Instagramの投稿内容がバズり客層が変わったことで、夢だった表参道サロンのオーナーに「cache cache」前田渉さん
「cache cache」オーナースタイリストであり、SNSの総フォロワー数が35万人超えの前田渉さん。訪れた人を必ずかわいく変身させる様子が、「#わたるマジック」とよばれ大人気になっています。
前編では、前田さんが躍進されるきっかけとなったInstagramの運用についてお話を伺いました。
後編では、前田さんがオーナーを務めるサロン「cache cache」の拡大秘話について伺います。元々、いつか表参道にサロンを開きたいと夢見ていたという前田さん。最初の一歩として用賀駅近くにサロンをオープンして、地元の30~40代の主婦層を中心に、着実にお客さまを増やしてきたそうです。転機となったのは2017年にInstagramを開始し、キュレーションサイトにたびたび「かわいい系スタイル」が取り上げられたこと。20代前半の女性人気に火が付き、表参道への出店が叶ったそうです。
今回、お話を伺ったのは…
前田渉さん
「cache cache」オーナースタイリスト。2021・2022年カミカリスマ受賞。2019年には書籍「#わたるマジック 女の子はメイクより髪でかわいくなる! 」を出版。TV出演も多数のほか、著名人の施術も多く手掛ける。独自のノウハウで写真撮影を行い、SNS総フォロワー数は35万人超え。訪れた人を必ず可愛くする施術は「#わたるマジック」と呼ばれ、大人気になっている。
Instagramがきっかけで、夢だった表参道への出店をかなえる
――1店舗目は用賀、2、3店舗目は表参道にサロンを構えられえていますね。何か理由があるのでしょうか?
独立以前は都心で美容師をしていたこともあり、いつかは原宿・表参道エリアで独自のスタイルを持つサロン経営をすることが夢でした。ただ最初から表参道に開業するのはハードルが高く、まずは地に足をつけて「地域に根ざした美容室」を経営することにしました。ポスティングやクーポンサイトの活用など、地道な宣伝の甲斐もあり、地元の主婦のお客さまが多く来店してくださいましたね。
――そこからどのようにして表参道への出店を叶えたのですか?
Instagramやキュレーションサイトにかわいい系スタイルを投稿したことで、20代女性に人気になったことがその足掛かりとなりました。
最初はお客さまの写真を片っ端からアップしていましたが、ある日、かわいい系のヘアスタイルを投稿したところ、キュレーションサイト「MERY」さんが僕の投稿を取り上げてくださったんです。その後も何度か取り上げていただく機会があったのですが、そのときは、いずれもかわいい系のスタイルでした。そのことから「世間の需要は『かわいい系』のスタイルなのかも!」と気づきました。
そこからは投稿内容を「かわいい系」に絞っていき、そのスタイルを続けた結果、今の「#わたるマジック」が確立されました。狙って今のスタイルを作り上げたと言うよりも、世間の需要を研究してチューニングしていった結果、今のスタイルにたどり着いたんです。
――なるほど!求められるスタイルを考え抜いた結果、「わたるマジック」のスタイルが生まれたのですね。
ちょうどその頃、投稿内容が変化したことと、多くの方が僕のInstagramを見てくださるようになり、いままでリーチできなかったお客さまにまで情報が届くようになって、顧客層もどんどんと変化。地元の主婦のお客さまにプラスして、東京近郊の県からも電車に乗って来客してくださる20代前後のお客さまが増え始めました。3席しかないサロンで8人の施術を行わないといけないという状況が続くようになり、ここで2店舗目の拡大を考え出すようになりました。
今の「#わたるマジック」に通じるようなスタイルが生まれつつあったタイミングで、かつ顧客層も若くなってきていることから、都心のサロンとの親和性を感じて、表参道への出店にチャレンジすることにしたんです。
自身が圧倒的に結果を残すスタイルで「背中を見せる教育」を実践
――表参道にサロンを構えることで、何か変化はありましたか?
立地的にInstagram経由のお客さまが来店しやすくなったり、ブランディングされたことでメディアからの声がかかりやすくなったり、著名人の方が来店してくださるようになったりと、さらによい方向に物事が動き始めました。
――表参道に出店されたことで、さらに躍進されたのですね。「cache cache」さんは約30人ものスタッフの方を抱えていらっしゃいます。次世代のスターを育てるための教育はどのように行っていますか。
店舗拡大に育成の悩みはつきものですよね。僕も2店舗目を出すときは、用賀店を任せた店長に、かなり事細かに口出しをしてしまっていました。
しかし10年経営を続けてきて思ったのは、部下や後輩に「何かをしろ」と伝えるよりも、背中で見せる教育方針のほうが伝わるということでした。尊敬できる上司や先輩がいると、後輩たちも自然と背筋が伸びると思うんですよね。ですから、僕は売上やInstagramのフォロワーなどの目に見える数字の部分で、店のなかで一番の結果を出し続けるようにしています。絶対に結果を残すために、毎日午前3時までInstagramの編集をしています。
また、最近では活躍できる人を増やしたいという思いから、メディア露出の仕事なども他のスタッフにまかせるようにしています。創立11年を迎えることもあり、次世代のスターを育てて「cache cache」=「#わたるマジック」という構図も徐々に変えていきたいです!
SNSの興隆で「『個』で売れる」時代が到来
――前田さんは、TV・雑誌などのメディア出演、セミナー開催、書籍の発売など活躍の場を広げていらっしゃいます。お仕事の幅が広がったきっかけについても教えてください。
これもInstagramのおかげだと思いますね。
僕が美容師を始めた15年前は、都心の大手サロン所属の大御所しかメディアに出られない風潮がありました。しかし、SNSが発達したことによって個人が全世界に向けて情報発信できるようになり、「『個』で売れる」ことが可能になりました。SNSで注目を集めることができれば、肩書や所属する会社に関係なくフューチャーしてもらえる時代に突入したと思っています。
僕自身もキュレーションサイトに取り上げられ、Instagramが人気となったことで、業界の方が注目をしてくださり、メディア出演の声がかかるようになりました。Instagramがなかったら今の僕はないなと思いますね。もし活動の幅を広げたい方がいたら、美容の技術を極めるのはもちろんのこと、SNSでの発信に力を入れるのが近道だと思います。
――今後の目標について教えてください。
大きな目標と言うよりは、死ぬまで美容師を続けたいという目標を持っています。SNSのフォロワー数や、「#わたるマジック」という言葉から派手な目標を想像されがちなのですが、僕が前面に立って目立つよりも、「cache cacheイズム」を色濃く持ったスタッフたちとずっと一緒にがんばっていけるのが理想です。
Instagramなどのお話もしましたが、美容師の本分は、お客さまの髪をかわいくして、満足していただくこと。サロンに来ていただいたお客さまに満足してもらえなければ、人気も一過性のものになってしまいます。
「cache cache」に来てくださったお客さまをいかに物語のなかに迷い込ませ、シンデレラのように美しくできるかが重要です。僕たち「cache cache」の美容師は、あくまで「七人の小人」のような引き立て役。主役はお客さまです。
常にお客さまに魔法を掛け続けられるよう、手を抜かず邁進していこうと思います。
前田渉さんと「cache cache」が躍進した3つのポイント
1.Instagramから世間の需要をキャッチし、ターゲット層の方向転換をはかった
2.需要にマッチしたタイミングで表参道にサロンを出店したことで、ブランディングに成功し、メディアや著名人からのオファーが増えた
3.オーナーが圧倒的に結果を残す「背中で見せる教育」をすることで、スタッフからの厚い信頼が生まれた
Instagramのフォロワー35万人超えや、華やかなお仕事の経歴の裏には、並々ならぬ努力と地に足のついた経営術がありました。今後、美容師さんとして活躍していきたい方や経営をがんばっていきたい方は、前田さんのお話を参考にされてみてはいかがでしょうか。