自分のしたことがすべて自分に返ってくる。美容師は「鏡」のような仕事【美容師 「ulu.」大久保伸哉さん】♯2
2023年6月、神奈川県の大倉山駅の駅前に夫婦で「ulu.」をオープンさせた大久保伸哉さん。2024年には法人化も果たし、確かな技術力でお客様に愛されるサロンとして成長しています。
前編では大久保さんが独立するまでにどのような経験を積んだかを伺いました。
後編では大久保さんの独立後について伺います。大久保さんが夫婦で立ち上げたサロン、「ulu.」は関わった人すべてを豊かにしたいというコンセプトを掲げており、お客様やスタッフはもちろん、近隣のお店、業者の方など人とのつながりを大切にしています。
独立をしたことでお客様との関係性がより濃くなり、これまで以上に人に対する感謝が生まれたと大久保さんはいいます。
お話を伺ったのは…
大久保伸哉さん
宮城理容美容専門学校(現在は廃校)を卒業後、横浜や川崎に店舗を展開する「シーループユナイテッド」に入社。当初はFC店での勤務だったが、26歳のときにベーシックカットの教育技術をかわれ、直営店へ移動。その後、複数店の店長を経て2023年6月に独立。美容師の妻とともに「ulu.」を開業。2024年には法人化を果たすなど、順調に業績を伸ばしている。
独立の決意にエールを送ってくれた社長

――退職や独立はスムーズでしたか?
本当にスムーズで、前職のサロンには感謝しかないですね。急な独立はお店に迷惑がかかると思ったので早くから独立計画を立てていたのですが、2年後に独立をしようと決意したとき、とても印象的だったことがあって。そのタイミングで前社では社長が交代することになったんです。
新しい社長から私の元に電話があり、「来月から社長になるから、伸哉よろしくな」と言われました。社長には本当に申し訳なかったのですが、2年後には自分の店を出したいと考えているとはっきり伝えたんです。
――社長の反応は?
「いいね!応援するよ」と言ってくれました。FC展開もしている会社だったのでFC店として独立する提案を受けるかなと思っていたのですが、私の考える形を尊重して、しかもそれを応援してくれる社長の懐の深さに感動してしまって。「この社長の元で、あと2年も学ぶことができるんだ」ととても嬉しかったことを覚えています。
それまでは、技術を教えることでスタッフとつながっていたのですが、新しい社長からはスタッフに対して熱量をもって接することの大切さを教わりました。そうしなければ人の心は動かせない、と。
熱量が足りないと怒られたこともありましたが、本当に多くのことを学ばせてもらいました。独立してから2年がたった今でも、半年に1回はふたりで飲みにいく関係性で、とてもありがたく思っています。
――素敵ですね。当初は宮城での独立を考えていたとのことですが、神奈川に出店された理由は?
30歳を超えたあたりから、もう宮城で独立しようという気持ちはなくなっていて。当時は彼女だった妻と一緒に独立することを決めていたので、ふたりで相談をし、勝負をするなら東京や当時勤めていた神奈川エリアにしようということになったんです。
口数が少なかったお客様が饒舌に。マンツーマン施術でより濃い関係性に

――独立してからはどのようなことを感じましたか?
人とのつながりを、より強く感じるようになったと思います。まずはお客様との関係性です。前のサロンでは私がカット、カラーの一部を担当する形で、ほかの施術のほとんどをアシスタントに任せていました。それが今はそれほど大きくないお店でほぼマンツーマンでお客様に接しているので、お客様との時間が圧倒的に増えたんです。
この形で施術をするようになってから、前のサロンからお付き合いのあるお客様とも、より深い関係性が築けるようになったと思います。たとえば以前のサロンではまったく聞いたことがなかった趣味の話しや、熱中していることなど、個人的なことを話してくれる方が増えた気がします。
またもっと驚いたのは、前のお店ではほとんどしゃべらなかったあるお客様が、こちらに移ってからは饒舌に話してくださるようになったことです。お客様のほとんどが以前のお店も好きだったとおっしゃってくれますし、前のサロンの接客スタイルを否定するわけではないのですが、美容師の仕事は人と人とが深く関われるほどお互いの満足度も高くなると気づきましたし、やりがいが大きくなった気がします。
――お客様以外の方たちともつながりが強くなったのですか?
そう感じます。このサロンを立ち上げてからはお客様やスタッフだけではなく、ディーラーさん、商店街の皆さん、宅急便を届けてくれる配送の方などとの関わりも深くなり、自分がいかにたくさんの方たちに支えていただきながら仕事ができているかということを、改めて感じるようになりました。
このサロンでは配達の方が来ても、目を見て「ありがとうございます」と伝えることができます。丁寧に人と関われる幸せを感じますね。
自分のしたことがすべて自分に返ってくる。美容師は「鏡」のような仕事

――今後の目標は?
今後、スタッフも増やしていく予定なのですが、どんどん店舗やスタッフを増やしていくのではなく、最終的には2店舗を8名~10名くらいのスタッフで回していくような形を目標に考えています。予約もある程度時間に余裕を持って設定して、自分たちが提供できる最大限のパフォーマンスを提供する。それをお客様に求めていただけたら、こんなにうれしいことはないです。
――大久保さんにとって働くこととは?
私は美容師の仕事というのは鏡のようなものだと思っています。たとえば自分がお客様やスタッフに対して誠実に接していたら、お客様もスタッフもそのように返してくれます。返してほしいと思って誠実に接しているわけではないのですが、長年美容師の仕事をしてきて、そういった要素がとても強い仕事だと感じますし、これが美容師の仕事のやりがいだとも思っています。
「ulu.」では「出会ったすべての方々を豊かにする」ということをコンセプトのひとつとして掲げているのですが、常に自分を磨き続け、コンセプトの通り、関わるすべての人を豊かにできるような自分でいたいと思います。
また美容師はお客様の人生というストーリーのなかの、成人式や結婚式などさまざまなライフイベントに携わることができます。こんなに幸せな仕事はほかにないと考えています。私を信頼して任せてくださるお客様には感謝しかありません。
これまでの美容師人生を振り返り、人に恵まれたと話す大久保さん。しかしそれは、大久保さんが多くの人に誠実に接してきた結果ではないかと感じました。今後ますます「ulu.」の周りには多くの人が集まり、魅力的なサロンとして輝き続けるのではないでしょうか。
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