自分以外はみんな先生。憧れの人から学んだ姿勢が自分の成長を加速させた「COA銀座」ゆうだいさん
東京・銀座にある「COA銀座」は、SNSで人気のスタイリストが多数在籍する人気サロン。そこで活躍中なのが、スタイリストのゆうだいさんです。(2024年7月より新店COA表参道にて勤務)
ゆうだいさんは、専門学校を卒業後、1社目の就職先は多店舗展開型のサロンを選びました。しかしいつかCOA銀座のオーナーである小西さんと働きたいと思い、SNSで猛烈なアピールを続けたといいます。
前編では、行動派のゆうだいさんがデビューをするまでの、新人時代のお話を伺いました。
後編では、COA銀座の中途採用試験の内容と、新人時代を経て、いまゆうだいさんが大切にしている考えについて詳しく伺います。
今回、お話を伺ったのは…
「COA銀座」スタイリスト
ゆうだいさん
宮城県出身で、美容師歴5年。きれいめカジュアルなボブヘアのスタイリングを得意とし、ボブカットの店内指名率ナンバー1を誇る。カットコンテストでは全国2位を獲得し、専門学校で週に1度授業を受け持っている。Instagramフォロワーは3万人。
150人の応募で内定者は3名。面接では風変わりな質問も
――COA銀座のその当時の中途採用試験の流れについて教えてください。
最初に書類選考、次に代表である小西と青木による面接が行われました。当初は150人ほどの応募があったそうなのですが、最終的にその募集から採用されたのは3人だけでした。
――面接ではどんなことを聞かれましたか?
一番印象に残っているのは「COAで働き始めた後、どんなタイミングで会社を辞めたくなると思う?」という質問です。「働き始めてもいないのに、なんてことを聞くんだ!」ととても驚いたのを覚えています。
「僕は学ぶ意欲が強いので、学ぶことがないと思ったら辞めたくなると思う。けれど先を走っているおふたりが先導し続けてくださる限り、学び続けられる環境だと思っています」と回答しました。
実際代表の小西や青木は売れっ子でとても忙しいのに、いつも練習の様子を動画で配信していて、ずっと学ばせてもらえる環境があると確信していたので、そのように回答しました。
――すごい質問ですね!そしてその質問にすぐ答えられるゆうだいさんもすごいなと思いました。
多分、一生一緒に働きたいタイプなのか、それとも独立思考なのかを見ていたんだと思います。ちょっと困る質問をしてどんな反応をするのか、僕を試していたと入社後に明かされました。
他にも、「会社はあるけどまだ美容室はないし、サロンの名前も決まってないけど僕らについて来れる?」という質問や、「ゆうだいくんはカット好きみたいだけど、カットで売れなかったらどうするの?」という質問もされました。僕は「売れるまでやるのみです」と答えたのですが、さらに「それでも売れなかったら?」と聞かれました。
代表の青木が下積み時代にピザの配達をしていたことにかけて、「ピザの配達でもしながら、どうするか考えます」と答えたところ、笑ってもらいました。僕はこの回答のお陰で合格できたのではないかとも思っています(笑)。
――入社するまでの準備はどのようなことをしましたか。
前のサロンがとても寛大なところで、僕が辞めるということが決まってからも技術の向上に協力していただけました。入社前にシャンプーを覚えなければならなかったのですが、COA流を習得するための練習にまで付き合ってくださって。円満に送り出していただき、しかも応援していただいて、本当にありがたかったですね。
キャパオーバーの経験で感じた、コンディションを整えることの重要性
――内定を得た後は、COA銀座さんの最初のアシスタントとして入社されたんですね。
サロンを立ち上げる姿を間近で見せてもらえたのは、得難い経験でしたね。
面貸しをしているサロンを借りてスタートしたところから、銀座店をオープンするまでの資金調達の方法や、サロンをどんなスタイルにしていくか決めるまで、すべてを見せていただきました。
――スタイリストデビューするまでの道のりを教えてください。
技術はほぼ小西から教えてもらいました。シャンプーもブローもカラーもカットも教えてもらえて、本当に贅沢だと思いますね。学びたい意欲が強い僕としては最高の環境でした。
スタイリストデビューするまでの2年4ヶ月の間、定期的に技術チェックの時間を作ってもらい、ひとつずつ技術を習得していきました。
――最初につまずいたのはどんなことでしたか?
バックシャンプーでした。はじめに入社したサロンではサイドシャンプーしかやってこなかったので、バックシャンプーができなかったんです。テストをしてもらったときに「洗車機みたいなシャンプー」という指摘をいただいてしまったので、お手本の動画を撮らせてもらって、それを参考に必死に練習しました。
またブラシを使ったブローも、あまり使う機会がなかったためうまくできませんでした。青木に直接終電まで教えてもらっており、遅くまで残ってもらうことへの申し訳なさで、涙目になりながら練習したこともありました。
技術チェックが厳しかったので、その分、入客してからミスは起きていません。できるようになるまで厳しく、丁寧に育てていただいたことは本当にありがたく思っています。
――デビュー後、大変だったことはありますか?
キャパオーバーになってしまって、体調を崩してしまったことですね。
当時僕は、早朝にサロンに来て朝練をして、終電まで練習をして、営業時間外の時間も練習に打ち込むのが正義だと思い込んでいたんです。それによって体調を崩してしまって、お客様の予約を変更していただいたとき、「体調管理もプロの仕事のひとつなんだな」と実感しました。
どれだけ練習してもそれをお客様に還元できなければ意味がないので、サロンワークに全力で望めるよう、メリハリを付けた生活を心がけるようになりました。疲れているときは早めに家に帰ってゆっくりお風呂に浸かったり、早めに休んだりすることで、営業時間中のパフォーマンスも向上したと思っています。
――軌道に乗ったタイミングはいつ頃でしたか?
アシスタントのときは、モデル練習をがんばっていたため、営業時間外の売上が50万円あった時期が長く続きました。しかし、ブローがうまくできていなかったのでウイッグ練習に励みだしたところ、売上がどんどん下がり、Instagramのフォロー数も全然伸びない時期がありました。
その後、「1度来てくださったお客様が再来したくなる施術をしよう」と心に決めて取り組んでいたら、離れていたお客様が戻ってきてくださるようになりました。そこからはロングスパンで見ると売上はずっと右肩上がりになっています。
――一度不調を経験したからこそ、得られた学びですね。ほかに大切にしている考えはありますか。
以前、ABBEYの松永さんのカット講習を受けさせていただいたのですが、講習中はお金や売上の話に触れることが一度もなく、終始「お客様ってこういうときこんな気持ちになるよね」ということをお話されていたんです。
その文脈で、「みなさんにはベストセラーな美容師じゃなくて、ロングセラーな美容師になってほしい」と言われ、その言葉を今でもすごく大切にしています。SNSが盛んなこのご時世ですが、瞬間的に売れることを目指すのではなく、ロングセラーな美容師で居続けたいと思っています。
周りに夢を語るとチャンスが舞い込む
――美容師歴を重ねるに連れて、意識の変化はありましたか。
これまではずっと自分の技術を向上させることに重きをおいてきましたが、後輩が増えて、教育や採用を担当するようになったこともあり「スタッフみんなが美容師になってよかったと思う環境を作りたい」と思うようになってきました。
僕が率先して「COAはいい会社だよ!」と伝えていきたいんです。そのためには、つまずいている後輩がいたらフォローしたいし、働きにくいと感じてる人がいるならば、幹部メンバーにも忌憚ない意見を言える存在でありたいと思っています。
――美容師をするなかで、大切にしている考え方はありますか。
「どんな人からも学びを得ようとする姿勢」を大切にしています。
代表の小西は高い技術力もあり、SNSのフォロワーもたくさんいるのに、いまだに入社1年目の子から幹部まで全員に「この写真とこの写真だったらどっちがかわいいかな?」「この音楽よりこっちの音楽のほうが流行ってる?」と質問するんです。
物事をよくするために、周りのどんな人からも学びを得ようとする姿勢があるからこそ、いつまでも成長し続けているのだなということを教えていただいています。
身の回りの全員が先生だと思って接することを意識し出して、僕の成長も加速している実感があります。
――これから美容師を目指している人に、アドバイスをください。
夢を語ることをおすすめしたいです。
夢を語るのは気恥ずかしいものですが、やりたいことやなりたい像を周りに話すことで、チャンスが掴めることもあると思うんです。
僕は講師になりたかったので、1年目の頃からずっとそれを公言し続けてきました。すると、セミナー依頼があったときに「あの子、講師やりたいって言ってたからアシスタントとしてサポートに入ってもらおう」という依頼があったりして、徐々に目標に近づくことができたんです。
自分ががんばりたいことを周りの人に知ってもらうとチャンスがたくさん巡ってくるので、恥ずかしがらずに夢を公言してほしいですね。
――最後にゆうだいさんの今後の目標をお聞かせください。
僕の生涯目標は「日本の美容室から失敗をなくすこと」です。それを達成するためには、高い技術を全国の美容師に共有することが必要だと思っています。COAは業界最大級の予約サイトで全国1位を取ったこともありますし、質の高い技術を学ぶことができると思うんですよね。
でも質の高い技術はそれだけ複雑なもの。高いレベルの技術を日本一わかりやすく伝えられる人になりたいと思っています。
ゆうだいさんが新人時代の壁を乗り越えた3つのポイント
1.長くお客様に通ってもらえるような美容師を目指した
2. 周囲のすべての人から、学ぶ姿勢を持ち続けた
3.周囲に夢や目標を語り、チャンスが多く舞い込む状況を作った
お話の端々や語られるエピソードから、ゆうだいさんの美容への情熱を感じました。どんなに活躍しても周りから学び、謙虚に努力を重ねる姿が成長をさらに加速させているのだろうと感じた取材でした。
これから美容師さんとして活躍を目指す方は、参考になさってみてください。