんたちは高橋さんと暮らすことを選んだのでしょう。
後編では自身のサロン経営のこと、親子3人で暮らす日常のことなどについて伺います。
撮影/古谷利幸(F-REXon)