広告費投入なしでの現在の売上は、スタッフの接客力の賜物 エステティシャン大澤隼人さん♯2
エステ、ヘア、パーソナルトレーニングが受けられるanimus(アニムス)表参道を主宰する男性エステティシャンの大澤隼人さん。前編では、美顔器のサブスクビジネスを経て、ジェンダーレスなセルフケアコスメ「a+」を開発するまでのお話をお伺いしました。
この後編では、まず、スキンケアの最初に使う導入乳液というポジション、泥・酵素・炭酸を配合したホイップタイプの洗顔料というレアなアイテム故のテクスチャーへのこだわりを教えていただきました。また、なぜジェンダーレスコスメなのか、スタッフのお客様とのコミュニケーションが売上に直結しているお話もお聞きしています。
お話を伺ったのは…
(株)アニムスディレト代表取締役
大澤隼人さん
(株)アニムスディレト代表取締役 男性による施術で新境地を切り開く、歴14年のエステティシャン。エステティックと整体を融合させた「姿整美」の考案者でもある。美顔器のサブスクなどサロン以外のビジネスも精力的に行い、2022年7月にはジェンダーレスなセルフケアコスメブランド「a+」を開発。
a+ホームページ:a+(エープラス) (animus.co.jp)
大澤隼人さんのInstagram:@hayato_osawa
効果はもちろん、テクスチャーに徹底的にこだわって開発
――化粧品の開発は初めてだそうですが、メーカーさんはどうやって決めたんですか?
僕も全然分からなかったんですが、サロンのオーナーが前に化粧品を作ったことがあったので、まずはそのときのメーカーさんを当たりました。それから、ディープクレインズホイップの前身になる炭酸洗顔を作っているメーカーさんがOEM(他社ブランドの製品を製造すること)をやっていたので、そこにも声をかけました。あとは、ネットで見つけたOEMのメーカーさん。まずは、その3社に試作品を作ってもらい、見積を出してもらいました。スタッフでいろいろと試してみて、最終的に炭酸洗顔を作っているメーカーさんのものが良かったので、そこで作ってもらうことにしました。
――商品が完成するまでにご苦労された点はありますか?
どれも、テクスチャーが決まるまでが大変でした。どのメーカーさんに聞いても、いちばん大切なのはテクスチャーだと言うんですよね。もちろん効果も大事ですが、使ったときにベタついたり、サラッとしすぎたりするとリピートしてもらえない。とくにブースターエマルションは、スキンケアの最初につけるものなので、塗ったときにサラッと伸びがよくないとダメ。そのへんが結構大変でしたね。
――ディープクレインズホイップに関してはいかがですか?
出したときの泡の柔らかさですね。ディープクレインズホイップには、泥・炭酸・酵素が配合されているんですが、泥(クレイ)が入ると若干硬さが出てしまうんですね。硬すぎると泡がうまく出てこないので、その調整に時間を要しました。
――確かに、泥の商品でムースタイプって少ないですよね。
うちみたいに3種類配合している商品はまずないですね。スタッフみんなで試して、「ああじゃない、こうじゃない」と意見を出し合って、試行錯誤して完成した商品です。
同じ人間で、同じ肌。だから、男性も女性も同じものを使っていい。
――ジェンダーレスコスメとうたわれていますが?
僕自身が男性エステティシャンを目指して、元々は女性の職業と言われていた世界に飛びこんだという背景も大きいですね。自分の考え方として、コスメも男性用・女性用と分ける必要はないんじゃないのかなと思うんです。男性・女性関係なく使ってほしいという思いで、ジェンダーレスコスメという言い方をしています。
――男性と女性だと皮脂量の違いなどで肌も違うのではという感覚もありますが?
サロンには男性・女性どちらのお客様もいらっしゃいますが、施術をする中でその差はあまり感じません。例えば、「メンズコスメ」というジャンルには、メンソールがたくさん配合されていて清涼感が高いものが多いですよね。一方、女性向けの化粧品には美容成分がたくさん配合されている。それって、美容成分をたくさん入れるよりも、爽快感のあるもののほうが男性には好まれるから、体感重視しているのではと思うんですよね。
もちろん、年齢や女性ホルモンのバランスで皮脂量が違ったりすることはあるかもしれませんが、大枠としては同じ人間で、同じ肌。だから僕は、男性も女性も同じものを使っていいと思っています。
現在の売上は、スタッフがお客様と接してきたコミュニケーションの賜物
――a+の売上は順調ですか?
いま広告を一切出していないので、サロンに来てくださるお客様と、僕のインスタを見てくださる方のみへの告知になっています。そんな中で、ご来店されたお客様にはほぼほぼ使っていただいていて、リピートしてくださる方も多いです。それは、いままでスタッフがお客様と接してきたコミュニケーションの賜物だと思っているので、現状に関しては満足しています。
――以前から物販はされていたんですか?
物販はしていましたが、1000万円以上売っているサロンもあるので、それに比べたらうちはそんなに強くなかったと思います。まずラインで使っていただくのは難しいですし、最初はサロンで買っていただいても、リピートするときに皆さんネットで買うんですよね。そうなるとやっぱり物販は難しい。
a+開発のきっかけになった美顔器「セルキュア」のサブスクは、うちでしかやっていなかったので売上も上がりました。それでちょっと自信をつけることができました。
開発の段階から、セルキュアと抱き合わせで使っていただくことを見こんでいたので、a+は添加物・防腐剤一切フリー。肌の深部に導入しやすい仕様になっています。
――実際抱き合わせのユーザーさんは多いですか?
目玉アイテムであるスリーピングホワイトマスクをぜひ抱き合わせで使ってほしいと思っているので、これから推していきたいです。
――最後に今後の展開をお聞かせください。
近々、a+の広告を集中的に出して、売上増を狙いたいと思っています。それから、セルキュアと同様の効果が期待できる最新美顔器をうちで独占的にサブスクをやらないかというお話をいただいているので、それを進めているところです。
さらに今年は、「姿整美」で整えた体を維持するためのトレーニングスペース「パーソナルサロン姿整美」を併設しました。今後は、ヘア×エステ×パーソナルトレーニングのトータルビューティーが叶う店舗運営と、美顔器のサブスク、a+の3本柱でがんばっていきたいと思います。
――a+もセルキュアのサブスクも、コロナ禍の苦戦があったから生まれたビジネスなんですね。
大変な経験でしたが、新しいことにチャレンジできたし、悪いことばかりじゃなかったなと思います。やらなきゃいけないという意識と、やってみたかった気持ちもありますし!
a+売り上げアップのためのこだわりポイント
1.心地いいテクスチャーにとことんこだわった。
2.ジェンダーレスコスメというコンセプトを明確化。
3.スタッフの接客力が売上に直結した。
コロナ禍での売り上げ減を原動力にして、美顔器のサブスクとジェンダーレスコスメa+の開発にチャレンジした大澤さん。「女性だから、男性だから、エステティシャンだからという括りが苦手。基本的にひねくれものなんですよね」と笑う大澤さんに、試練をバネにする力と、新しいことにチャレンジすることの大切さを教えていただきました。