【子育て応援メソッド】エステ歴22年。出産後、「がんばらない」を応援するサロンを開業/Le Lac(ル ラック) なかむらゆきこさん #1
美容業界で働くワーママ・パパに仕事と育児の両立について伺う「子育て応援メソッド」。今回お話をお聞きしたのは、「Le Lac(ル ラック)」のオーナー・なかむらゆきこさんです。
「『がんばらない』を応援する」というコンセプトを掲げ、ママ&プレママたちの駆け込み寺的エステサロンとして、産前・産後ケアメニューを豊富に用意しています。
前編では、サロンコンセプトに込めた想いや、ママさんたちが抱える悩みと、それに対してなかむらさんがどのように向き合ってきたのかをお聞きします。
教えてくれたのは…
「Le Lac(ル ラック)」のオーナー・なかむらゆきこさん
専門学校卒業後、大手エステサロンに就職。その後、インストラクター、サロンの立ち上げ&運営、店長・マネージャー職を経験。2007年に結婚、2015年に出産。2016年にご主人の地元に自宅を構え、一室にプライベートサロン「Le Lac(ル ラック)」を開業。息子さんは現在小学一年生。
21歳でインストラクターに抜擢。その後、サロンの立ち上げ&運営も経験
――これまでの経歴を教えてください。
高校卒業後、エステの専門学校で2年間勉強し、卒業後は大手エステサロンに就職。そこで働いていたときに母校からインストラクターとしてスカウトされ、数年間教える仕事をしていました。同時進行で中小規模のサロンを立ち上げ&運営をし、一時期は何足ものわらじを履いていたことも。2007年に結婚し、2015年に出産。それまではフリーランスとして活動していましたが、翌2016年にこの場所に腰を落ち着け、自宅の一室にサロンを構えたんです。
――エステ一本でこれまでやってこられたんですね。
はい。今年で22年目になります。
――バリバリとキャリアを積まれている中での結婚だったとのこと。こちらにサロンを構えた経緯というのは?
今住んでいるこの場所は主人の地元なんです。結婚後はどこに住みたいという希望は特になく、主人の実家の隣にたまたま土地が余っていたので、10年前にここに我が家を建てました。
――「ママさん向け」を意識されたのは、やはりご自身の妊娠・出産がきっかけとなったのでしょうか?
妊娠前に、知人の紹介で青山にある親子サロンでお手伝いしていた時期があるんです。そこでママさんたちのお悩みを聞いているうちに、私のエステ技術で何かお役に立てることはないかな?と考えるようになり、ママ向けのストレッチレッスンをはじめたんです。
それまでも女性の体に関する知識は勉強していましたが、マタニティに関する知識がさらに深まり、自分自身の妊娠に対しても受け入れやすくなりました。
出産を経て、女性の体を労わりたいという想いが強まった
――妊娠されたことで、その後のお仕事に何か変化はありましたか?
ボディトリートメントをする際、それまでは意識してこなかったけれど、すごい腹筋を使っていたんだなということを妊娠してから実感しました。妊娠中はあまりお腹に負荷をかけることができず、でもお客様に「気持ち良くない」と思われてしまうのは困るわけで。お客様に変化を感じさせず、他の筋肉をどう使っていくか、工夫してやっていました。
――妊娠中、ご主人からのサポートで嬉しかったことは?
主人が料理人なこともあり、妊娠中は料理を積極的にやってくれていました。しかも、栄養面もバッチリ(笑)。今でも料理だけは主人担当で、すごく助かっています。
あと、義母には実の母親よりも頼っていましたね。自分の体調のことだったり、子どものことだったり、何でも相談できる心強い存在でした。
――お姑さんと良好な関係を築いてこられたんですね。
私は仲良くやっていると思っています(笑)。義父母はとても大らかな人たちで、私もそういう人たちと一緒にいるのが好きなんです。
何かあったら私も希望をはっきり伝えますし、義母もはっきり伝えてくれる方なので、遠慮してわだかまりができる、というのは一切ないですね。良かったです、義母が大らかな方で(笑)。
お姑さんだからといって構えすぎるのは嫌で、敬う気持ちは持ちつつ、フランクに接したいなと。
――お仕事に復帰されたのはいつ頃ですか?
産後4か月後にゆるっと仕事を再開しました。お客様を待たせたくなかったというのもあるけれど、自分がエステの仕事が好きだったので、早く復帰したくてたまらなかったんです。それこそ、義母に赤ちゃんを見てもらいながら、一日一人からはじめ、体調や体力が完全に戻った1年後にこの部屋でプライベートサロンをグランドオープンしたんです。
――出産を経て、エステの仕事に対する考え方も何か変わりましたか?
エステという仕事が楽しくて、大好きで、ライフワークとして一生やっていきたいという熱量は妊娠前も出産後も全く変わりませんでした。
大きな変化はありませんでしたが、今まで知識としてしか知らなかった妊娠・出産・育児を実際に体験したことで、ますます女性の体が好きになりました。労わりたいなという気持ちがとても強くなったんです。
自分が頑張りたくない人だから。「がんばらない」女性を応援したい
――「がんばらないを応援する」というサロンコンセプトにはどんな想いが込められているのでしょうか?
頑張ってお仕事をするとか、頑張って子育てをするとか、どの女性もみなさんやっているんです。ですが、日本人特有なのでしょうか、「頑張らない」を苦手とする人が多いなと思って。手を抜いたり、楽をしたりするのは良くないとする空気感があって、日頃からお客様に接していると「頑張らないことを頑張らないとできない」という人がたくさんいるんです。
私自身、家事が本当に苦手で、仕事以外は頑張りたくない人なので(笑)。自分と同じような方々をエステというお仕事を通じて応援しようって。
――頑張りたくないという人の気持ちを誰よりも理解されているんですね。では、ご自身の妊娠・出産経験を踏まえて、ママさん向けにメニューを改良した部分はありますか?
もともとママ向けの骨盤矯正ストレッチをやっていたけれど、さらに研究を重ね、より短時間で効果が出るように進化させました。その一つとして、もともと90分でやっていた内容を60分にまとめた産後ケアコースをつくったんです。
――その30分は、ママさんからするとやはり惜しいのでしょうか?
はい。せっかくだったら長いコースもやりたい、とママさんも本当は思ってはいるけれど、「子どもがお家で待っているから」「家族に預けてきたから」と、パッとやってパッと帰らなければいけないという方もいるんです。
ママさんたちに接していると、「自分の時間が取れない」ということが全てのお悩みのベースにあるんですよね。それによって、体力的にも精神的にも気づかぬうちに疲労が蓄積しているのかなと。だから、ここに来たときだけは自分の時間として思い思いに過ごしてもらいたいなと思っています。
――「話を聞いてもらう」ことも施術と同じくらい楽しみにしている人もいるのではないでしょうか?
そうですね。スイッチが切れたように爆睡される方と、たくさん話して「あ〜スッキリした!」となる方、半々ですね。後者の場合は、吐き出すことでリラックスしてくださっているのだろうなと思い、私もたくさんお伺いしています(笑)。
自分が体験したことで、お客様に共感できるポイントがすごく増えたなと感じます。お体に触れたとき「ここが凝っているから、もしかして普段こんな風に赤ちゃんを抱っこしていませんか?」「そうそう!そうなの!」となったり、お客様が愚痴をこぼしたことに対して「私もそうですよ〜!」と全力で同調できたり。だから、これからも「自分で体験すること」を大事にしていきたいなと。
おっとりとした話し方と可愛らしい雰囲気をお持ちのなかむらさんですが、実は結構バリキャリ気質な方のよう。仕事と子育ての間でもどかしい思いをしたこともあったのでは…?とお聞きすると、「ママだからこそ思いつけることもたくさんあった」とのこと。後編では、託児サービスの導入や、小学生のお子さんとの向き合い方についてお聞きします。
取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)
撮影/喜多二三雄