人間力のブランディングに力を入れるため、プライベートの時間を確保【フリーランス美容師 金子洋平さん】#2
フリーランス美容師・金子洋平さんは、正社員として13年働いたのち、フリーランスサロンに移籍。正社員時代の売上は月80万円ほどだったそうですが、フリーランスになってすぐさま月100万円超えの売上をつくり上げました。それは新天地の恩恵だけでなく、お客様ファーストな接客で信頼関係を築くのが上手だったことも大きな理由と言えるよう。
後編では、プライベートの重要性について教えていただきます。美容師にとって「人柄」も大事な商売道具。人間力を育てるためには日々の余白が必要なのだと言います。
教えてくれたのは…
スタイリスト・金子洋平さん
新潟の専門学校を卒業後、同県内の個人サロンに就職。13年間勤めたのち、フリーランスへ転身。昨年、フリーランスサロン「KOKUA」に活動拠点を移し、売上＆報酬の大幅アップを実現。現在はプライベートの充実により力を入れている。
売上は能力ではなく「やり方」次第
金子さんは新潟生まれの、新潟を愛する美容師さんです
――フリーランスとなりどんなことが改善されましたか？
全部ですね。時間も、給料も、人間関係も、ストレスも。一方でプレッシャーや責任感はありますけどね。
僕、今33歳なんですけど、技術だけでなく、人間力もより磨いていきたいと思っていて。美容師の人柄もお客様にとって「旨味」でもあるというか、人柄で選ばれる美容師さんになりたいなと。人間力のブランディングとでも言うんでしょうか。
そのため、自己を高めることに時間を割きたいと思ったんです。勉強をしたり、趣味を楽しんだり。今年はピアノに挑戦したいなと思っています（笑）。以前から仲間とやっているYouTubeにも時間をかけたいですね。
――お給料はどのくらいアップしましたか？
額面でいったら2.5〜3倍になりました。実は、KOKUAに来て３ヶ月目くらいで売上が月100万円を超えたんですよ。前のサロンでは13年間でマックス月80万円しかつくれたなかったこの僕が。自分には美容師としての能力がないと思っていましたが、３ヶ月で月100万円の数字をつくれたことで、売上を伸ばしていくビジョンがやっと見えたというか。能力ではなく、やり方次第なんだなと気づき、自分にそこまで否定的にならなくなりましたね。
――売上が伸びた要因とは？
客層が若くなったこともありますが、クーポンサイトに掲載していることも大きいですね。
ちなみに僕、SNSはやっていないんです。基本的には口コミの力が強いと思っているので。どうすれば口コミをしてもらえるかということを常に考えていて、多くの美容師さんがやっている「紹介カードを渡す」やり方はあまり効力がないと思っています。紹介カードがなくても「何か良いな」と思わせられるように、技術だけでなく、印象づけるトークなどを磨いているところです。
――そこでも人間力のブランディングが必要なわけですね。
そういうことです。口コミって美容師の人柄によるものが多いんじゃないかなと思います。
あと、これは少し言いづらいのですが、前のサロンから「実はずっと金子さんに担当してもらいたかった」と来てくださるお客様が多かったんです。別のスタイリストが担当だったんだけど、担当を変えられる空気感ではなかったので、僕が移籍したことを機に…ということで。
――金子さんのお客様ファーストな接客は当時の売上に現れずとも、しっかりお客様には伝わっていたということですね。ちなみに、単価は変わりましたか？
単価は上がりましたね。というのも「KOKUA」は髪質改善に特化したサロンということもあって、9割の方がトリートメントをされます。前のサロンではトリートメントをする方はほとんどいなかったので、こっちに来てから「トリートメントってみんなするんだ！」とお客様の意識の違いに驚きました。それもサロンの打ち出しがわかりやすくて、ブランディングが上手だからということもあるのでしょうね。
人生の充実度を高めるために、楽しんで仕事ができる工夫をしていきたい
――働きやすさはどのように変わりましたか？
お客様の予約に合わせて働いていますが、どちらかというと今の方が働いていると思います。休日もあまり取っていませんし。というか僕、休日とかそんなにいらない人間なので。月8〜9日もいりません。より多くのお客様をきれいにしたい。
でも、お客様がいないのにサロンにいなきゃいけない、という無駄は嫌なんです。前のサロンでは、空いている時間にYouTubeの編集作業をしていると怒られていました。そりゃ社員なので当たり前なんですけどね（苦笑）。暇だからとりあえず掃除をするとか、意味のないミーティングとか、そういう無駄を減らし、労働時間をギュッとコンパクトにしても売上はそこまで変わらないと思うんです。
今は、予約の合間を有効活用してピアノやトレーニングに行く、という働き方を楽しめています。「KOKUA」では人間力の成長に時間を割く余裕を与えてもらえるので、色々なことにチャレンジできる環境です。オーナーもその大切さをわかってくれる人ですし。コンセプトもしっかりしているし、スタッフの意見にも耳を傾け、良いと思ったことには投資してくれます。結局、どこで働こうが大事なのは上の人の考え方なので。そこに齟齬があるとすごくストレスになります。
――今後の目標はありますか？
大枠で考えると、人間はなぜ生きるか、ということですよね。人生の充実度を数値化したとき、仕事が閉める割合って大きいと思うんです。仕事をしている時間は家にいる時間よりも長いじゃないですか。そうなると、仕事の満足度を上げることが人生にすごく影響するのかなって。僕は人生の充実度を高めるために、楽しんで仕事をするための工夫をしていきたい。幸い、習い事や勉強、旅行などに割く時間を与えてもらっているので、色々な場所に行き、色々なものを見たいです。
――仕事のクオリティには、「仕事以外」でどう過ごしているかということも関係してくる気がします。
その通りだと思います。良いものを見たり、美味しいものを食べたり、そういう経験ってほんと仕事に現れますよ。
――最後に、フリーランス志望の方へメッセージをお願いします！
現状に満足していない人がもしいるとしたら、考えること、調べること、人に話を聞くことを面倒くさがってはダメです。自分で何かしら動いた方が良い。
現状に満足していなくても、お客様には絶対に罪はありません。美容師としての仕事や、お客様の満足度に関わることで妥協するのはダメ。正直、サロンを移ったら今までのお客様はもう来てくれないと思っていました。13年間やってきたとしても。ですが思いのほか、お客様が僕を探して来てくれたんですよ。宣伝も何もしていないのに。良い仕事をすればお客様は必ず答えてくれますから、仕事に対して妥協だけはしてはいけません。
フリーランスになる上で必要なこととは？
1.お客様満足度を高め、信頼関係を築ける接客スキル
2.わざわざ自分のところにカットしにくる「旨味」を考える
3.プライベートを充実させ、自身の人間力を育てる
取材・文／佐藤咲稀（レ・キャトル）
