安定した道を歩んでいたはずが36歳で退社、ヨガインストラクターの道へ。転機となったのは、「なんとなく満たされない日々」【ヨガ・瞑想講師 井上敦子さん】#1
一般企業で働きながら、趣味でヨガを学んでいた井上敦子さんが、ヨガインストラクターの資格をとったのは36歳。36歳で思い立った理由と、それまでのキャリア遍歴を伺います。
お話を伺ったのは…
ヨガ・瞑想講師 井上敦子さん
大学卒業後編集プロダクションに勤めるも、ハードな労働環境に体を壊して1年で退社。心と体のためにヨガを学びながら、再就職先で10年以上勤務。36歳で思い立ち、ヨガの資格をとるためにインドに渡る。現在は、ヨガインストラクターのかたわら、瞑想法の一種でもある「ヨガニドラ」の指導者育成にも尽力している。
ホームページ
インスタグラム：@yoga_atsuko.inoue
INOUE’S PROFILE
- お名前
- 井上敦子
- 出身地
- 千葉県
- 年齢
- 48歳
- 出身学校
- 同志社女子大学
- 憧れの人
- ニコール・キッドマン
- 趣味
- 英会話・ゴルフ
憧れだった職業につくも、体を壊して挫折
「きつめのレッスンをしても生徒さんから“癒された”“リラックスできた”と言われることが多いんです…」と語る井上さん。優しい口調からも癒しのオーラが放たれていました。
――もともとはヨガではなくて、一般企業の会社員だったそうですね。
小さい頃から本を読むことが好きだったので、憧れの職業は編集者でした。それで大学卒業後は編集プロダクションに入社。そこは男性だらけの会社で、私が女性記者として初採用だったんです。仕事は嫌いではなかったのですが、あまりのハードワークで入社10か月で倒れてしまったんです。
それで休職したのちにそのまま退社しました。
――その時はどんな気持ちでしたか？
自分にがっかり、という気持ちが強かったです。学生時代の私はわりと優等生で、大学時代も一生懸命勉強に取り組むタイプでした。
にも関わらず会社を早々に辞めてしまって、「同級生たちはバリバリ働いているのに、なんで私はそれすらできないんだろう」と自分を責めて、「自分は社会的に価値がないのではないか」と思い悩んでいましたね。
――お休みしている期間にヨガに出会ったんですよね。
はい。父親の知り合いが、自宅でふさぎ込んでいる私を見て、自分が通っている公民館のヨガに誘ってくれたんです。
私は当時、友達にも会いたくないという心境だったのですが、近所のヨガなら行けるのではないかと思い、参加することにしました。
初めてのヨガでガチガチの心と体がみるみるほぐれた
――初めてヨガをしてみた感想はいかがでしたか？
その時の私は劣等感の塊で、体も心もガチガチだったのですが、初めてヨガをした時それらが柔らかくほどけていく感じがしました。
それで「ヨガってすごい！」と思って、ヨガの本やDVDを買って、家でも練習するようになりました。
それが23歳ごろですね。
――そこからヨガのレッスンに通う日々が始まるのですね。
そうですね。休職している間は週１ペースで通っていました。他にメンタルクリニックにも通っていたので、その治療のおかげもあって、再就職までできるところまで復活しました。
――再就職先ではどんな仕事を？
体が強くないことを自覚していたので、残業の少ない秘書職をしていました。その期間は、自宅の近くにヨガスクールがあるときは会員になったり、近くになかったり仕事が忙しい時は自宅で練習したりしていました。
形態はいろいろ変わっていましたが、ヨガをしていない期間はなかったと思います。
会社員という安定の道を捨てる気持ちはなかった
――スポーツ競技をしていて、体のメンテナンス法としてヨガを始める人も多い中、井上さんの場合は「癒し」や「リラックス効果」という側面からヨガに入っている気がします。
そうですね。ヨガを始めてからは、ヨガの思想なども知りたくて、独学でヨガ哲学などの勉強もしていました。
そんな会社員をしながら、空いた時間にヨガレッスンをするという生活は、35歳まで続きました。
――15年近くもヨガを学んでいて、インストラクターになろうとか、ヨガの道を極めよう、という思いにはならなかったんですか？
それが全然ならなかったんですね。
私は基本的に真面目で保守的な思考の持ち主なので、会社員として一生勤め上げるのが人生の成功への道なんだと思って疑わなかったですし、その時の仕事も自分に合っていると思っていたので。
――現状に特に不満はなかったと。
頭ではそう思っていたんですが……（笑）。今振り返ると、本心を押し殺していたのかもしれません。「社会人とはそういうこと。少しずつ身を削られながらも、それで社会貢献していくのがあるべき姿」と、自分に言い聞かせていたように思います。
ただそんな一方で、どこかで満たされない部分があったのも事実です。
36歳でヨガインストラクターになることを決意
――転機はいつですか？
36歳です。当時通っていたヨガスクールの女性オーナーに「そろそろ教える方になったらいいのに」と言われました。それでちょっとその気になって（笑）、「私にも教えられるのかな」と考え始めた同時期に、私がまた過労で倒れてしまったんです。
――それで会社員を辞めてヨガ講師になろうと
はい。休職期間にあらためて、自分は本当は何をしたいのだろう、と考えました。このまま定年まで働くのもいいけど、私はやっぱり違う生き方がしたい！と思って、「この会社であと１年働いたら、ヨガインストラクターになろう」と決めました。
――安定した道を歩んできた井上さんの決断の時だったわけですね。
そうですね。それで「ヨガを本格的に学ぶならインドだ」と思って、36歳でインドにヨガの資格を取りに行きました。
取材・文/皆川知子（tokiwa）
撮影/ワタナベミカ
