都心の名店から北海道へUターン。遠く離れても続くお客様との絆【SALON 77 スタイリスト・ヘアメイク/kintaさん】#1

美容業界の第一線で長年活躍する、憧れの先輩方にお話を伺う本企画「私の履歴書」。今回のゲストは「SALON77」のスタイリスト・kintaさんです。

伝統の資生堂サロンで約15年のキャリアを積んだkintaさんが、東京から地元・北海道にUターン転職したのは2013年。現在は、東京と札幌の2拠点で、サロンワークとヘアメイクの活動を両立されています。前編では、美容師としての活動を中心に伺います。

kinta’S PROFILE

お名前
kinta
出身地
北海道
年齢
45歳
出身学校
北海道美容専門学校
憧れの人
・1年目から出会えた人生の師匠(色々な場面で、師匠ならどう考えるか?を基準に行動するようにしています。)
・美容師としてどう生きていくか?の様々可能性を先導してくれる兄のようなオーナー
プライベートの過ごし方
朝早く起き、自分一人の時間と家族との時間をバランス良く
趣味・ハマっていること
バイクのツーリング、娘と遊ぶ、音楽(聞く、行く)
仕事道具へのこだわりがあれば
大事に綺麗に使う

伝統あるブランドサロンで美容師人生がスタート

柔らかく優しい雰囲気のkintaさん

――美容師を目指したきっかけなどを教えてください。

高校生の頃、通っていたヘアサロンの担当美容師さんに影響されて、地元・札幌の美容専門学校へと進学。その授業でヘアショーの映像を観た際、ステージでモデルにメイクをする男性たちの姿が映っていました。それがもう衝撃的なカッコ良さで痺れちゃって(笑)。美容師と同時に、ヘアメイクへの憧れを抱くようになったのはその時です。

自分も彼らと一緒に働きたい!と先生に相談すると、彼らは資生堂の特別なヘアメイクチームだと教えてもらいました。「すぐにできるような仕事じゃないから、まずは資生堂に就職しなさい」とアドバイスをもらい、美容師として資生堂サロンへ入社することにしたんです。

――入社後のキャリアは?

最初に配属された地元の札幌店で、アシスタントとして2年半過ごしました。デビューして間もなくたった頃、東京でチャレンジしてみないかと上司から話をもらったのを機に、銀座店へ移ることに。

それからはオープニングスタッフを任される役回りが続き、大体3〜4年ペースで都内の新店舗を渡り歩いてキャリアを積んできました。銀座のほかに渋谷、新宿などさまざまな商業エリアを経験しました。

――異動の度に1からお客様をつかまなければいけないのは、相当な苦労があったのでは?

それがありがたいことに、各店舗で付いてくれたお客様の多くが、次の異動先へも追いかけてきてくださったんですよ。伝統あるブランドサロンですから、会社全体の顧客層は比較的年齢が高め。けれど僕の場合は、新店舗を回っていたこともあってお客様は若い方が多かったです。都内ならどこでもOKという感じで、フットワーク軽くいらっしゃってくれました。

地元・北海道へのUターンでライフスタイルをチェンジ

――現在は、東京から札幌へ拠点を移されていますよね?

29歳で結婚したんですが、実は妻も北海道出身なんです。彼女とは東京で出会ったものの、将来子どもを授かった時、東京で子育てするというのがお互いどうしてもイメージできなくて。いつか地元に帰ろうねと夫婦で話していました。

すると僕が35歳の時、仕事が一瞬落ち着いて、今なら動ける!というタイミングが生まれました。そのまま勢いでUターンすることに。15年間お世話になった資生堂は退職し、個人店勤務という再スタートを切りました。

――Uターン後、ライフスタイルは変わりましたか?

180度変わりました。仕事はしっかりしつつ、休みたい時にはきちんと休むという、人間らしいライフスタイルが実現できています。

大きい組織で働いていると、技術以外にやらなければいけないことがたくさんありますよね。管理職は最後まで断固として拒否して免れたものの(笑)、若手の教育はベテランとして当然の責務。営業時間前後の指導など、キャリアを重ねるにつれて負担は大きくなる一方でした。

また、当時の売上は月200〜250万円くらいでしたが、その金額を達成するには1日15〜20人くらい流れ作業のように施術する必要があります。毎日が「やらなければならない」に追われて、自分の本当にやりたいことを見失っていくような感覚がありました

美容師やヘアメイクといったクリエイティブな仕事を続けるためには、インプットする時間が絶対に必要なはず。札幌に戻ってからは人生に遊びと余裕が生まれ、自分らしさや個性を追求できるようになり、心から「仕事が楽しい!」と言えるようになりました

休日には趣味のツーリングを楽しむ日々

遠く離れても変わらない、大切なお客様との絆

――資生堂時代のお客様は、kintaさんが東京を離れた今もお付き合いがあるのですか?

もちろんです。普段は札幌の「SALON77」に勤務していますが、1〜2ヶ月に一度、中目黒の支店「nv7」で施術を行っています。毎回、4日間の出張で30名程度のご予約が入ります。

「来月は◯日から△日まで東京行きます」とお知らせすると、もう皆さん慣れたもので「じゃあ◯日なら何時でも良いから適当に時間決めちゃって」という連絡をくださいます。僕はそれぞれの施術内容に合わせてパズルみたいに予定を組み、4日間朝から晩までぶっ通しで働く、というスタイルでやっています。

――お客様がkintaさんへ大きな信頼を寄せているのが分かります。

長い方だと20年以上のお付き合いになりますからね。感謝の気持ちでいっぱいです。女子高生だった子が現在は2児の母になっていたりして、人生を一緒に歩んでいるような不思議な気持ちにさせられます。

――長いお付き合いを可能にする、接客術の秘訣などありますか?

特に意識したことはないけれど…(苦笑)。強いて言うなら「自然体であること」かな。家族でもなく友人でもなく、その中間くらいの心地よさ・親しみを感じてもらえると良いなとは普段から思っています。

とはいえ、前の職場で老舗店ならではのホスピタリティマインドは厳しく仕込まれているので、フランクすぎず堅苦しくなりすぎずのバランスがちょうど良い塩梅なのかもしれませんね


インタビューを通して感じられたのは、kintaさんの飾らない人柄とその自由な考え方。一個人としてお客様と寄り添うことができるそのナチュラルな姿勢が、彼の最大の強みなのだろうと思いました。

後編では、札幌へUターンした後のお話を中心にお聞きします。人とのつながりで実現したヘアメイクのお仕事や、地方ならではの集客の苦労など、新しいチャレンジを考える人にとってどれも参考になるはずです!

取材・文/黒木絵美
撮影/喜多二三雄

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Salon Data

 

SALON77
住所:北海道札幌市中央区南4条東2丁目6-1
電話:011-522-8717

 

nv7
住所:東京都目黒区青葉台2丁目21番13号トーア青葉台マンション1F
電話:03-6451-0677
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