「20年来のお客さまにも緊張する」。そのプレッシャーが技術を向上させる「D/Apartment」八月朔日英樹さん

2017年、銀座にオープンした「D/Apartment(ドレス・アパートメント)」。前職の先輩美容師だった三輪敦士さんから店舗を引き継ぎ、代表を務めるのが八月朔日(ほずみ)英樹さんです。

八月朔日さんは高いカット技術を持ち、カミカリスマ2020を受賞するほど。前編ではその技術がどのように培われてきたかを伺いました。お話を聞いていくと見えてきたのは、練習に没頭すると朝になってしまうことも度々あるという、集中力の高さ。また、長年通うお客さまの前でも緊張するほど、高い満足をしてもらいたいというプレッシャーを自らにかしながら、施術に挑む姿勢でした。

今回、お話を伺ったのは…

八月朔日英樹さん

美容師/「D/Apartment」代表

茨城県つくば市出身。都内サロンにて研鑽を積んだのち、先輩だった三輪敦士さんが立ち上げた「DRESS」に合流。三輪さんがニューヨーク店、八月朔日さんが銀座の店を守る形で経営を続ける。その後、同じく銀座に「D/Apartment」をオープン。コロナ禍を経て、八月朔日さんが「D/Apartment」の代表を任されることになる。カット技術の高い美容師として、顧客からの信頼も厚い。現在は植物事業も展開中。

気がつけば朝になっていることも。歴25年でもカット練習にのめり込む日々

高いカット技術を誇る八月朔日さん

――八月朔日さんは、高いカット技術で人気を集めていらっしゃいますが、下積み時代から、技術習得は得意だったのでしょうか?

いえ、苦手でしたし、かなり時間がかかりましたね。スタイリストになるのに5年くらいはかかったと思います。ただすごく細かい性格なのと、一回のめり込むと周りがまったく見えなくなるので、練習に没頭してきたのが技術力をあげてきたポイントかもしれません。

今でもウィッグのカット練習はだれよりもやっていると思います。あんまり大きな声では言えないですけど、週に1回は気付けば朝なんてことも。あとはコロナ禍になったことも大きかったですね。営業や外出ができなかった時期もあり、がっつりと自分や自分の技術と向き合う時間にもなったと思います。

――それで技術力があがったのですね。

ただ自分のカット技術が高いと思えるようになってきたのは、最近です。もちろん毎回ではないですが。

――何か転機があったのでしょうか?

最大の転機は人に教えるようになったことだと思います。今、ちょうど3人のスタイリストを育てるプロジェクトを始めていて、人に教えることを考えたときに、どうやったらもっと分かりやすく切れるんだろう、もっと簡単にできるにはどうすればいいのかということを考えて、自分の技術を改めて見直す機会が増えたんです。また教えることになってから、さらにウィッグカットの練習の量も増えました。そうしてインプットとアウトプットを繰り返していたら、自分の技術も向上しましたし、スタッフもこれよりも早く2年でスタイリストデビューさせることを目標にしています。

「同じでいい」お客さまにこそ提案を

長く付き合いのあるお客さまこそ、緊張するという八月朔日さん

――カットで一番こだわっていることは?

お客さまの今の髪の状態、毛質、骨格にあわせてフィットさせるというのが、僕のカットのベースになっています。もちろん時代の流れや流行を意識することもありますが、僕は機能的にしたいという思いが強く、日常の手入れが楽で、1番よく見えるデザインに落とし込むようにとくに意識しています。

技術の細かいところでいうと、より骨格にフィットさせるために、髪の毛の1本1本の流れをしっかりコーミングするということも大切にしていますね。これは基礎の基礎なのですが、基礎に忠実でありたいという意識がキャリアを増すごとにより強くなっているように感じています

――そうすることで、満足度も高くなるわけですね。

ただ緊張感はどんなにキャリアを重ねてもなくならないですね。僕はもう長いこと新規のお客さまは担当していなかったので、ありがたいことに既存のお客さまばかりですし、なかには20年以上の付き合いのお客さまも大勢いらっしゃいます。でもそういうお客さまと相対する方が、すごく緊張しますよ

というのも、そういうお客さまの多くは写真を持ってきてこの髪型にしてほしいというオーダーがほとんどなく、毎回「いつもと同じで」というオーダーの方が多いんです。でもそういう方にこそ、提案が必要だと思っていて。毎回同じにしても仕上がりに感動はしてもらえないと思うからです。お客さまと会話を楽しんだり、穏やかな時間を過ごしているけれど、見えないプレッシャーは常に感じています。だからこそ、より良い状態にもっていくしかないのではないかと。

――どうすれば、良い状態に持って行くことができるのですか?

やろうと思って、実現できるほど甘くはないのかなと思います。たまにはよくできたということもありますけど、何の迷いもなく、お客さまが満足する状態にできることはほとんどない。それでも日々練習をして技術のベースをあげ、毎回、感動してもらえるような仕上がりを目指すしか、できることはないんだと思います

お客さまに負担をかけない、細かなサービスが強み

シャンプーの力加減を把握するなど、お客さまに丁寧に接することを心がけているそう

――美容師として心がけてきたことはどんなことでしょうか?

D/Apartmentとして心がけてきたことに近いのですが、お客さまに少しでも負担をかけないような、細かいサービスです。たとえばシャンプーのとき。お湯や力の加減をシャンプーのときに聞くのが美容室の決まりのようになってしまっていますが、1回目はもちろん聞く必要があると思うんです。ただ毎回聞く必要って本当にあるのかな、と。それこそ1回聞いたらあとは覚えておけば、毎回お好みのシャンプーが実現できるわけですよね。それくらいの細やかさは常に提供していきたいと思っています。


八月朔日さんが、高いカット技術を維持している3つの理由

1.教えることを通して、自分の技術を改めて見つめ直す機会を作った

2.誰よりも多く、時間を忘れるほど集中してウィッグカットの練習をしている

3.20年来の常連のお客さまにも、緊張感を持って接している

後編では、昨年から植物事業を展開し始めたという八月朔日さんに、その理由やきっかけを伺います。きっかけとなったのは、コロナ禍で空白の時間が生まれたこと。本当に自分がやりたいことに一歩踏み出してみようという決意から、事業を起こしたそうです。後編もお楽しみに!

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Salon Data

D/Apartment
住所:東京都中央区銀座1-23-2
電話:03-6263-2981
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