これからも「好きなこと」「やりたいこと」に向かって進みたい【UGATSU 小浜田吾央さん】#2
ヘアサロン勤務、ヘアメイク弟子入り、フリーランスを経て、さまざまな経験を積んだ小浜田吾央さん。現在は映像作品をメインに、ヘアメイクとして幅広い媒体で腕を振るうほか、自身が立ち上げた美容室でサロンワークもしています。
後編では、試行錯誤でメイクスキルを磨いたお話や、肌を整える化粧水をプロデュースしたこと、働くことについての考えなどをお聞きしました。
お話を伺ったのは…
hairmake office&salon UGATSU
ヘアメイクアップアーティスト/美容師 小浜田吾央さん
2013年に日本美容専門学校を卒業し、美容室ohana(オハナ)に入社。2016年にスタイリストデビュー。2017年から美容室atelier makita(アトリエ マキタ)でヘアメイクアップアーティストの牧田健史氏に師事し、翌年フリーランスに。2024年2月、hairmake office&salon UGATSUを立ち上げる。
Instagram:@ugatsu_hairmakeoffice
実は独学で身につけたメイク技術

小浜田さんがヘアを担当し、ほかの方がメイクを担当するスタイルの作品撮りもあり、メイクを学ぶ絶好のチャンスだったそう。
――前編でもお話に出た作品撮りについてお聞きしたいのですが、どのように行なっていたのですか。
最初に勤めたサロンのohana時代に出会ったカメラマンさんと、よく一緒に作品撮りをしていました。その方は今、アーティストなどを撮る音楽系カメラマンとして活躍されているんですが、初めて会った時はまだお互いにアシスタントでした。
起用したいモデル候補を持ち寄って、コンセプトや撮り方を相談して、撮影をして。撮りためた写真でブック(自分の作品をファイリングしたプレゼンテーションブックのこと)も作りました。
――美容師としてヘアセットはやり慣れていたと思いますが、メイクの方は弟子入り時代に習得したのでしょうか。
師匠がモデルにメイクを施すところを見て学ばせてもらいましたが、具体的に技術を指導してもらったわけではなく、実は完全なる独学です
。師匠のメイク道具の手入れが僕の仕事のひとつだったのですが、きれいに掃除しながら、「これを使ったということは、今こういう色が人気なんだな」と考える。それで自分でも同じような色を買って使ってみる。何かうまくいかないから、やり方を変えてみよう。そんな感じでしたね。
――すごい! まさに試行錯誤。
例えばアイライナーひとつ取っても、ジェルとペンシルとリキッドはどういう風に使い分けているんだろうとか、最初の頃はそんなレベルでした。
あとは、『gap PRESS』などのコレクション情報誌や『CYAN』『Kinfolk』といった雑誌を見てとにかく真似してみました。今と違って、プロのメイク動画をYouTubeなどで簡単に見られる時代ではなかったですから。
――師匠と雑誌を見るのが勉強のベースで、あとは自分なりの実践と工夫で身につけてきたわけですね。
独学だなんて、当時は絶対言えませんでした。どこで習ったとか師匠に教えてもらったとかじゃないと、信用性がないですもんね。
多くの人の肌に触れた経験から、化粧水をプロデュース

小浜田さんが目指したのは、「男女問わず使えて、とにかく肌に優しく、肌を守るための化粧水」。
――ヘアメイクの仕事をきっかけに、化粧水をプロデュースされたとか。
映画や舞台、ドラマの現場で、多くの俳優さんやモデルさんのメイクを担当してきました。その中で、ずっと疑問に思うことがあったんです。
それは、「化粧水に対する過剰な期待」です。美白、エイジングケア、肌トラブルの対処…と、多くのことを求めがちですが、化粧水は万能薬ではありません。化粧水の本来の役割は、肌を保湿してコンディションを整えること。必要以上の成分を詰め込むのではなく、肌が求めるものをシンプルに届けることこそが大切だと、長年感じていました
。

「SKINFULNESS Lotion」(スキンフルネス ローション)は多様なヒト型セラミドを配合。界面活性剤、鉱物油、シリコン、パラベン、アルコールは不使用。
――その思いを形にしたのが「SKINFULNESS Lotion」なのですね。
気温や湿度の変化、紫外線、ストレスや体調の波にも影響されにくい、防御力の高い肌に整えるためのスキンケアなんです。肌が整うと気持ちも上がるし、自分をもっと好きになれるはず。慌ただしい日々の中で、肌と向き合う時間を提供できたらいいなと思っています。
――具体的にはどんな化粧水なのでしょうか。
「ヒト型セラミド」をたっぷりと配合しているので、角質層に浸透しやすく、保湿力が高いのが特徴です。
セラミドは人の肌で自然と作られる脂質のひとつで、肌のうるおいを保つ役割を担っています。ただ残念なことに、年齢を重ねるにつれてセラミドの生成量は減少してしまいます。30代から減り始め、50代ではピーク時の半分になるというデータもあるそうです。ハリのある美しい肌には欠かせない成分なんですね。
軽やかな使用感も好評ですし、使い続けるほどに良さを実感していただけると思います。
オフィス兼ヘアサロンのUGATSUを設立

「海外作品に携わってみたい、あの人と仕事をしたい、別のサロンを出したいなど、目先のやりたいことはいろいろあるんです」と小浜田さん。
――hairmake office&salon UGATSUを立ち上げた経緯を教えてください。
2024年2月にUGATSUという名称でスタートしたのですが、この場所自体はもともと使っていたところなんです。シェアサロンを辞めたあと、専門学校時代の同級生と一緒に祐天寺でサロンをやっていたのですが、その時に撮影スタジオ兼ヘアメイク道具を置いておく事務所として借りました。
祐天寺のサロンを辞めることになり、ここをサロンにしたいと思って調べたら、営業するために必要な広さがギリギリ足りていたんですよ。それで、シャンプー台も工事をしなくて済む可動式のものを見つけて、カット椅子や仕切り、蓋つきのゴミ箱など必要なものを揃えました。
イチから新しいサロンを作るとなったら、1000万円くらいかかるじゃないですか。でもここは、スタジオ兼事務所として始めた時に100万、サロンをやるとなった時にプラス50万です(笑)。

ヴィンテージ感のあるアパートを改装した空間に合わせて、カット椅子もこだわって探したそう。
――ヘアメイク1本に絞ることは考えませんでしたか。
今、売上に関してはヘアメイクとサロンの割合が8:2〜9:1ですが、サロンの割合をゼロにするという考えはないんです。最初にサロン勤めをした時もフリーランス時代も、支えてくれたのはお客様でしたから。
ありがたいことにUGATSUを気に入って来てくださる方がいるので、僕もここに愛着が湧いてきちゃって。もう少しサロンの方の売上をベースアップしたいと思っているところです。
――サロン部分の強化のほかに、今後の目標や夢はありますか。
ものすごく先の目標は決めすぎないようにしています。まずは目の前のやりたいこと、その次、その次…と1歩ずつ進みたいなと。自分の視点が変わるたび、その時やりたいことにトライするのが楽しいんです。
そうやって仕事をしながら、生活に困ることなく、人様に迷惑をかけることなく、「無事に生きてこれたなぁ」と人生を終えるのが大きな夢かもしれません。
――小浜田さんにとって、「働く」ということは?
僕にとって働くことは「公」でもあり「私」でもあると思います。働いているという感覚がなく、生きていることとイコールのような。働いていく中でたくさんの人と出会い、時にチームを組んでともに歩み、それぞれの岐路で別れ、また誰かと出会う。そうやって環境が変わっても、僕が「自分のやりたいことをやっているだけ」なのは変わらないんです。
もちろん、相手あっての仕事なので、クオリティはしっかり追求したいと思っています。自分が好きなことを楽しいと思いながらやって、誰かに喜んでもらえたら、一番いいですよね。
「つまらない」とか「働かされている」って思ったら、たぶんその仕事は向いていない。好きこそものの上手なれじゃないですけど、その仕事を楽しんでいる人には勝てない。そう思います。
小浜田さんが大切にしていること
1.やりたいことを見つけたらまず始めてみる
2.トライ&エラーを繰り返しながら改善していく
3.仕事を楽しみながらクオリティを上げる
撮影/長谷川梓
取材・文/井上菜々子