売上だけをゴールにしない。人間力とチームワークこそが生涯美容師を育てる「nina三軒茶屋」助川貴之武さん
固定給や福利厚生などで安定を得られる一方、「頑張っても収入が伸びにくい」、「自由度が低い」、「人間関係が複雑」と思われがちな正社員という働き方。本企画では、そのリアルに迫ります。
今回は、世田谷区の人気エリアにある美容室「nina三軒茶屋」のオーナー・助川貴之武さんに取材しました。
業務委託ではなく正社員採用にこだわるのは、生涯美容師、生涯雇用を目標としているから。お客様から信頼され、長く支持されるには、技術はもちろんチームワークや人間力も大切だと助川さんは考えます。今年で19年目を迎える少数精鋭サロン「nina三軒茶屋」での働く環境について、詳細を伺いました。
今回、お話を伺ったのは…

助川貴之武さん
株式会社ODJ/nina三軒茶屋
代表
福島県出身。理容師、美容師のWライセンス取得。都内数店舗を経て、カナダ・バンクーバーで海外サロンの経験も。数多くのコンテストで入賞、ヘアショーも手掛けた。29歳の時に、「nina三軒茶屋」をオープン。男女問わず幅広い年齢のお客様から支持されるサロンに成長し、今年で19年目を迎える。
単純な売上計算だけでなく、美容師としての成長も収入アップにつながる

――20代正社員スタイリストの給与例を教えてください。
基本給はスタートが約23万円、そこに個人の売上に応じたインセンティブが加わる形です。指名客orフリー客でそれぞれ加算されるパーセンテージを設定しています。
在籍しているスタイリストの例で言うと、新卒入社から2年弱でデビューして現在25歳(社歴5年)。インセンティブ、各種手当などがついて月収は30万円ほどになります。
――給与に加算される手当にはどんなものがありますか。
「店販手当」が売上の10%。ヘアケアメーカーの商品と、オリジナル商品も販売しています。「目標達成手当」は、店舗全体の月の売上目標額を設定し、それが達成されると、半年に一度「賞与」という形でプラスされます。
頑張ったことがちゃんと本人に返ってくる仕組みを基本としていますが、個人プレーだけで成り立つ美容室ではなく、スタッフみんなでお客様を幸せにするチームを作りたいと思っています。
――昇給について、どんな基準を設けていますか。
その人の成長や役割が変わったタイミングで見直す考え方です。技術が向上したということだけでなく、お客様への対応力が上がった、後輩を教えられるようになったなど、「一段上の仕事ができるようになった」ところを評価の基準にしています。
カット、カラー、パーマの基礎技術のほか、エクステやメイク、着付けも個人の希望があれば学ぶことができます。練習と試験をクリアできれば、そういったプラスアルファの技術に関しても、昇給や手当の対象になります。
――店舗全体での入客数は、月平均でどの程度でしょうか。
おおよそですが、月400〜450名くらいです。そのうち新規は約1割、リピーターが多くを占めています。また、一人のスタイリストが1日に担当するお客様は7〜10名ほど。客単価は1万円前後です。
――新規やフリーのお客様はどのように振り分けていますか。
経験を積むという意味で若手に振ることが多いですが、特定のスタッフだけに偏らないように店舗全体で受け入れる方針です。
――集客はどのように行なっていますか。
大手予約サイトなどの集客媒体を活用しています。紹介や口コミで来ていただく方も多いかもしれません。
SNSはサロンのアカウントをスタッフみんなで更新している形で、集客というよりは、お客様に認知していただく意味合いが強いです。個人のSNS活用はそれぞれに任せています。
男女や年齢を問わず、幅広い客層が特徴。「この年代だけを集めたい」という考え方ではなく、一人ひとりに合った提案で「また来たい!」と思っていただくことが一番大切ではないでしょうか。
ライフステージの変化で諦めない、長く働くための柔軟な環境作り

――正社員にはどのような福利厚生が適用されますか。
社会保険や雇用保険、健康診断、交通費支給、有給休暇など、安心して長く働いていける制度を整えています。
業務委託やフリーランスという働き方もある中、正社員だからこそ得られる安心感や会社からのサポートがあります。働いている間だけでなく、将来の生活まで考えた「ここで長く働きたい」と思ってもらえる会社を目指しています。
うちは女性スタッフが多いですが、旅行や推し活など、有給を使ってみんなそれぞれの自由時間を楽しんでいますよ。
――育児休暇について、これまでの実績があれば教えてください。
育児休暇を取得後に復帰し、活躍している女性スタッフがいます。3ヶ月で現場復帰しましたが、現在は朝10時〜17時半の時短勤務です。復帰する際も、以前と同じ働き方をいきなり求めるのではなく、その人の家庭の状況や希望を聞きながら、無理なく復帰できる働き方を相談して決めました。
――ライフステージの変化に応じて、時短勤務や休日を変更することが可能ということでしょうか。
はい、できる限り柔軟に対応したいと考えます。
結婚、出産、子育て、介護など、人生の中ではいろいろな変化があります。そのたびに、「美容師を辞めるしかない」という選択になってしまうのではなく、その時の状況に合わせて働き方を変えられる環境作りを目指しています。
もちろん店舗の状況や他スタッフとのバランスもありますが、まずは本人の希望を聞き、一緒に働き方を考えるという姿勢をとりたいです。それが店舗に所属し、正社員で働くことのメリットとも言えるのではないでしょうか。
あくまでもまだ構想段階ですが、営業を早めの時間帯に設定するなど、ママさん美容師がより働きやすい美容室が新たに作れたら、とも考えています。
技術+人間力の高さで長く支持される美容師を目指して

――教育プログラムではどのようなこだわりがありますか。
2年間でスタイリストデビューできることを一つの目標にしています。夜遅くまでの練習ではなく、1時間の合同練習を週2〜3回、希望があれば夜の自主練を行なっています。
他サロンと異なり、シャンプーと並行してカラーやパーマのレッスンも行うため、スタイリストデビューが早いのが特徴と言えます。
ただし、早くデビューすることだけが目標ではありません。「デビューした後に活躍できる美容師」を育てることが目的です。
マニュアルは紙ベースのものがありますが、より分かりやすく学べるよう、動画のマニュアルも増やしています。
――デビューまでの練習費用について教えてください。
練習用のウィッグ代金を、一部サロンで負担しています(ショート用のウィッグを支給)。全額自己負担にしてしまうと、経済的な理由から練習量に差が出てしまう可能性があるためです。練習に集中できる環境を作るために、少しでもフォローできればと思っています。
――セットやメイク、着付けなども学べるとのことですが。
まずはカットなどの基本技術をしっかり習得することが優先です。さらに学びたいジャンルがある場合は、その人の興味や将来なりたい方向性に合わせて学んでいくスタイルです。
多くの技術を学ぶことは苦労も多いですが、美容師としての幅が広がり、将来やりたいことへの選択肢が増えるのは魅力だと思います。
――技術や接客力を磨くために取り入れていることはありますか。
日々の営業中に先輩から学ぶことに加え、サロン内で定期的に研修を行う、外部の講習に参加することもあります。
研修をやって終わりにしないことが重要。「何を学んだか」よりも、それを「実際の営業でどう使えるようになったか」が大切なので、実践とフィートバックを繰り返しています。
――サロンとして目指す美容師像はありますか。
「技術が上手いだけでなく、人として信頼される美容師」です。技術力があることは大前提ですが、お客様から「この人にまたお願いしたい」と思ってもらえるには、技術だけでは足りないのかもしれません。
話をちゃんと聞ける、約束を守る、相手の気持ちを考えられる、素直に学べる、仲間を大切にできる。当たり前のようでなかなかできない、「人間力」があってこそ、お客様から長く支持される美容師になれるのではないでしょうか。
――ninaが大切にしている考え方とは。
個人プレーではなくチームでお客様を幸せにすることを大切にしています。スタッフ同士が支え合うことで、お客様によりよいサービスができるからです。
正直、技術を覚えるだけならいくらでもできる時代です。でも、人間力やチームワークは、日々の仕事の中でしか育たないと思っています。だからninaでは、美容師として成長するだけでなく、一人の人間としても成長できる会社にしたいです。
そういう中で働き、成長していけることが、サロンに所属する正社員美容師ならではの魅力だと思います。
「nina三軒茶屋」への取材を通して強く感じたのは、収入や福利厚生など正社員だからこそ得られる安定性に加え、美容師としても人としても成長できる働く環境へのこだわり。そこから生まれる少数精鋭のチームワークこそが、生涯美容師として働いていける安心感につながっているのではないでしょうか。
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nina三軒茶屋
住所:東京都世田谷区太子堂1‐12‐39 三軒茶屋ビル1F
TEL:03-5712-2727


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