仕事はお客様の幸せのために妥協せず、プライベートは余力を残して柔軟に【美容師 平野愛さん】#2

子育て中のママという生活も大切にしながら、マンツーマンでお客様を担当する働き方を「madder」で叶えた平野愛さん。理想の働き方にシフトした反面、時間が合わないために常連のお客様を失うという残念な思いも経験しました。復帰して3年となる今は、多くのママさんや働く女性に支持され、予約が埋まってしまう日も増えたそうです。

ほかにも、美容師として大切にしていることや、子どもとの向き合い方、仕事と子育てを両立させるコツなどをお聞きしました。

お話を伺ったのは…
madder(マダー)
スタイリスト 平野愛さん


日本美容専門学校卒業後、20歳で原宿の人気サロンに入社。24歳のときにスタイリストデビュー。20代の終わり頃に同サロンの表参道店に異動し、2020年まで在籍。出産後、2021年4月から「madder」で美容師として復帰。現在は3歳の女の子のママとして子育てに奮闘しながら、仕事面ではひとりひとりのお客様とじっくり向き合う“パーソナルな働き方”を実現。

軌道修正しながら定まった、役割分担と生活サイクル

――仕事と子育てのペースをつかむまでの苦労はありましたか。

仕事の方は、産後の体調が整った状態で復帰しましたし、準備期間もあったのですぐにペースをつかめました。子育ての方は、子どもがすぐに熱を出したり中耳炎をくり返したりしたので、子どもの体調が安定するまでの1年くらいは少し大変でした。コロナ禍の中で感染対策を徹底していたので、インフルエンザや手足口病などにはかからなかったのですが…。

子どもの具合が悪いときは、私の両親がわりと手伝いに来てくれました。緊急事態宣言で保育園が休園中は、子どもを実家に預けて私は実家からバスで通勤したことも。私ができるだけ働けるようにサポートしてもらい、助かりました。

――やはり、周りのサポートはありがたいですね。ご夫婦の役割分担は決まっていますか。

保育園の送り迎えは私がしています。朝は夫が子どものおむつ替えや着替えをして、その間に私は身支度や朝食づくりをします。洗濯物を干したり畳んだり、重いものの買い出しは夫の担当。昨年の夏に引っ越しをしたのですが、それを機に、夫婦の役割分担も家族の1日のサイクルも自然と定まりました。

最初の頃は、自分がキャパオーバーになってから「洗濯してよ!」とか言ってしまったんです。それはよくないなと反省しつつ、ケンカもしながら、ちょっとずつ軌道修正して今にいたります。

――タイムスケジュールにある「ゆっくり時間」は、何をしてすごすのですか。

子どもを寝かしつけたあとに結構時間がとれるので、テレビドラマを見たり、ハマっている編み物をしたりします。自分の好きなことに夢中になって、心地よく疲れて、寝るというのが最近のルーティーン。編み物は、子どもの帽子やつけ衿、小さい巾着袋などをつくっています。

カラフルで可愛い編み物作品がずらり(左)。親子で色違いの手編み帽子をかぶってお出かけ(右)。

仕事復帰後、目標も客層もヘアデザインも変化

「自分が体験してみて、子どもを持つお客様により共感できるようになった」と平野さん。

――今の働き方になってから、不安やモヤモヤを感じたことは?

今は月・水・木・金・土の週5で、10時から17時半の勤務です。そのため、平日の夜にいらしていた方、特に男性のお客様はかなり減ってしまいました。以前は女性客と男性客の割合が7:3くらいでしたが、今は9.5:0.5くらい。1年休んでいる間に、ほかのサロンに定着してしまった方も少なくありません。仕方のないことなのですが、長年来てくださっていたお客様を担当できなくなり、悲しい気持ちもありました

マンツーマンでの接客は自分が望んだ働き方ですが、ひとりで全部やるので、1日に施術できる人数は限られてしまいます。例えばカット&カラーなら3枠ほど。だから土曜日はかなり先の予約まで埋まってしまっている状態で、申し訳なさも感じますね。

――働き方を変えたとき、お客様にはどのように伝えたのでしょうか。

連絡が取れる人には復帰の際に直接お知らせし、インスタグラムでも告知しました。予約枠がかなり絞られてしまうので申し訳ないということも伝えましたが、皆さん理解を示してくださり、多くの方に予約をいただきました。

コロナをきっかけに働き方が多様化し、世の中の流れも変わりましたよね。私のお客様も、リモートワークになった人がパソコンを持って来てカラーリング中に仕事をしたり、本来なら土日しか来られない人が平日に予約してくれたり。おかげさまで平日もだんだん予約が埋まるようになったんです。今思えば、あのタイミングでの結婚、出産、働き方チェンジでよかったのかも。結果オーライです

――売上や集客に関して目標はありますか。

働ける日数や時間数がかなり変わったので、売上は高い数値を目指すのではなく「これより下回らないように」という最低ラインを決めました。空いている予約枠はあるので新規のお客様を入れたい気持ちはありますが、そこまで積極的に集客をしているわけではありません。今は、インスタグラムから新規で来てくださる方が月に2、3人ほどです。

売上や集客数などの数字を追うよりも、個々のお客様と長くつきあっていきたいし、ラクにおしゃれを楽しんでもらいたい。そんな気持ちが伝わったらいいなと思っています。

――今はどんなお客様が多いですか。

主婦の方や、お子さん連れの方が増えました。そのため、私が提案するヘアデザインも以前とは違っています。子育て中のママや働く女性に向けて、忙しい中でも短時間で簡単にスタイリングできて、いかにキレイな形のまま長持ちするかを重要視。そういうスタイルをインスタにもアップしています。

美容師として、ママとして大切なこと

仕事と子育てのバランスを考えて、どちらかに偏りすぎないようにするのも平野さんのこだわり。

――美容師として大切にしていることは何ですか。

数字よりも目の前のお客様の幸せを考えること。例えばショートヘアの人にトリートメントをすすめて単価を上げるのではなく、パーマをかけるともっとラクに可愛くなれますよと、その人に本当に必要な提案をします。その積み重ねで、この先もずっと長くつきあっていける方を増やせたら、私も幸せです。

それから、「いつ行ってもおいしいごはん屋さん」のように、いつでも素敵なヘアスタイルや満足感を提供できるようにしたいと思っています。例え私生活が大変でメンタルが荒れていたとしても、お客様に関わる仕事に関しては絶対妥協はしたくないです。

――では、ママとして大切にしていることは?

限られた時間の中で、どれだけ濃厚に子どもとすごすか。とにかくスキンシップをたくさんするようにしています。たっぷり遊んであげる時間をなかなかとれない分、ごはんのときにたくさん話したり、ハグやほっぺにチューをいっぱいしたり。「可愛い」「大好き」という言葉も頻繁に使います。

子育てを含むプライベートでは、余力を残しておくことも必要だと思っています。女性特有のホルモンバランスなどで私自身の調子の上り下がりがあるし、子どもの気持ちやペースも波があります。何があっても対応できるように、どこで息を抜くかを考えるようになりました。

家族がそろう休日は、ピクニックやイベントを楽しむことも。平野さんのインスタグラムには、3歳になった娘さんもときどき登場。

――仕事では妥協せず、プライベートではうまく余力を残す。それが両立の秘訣なのかもしれませんね。

もうひとつ意識しているのは、人に頼ることです。ひとりで抱え込んでしまうと周りも気づけないし、自分もいっぱいいっぱいになってしまう。そうなる前に、夫や両親、友人、サロンの先輩ママなどに頼れるようにしたい。自分が頼ることで、別のときに人から頼ってもらえるということもあります。周りの人とのコミュニケーションをさぼらず、これからも仕事と子育てを両立させていきたいです

平野さんが心がけている3つのこと

1.自分で抱え込みすぎず、周りの人に頼る

2.プライベートでは余力を残しておく

3.仕事では常に安定したクオリティを提供する

撮影/喜多二三雄
取材・文/井上菜々子

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Salon Data

madder
住所:東京都渋谷区神宮前5-15-9アワーナナの家
電話:03-6427-3621
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