ずっと美容師でありたい!みんなが長く働けるサロンづくりも目標【美容師 acoさん】#2
センスも技術も高い美容師として人気を誇るacoさんは、8歳と2歳の男の子のママ。パートナーとともにサロンを率いる経営者でもあります。結婚や出産を経てもずっと変わらないのは、「美容の仕事が大好き」「美容師を続けたい」という気持ち。本人の思いや努力、そしてパートナーやサロンスタッフの協力があり、仕事と子育てを両立しています。
後編では、「仕事モード」と「ママモード」を自在に切り替えられるようになったお話や、スタッフが長く働き続けられるサロンづくりへの思いなどを語っていただきました。
お話を伺ったのは…
MILK/MURIEL OMOTESANDO
ディレクター acoさん
2009年、美容室「MILK」オープンと同時にスタイリストデビュー。26歳で店長に就任し、27歳で結婚。現在は前オーナーからサロンを引き継ぎ、パートナーとともに経営に携わる。美容師として働きながら2人の男の子のママとしても奮闘中。水〜土曜の10〜17時という時短勤務でサロンワークを行なっているが、出産前と変わらず雑誌やヘアカタログなどの撮影にも引っ張りだこ。
仕事モードとママモード、自然とスイッチを切り替え
――第二子妊娠のタイミングは、どんなときだったのですか?
長男を出産して復帰後に、仕事面でも大きな変化がありました。前オーナーから夫がサロンを引き継いだんです。しばらくは仕事に集中しようと話していましたし、子供は好きですがひとりでもいいかなとも思っていました。でも、長男が大きくなってきて私から離れていくのを感じたときに、やっぱりふたり目がほしいなと。
それでちょっと間が空いて、長男と次男は6歳差です。次男を妊娠したのは、新型コロナウイルスが流行し始めた頃。つわりが一番辛い時期はちょうど、緊急事態宣言でお店が休みになりました。パンデミックはもちろん嫌ですけど、自分の体にとってはマイナス面だけではなかったのかもしれません。
――当時は先が見えず、世間が混乱状態にありましたね。
本当に。お店をいつ再開できるのかという不安はあったし、妊娠中だし、精神的にはとても大変な時期でした。経営者としてもママとしてもストレスが半端なかった…。
お店を再開する頃にはつわりもおさまり、次男のときは出産2週間前までサロンワークを続けました。
――すごい!第一子のときよりさらにギリギリまで!
気持ち的には1週間前まで働くつもりだったんですが(笑)。
私の最初の出産&復帰後に、もうひとり別のスタッフが出産しています。そしてまた私がふたり目を生んで戻ったので、周りのサポート体制も慣れたものでした。女性スタッフが多いので、若い子も「いずれ自分の番がくるかも」という思いがあるのではないでしょうか。だからお互いに自然と支え合えるのだと思います。
――周囲のサポートがあるとはいえ、さらに忙しくなりましたよね。多忙さを乗り切るパワーの源は?
パワーの源は息子達ですね。ひとりよりふたりの方が、大変だけどもらえるパワーも大きい。仕事でいろいろあったり、落ち込んだりしても、お迎えに行って子供の顔を見ると気持ちが切り替わります。
次男はまだ2歳ですが、6歳年上のお兄ちゃんがいるのは刺激的みたい。何でもまねっこして、お兄ちゃんの小さい版のような感じ(笑)。
――ふたり目ならではの余裕もあるのでしょうか。
ひとり目のときは、子供のことを神経質なくらい考えたし、「仕事も育児もきっちり100%やらなきゃ!」と自分を追い込んでしまったんです。今は「今日は時間がないから、ごはんは手抜きで」とか、抜きどころがわかるようになりました。
仕事面でも、ひとり目のときはすいぶん無理をしていたと思います。スタッフが私のお客様のスパをしているときにタクシーで子供を迎えに行って、何事もなかったかのように施術に戻ったり。ふたり目のときは、お客様に理解していただく部分もつくりながら、ある程度ゆとりを持つようにしました。
――時間の使い方や、仕事と子育ての切り替え方で工夫していることはありますか?
小学校へ行く長男を見送り、次男を保育園に預けて電車に乗ったら仕事モードONです。夕方に職場を出て、帰りの電車まではそのまま仕事モード。お迎えで保育園に入った瞬間からママモードになります。「ここからは時間との戦いだ!何時までに寝かせるぞ!」って、スイッチが自然と切り替わるんですよね。
21時までに子供たちを寝かしつけて、そのあと2時間は家事や長男の宿題のマルつけ、翌日の次男の保育園準備に集中。夫が帰宅したら食事を出して。23時からは自分の時間です。SNSをチェックしたり雑誌を読んだりして、大好きな美容の情報収集をします。
時代をしっかり読み取り、合わせる。美容師としても経営者としても大事なこと
――仕事も子育てもパワフルに取り組めるのは、なぜなんでしょう?
仕事を絶対に続けていきたいという思いが、私の核になっているというか。美容の仕事が本当に楽しくて、誰かをきれいにしたり可愛くすることが大好き!
だから子供達にも、自分のやりたいことをしっかり見つけてほしい。そのためのサポートや応援は惜しみません。
――美容師を辞めたいと思ったことは一度もないですか?
ないです!美容師以外に何をしたいかと考えたら…思いつきません。ヘアスタイルはマスクをしていても見える部分。髪で印象は大きく変わりますよね。私自身、育児休暇中に外出しないからと何もしないままの髪でいたら、ふと鏡や窓に写った自分を見て残念な気持ちに。だから、簡単にですけどメイクやヘアスタイリングをするようにしたらやっぱり気分が上がりました。
――多くのスタッフを率いる立場でもありますが、これからどんなサロンづくりをしたいですか?
今の目標はお店を拡大すること。若手スタイリストが育ってきているので、みんなが輝ける環境を整えたいです。来年にはサロンの2階を改装して拡張したいと思っています。奥に事務所があるんですが、そこをぶち抜いてスペースを広げる計画です。
それから、スタッフに長く働き続けてもらうことが大事なので、そのために何が必要かを考えています。
――例えばどんなことを?
私が意識しているのは、「美容師だから仕方ない」「美容師だからこれは我慢しないと」「私はこうやってきたから、みんなも同じことを」という考えを捨てること。若いスタッフを育てるにあたり、「今は今」という教え方を大切にしたいです。
つい言いがちですけど、「私たちの頃は…」という言葉にも気をつけたいですね。過去を持ち出しすぎずに、今の時代をしっかり読み取り、それに合わせていくのが一番。
休みや時間の与え方、そしてお金の面も重要です。自分の時間もありつつ、お給料も今までよりもらえるような、ゆとりを持って働ける仕組みをちゃんとつくってあげたいです。そして、ひとりひとりのやりたいことや得意なことをしっかりサポートしていきたいですね。
acoさん流!仕事と子育てを両立するコツ
1.仕事が好きという気持ちを大切にする
2.具体的な目標を立てて、着々と準備
3.夫と話す時間を必ずつくり、協力する
取材・文/井上菜々子
撮影/喜多二三雄