目指すは「日本一忙しい美容師夫婦」。ご縁を大切に、自分たちらしく働きたい【en. 小池康友さん】#2

スタイリッシュな雰囲気を漂わせる「en.(エン)」は、小池康友さん&TOMOMIさん夫妻が切り盛りするサロン。2025年にオープンしたばかりですが、すでに幅広い層のお客様から信頼を獲得し、地域密着型の人気店となっています。

後編では、TOMOMIさんもまじえてお話を伺いました。サロン作りや働き方のこだわり、オープンから数ヶ月経った今感じていること、ふたりが思い描く未来などをご紹介します。

お話を伺ったのは…

en.

代表・美容師 小池康友さん

ハリウッド美容専門学校卒業後、株式会社スタジオビューティーに入社して2006年にスタイリストデビュー。ヘアメイクアップアーティストの川原文洋氏に師事する。2012年に株式会社K.e.y入社。店長を務めたのち、2021年に新店舗であるK.e.y 勝どきの代表に就任。2025年1月、妻で美容師のTOMOMIさんとともに「en.」をオープン。

小池康友さんのInstagram:@en.koikeyasutomo

「街になじまない雰囲気」のサロンで、「街になじむサービス」を提供

理論派の小池さんと感覚派のTOMOMIさんは名コンビ。役割分担は決まっておらず、「気づいた方がやる感じ。お互いに同じマインドでやっているので、成立しているのかも」と小池さん。

――独立を覚悟してからポンポンと進んだと、前編でお聞きしました。あらためて、この場所にした決め手は何だったのでしょう。

小池さん:(TOMOMIさんに向けて)何だったっけ…?

TOMOMIさん:まずは駅から近いこと。明るくて、1階というのもいいなぁと思いました。

小池さん:僕にも妻にも顧客様がついていたし、インターネットで簡単に探せる時代でもあるし、別に路面店じゃなくていいかなと思っていたんですよ。でも、あわよくばという気持ちもあって(笑)。実は予算オーバーしていたんですけど、「物件も縁だな」と思って決めました。

――確かに、縁は大事。サロン名も「en.」ですしね。この名前はどのように決めたのですか。

小池さん:どうやって決めたっけ?

TOMOMIさん:以前から、もし独立して自分のお店を出すなら、エンという名前がいいって言っていたんですよ。

小池さん:そうだっけ…!? エンという名前は、縁、円、宴、entertainment、enjoyという言葉からつけました。「縁」=これまでもこれからも人と人とのつながりを大切にしたい。「円」=欠けたところがない。「宴」=穏やかな空間。「entertainment」=人々を楽しませる。「enjoy」=私たちも楽しむ。そんな思いが込められています。

TOMOMIさん:ヘアスタイルを通して、お客様の価値観や人生に寄り添い、素敵なつながりを楽しむ! それがコンセプトです。

――サロン作りでこだわったところを教えてください。

TOMOMIさん:「街に溶け込まない異質な場所」を意識しました。街に雰囲気を合わせるのではなくて、自分たちの色を大事にしたいなと思ったんです。

小池さん:とはいえ、技術と接客は街になじむものを心がけています。「ここに来たらカッコよくなれる、素敵に変われる」と思えるサロンを目指したいですね。

TOMOMIさん:あとは、今までいろんなサロンで働いてきた経験も踏まえて、お客様にとって居心地がいいこと、自分たちの動線がいいこと、特別感がある空間にすることにこだわりました。

小池さん:狭いからこそ、動線は二人でよく話し合って考えましたね。

TOMOMIさん:小さな子どもやベビーカー、車椅子のお客様も、スッと入って来られる作りもポイントです。

モノトーンは夫婦そろって好きな色。カッコよさがありながら、柔らかい光が入り心地よく過ごせるサロンです。横に長い鏡は、セット面をフレキシブルに使うための選択。

小池さん:配管をすべて埋め込んで床をフラットにして、スロープで段差をなくし、バリアフリーにしました。セット面を幅広くしているので、椅子を少し動かせば家族3人で座れるし、ベビーカーをそのまま入れることもできます。鏡を大きくしたのもそういう理由ですね。本当はサロン名にちなんで丸い鏡にしようと思ったんですけど、そうするとセット面が固定されてしまうので。

――すごくおしゃれですが、実は機能面がすごいんですね! おふたりの働き方のこだわりは?

小池さん:ひとりのお客様をふたりで担当する、くらいの感じでやっています。新規のお客様は基本的に妻が担当するのですが、僕も一緒にカウンセリングしますし、お互いに相談もします。それをあたりまえにしていければと思っています。そうすると、何でもふた通り以上のアイデアが出てくるし、薬剤選定の幅も広がるし、キッズのお客様ならふたりであやしながらカットすることもできます。

――お客様の立場だったら、すごく贅沢で嬉しいことかも。

小池さん:お客様も本当にそう思ってくださっているという実感があります。アシスタントがいないので、僕もまたシャンプーから担当できて初心に帰れますし。僕のお客様のシャンプーを妻がしてくれる場合もあるので、最初から最後までひとりでやるマンツーマンサロンとはまた少し違うんですよ。

TOMOMIさん:シャンプーに入ると、いろんなことに気づけるんです。お客様に必要なケアやアイテムを察知できるようになり、結果的にプラスメニューや物販につながることが多くなりました。

小池さん:もしマンツーマンだったら、1日に受けられるお客様の数は減りますし、それこそキャンセルが出たら売り上げに大きく響きます。でも夫婦ふたりでやっている今は、アシスタントがいた頃以上に生産性が上がっていて、2〜3倍に伸びています。これは想定外だったんですけど。

0歳から90歳まで幅広いお客様をふたりでお迎え

卒入園などを控えた3月はキッズサロン状態だったそう。「キッズのお客様にも、長く通ってもらえたら嬉しいですね」と小池さん。

――ここからはまた小池さんに伺いますね。今、お客様の年齢層はどんな感じですか。

30代の女性をメインに、そこに付随して子どもたちも来てくれていますが、客層はとても幅広いです。最年少は生後4ヶ月のお客様。上は80代〜90代の方もいらっしゃいます。

僕は20代前半の時に幅広いお客様を担当して苦手を克服し、女性も男性も、ショートもロングも、若い子も年配の方も切れるようになりました。自分がやってきたことが、今まさに最大限活かせているように感じます。

――インスタグラムを拝見したのですが、キッズカットのBefore&Afterがたくさんあって印象的でした。

K.e.y 勝どきに移った頃からキッズのお客様がすごく増えたんですよ。インスタ効果でさらに増えて、en.はキッズサロンになりつつあります(笑)。小さい子は短時間で終わらせないと飽きてしまうので、時間との戦いです。待ち時間も極力少なくして、素早くカットして、最後はガチャガチャ(カプセルトイ)をやって終わり。

――子ども用におもちゃも用意しているんですね。

子どものための隠しアイテムというか、賄賂というか(笑)。ジュースとかクレーンゲームとか、そういうエンターテインメント的なものもあっていいかなと。楽しみながらカッコよく、可愛く変身できるので、ママさん同士の口コミでさらにキッズが増えていくという…。

この辺りはファミリー向けマンションが多く、子育て中の若い世代がたくさん住んでいます。子どもが2〜3人いる家庭が多いので、晴海の小学校なんて9クラスもあるんですよ。下町感が残っているので横のつながりもしっかりあって、そういうところも自分たちにとってすごくいい場所だなと思っています。

――ほかに集客の工夫はされていますか。

実は、今のところほとんど何もしていないんです。前サロン時代からのお客様が店を探して来てくださったり、紹介や口コミで新規の方が来てくださったり。ありがたいことに、オープンから3ヶ月(取材時)、お客様がいない時間帯がないという状況です。

新規集客の不安がない分、目の前のお客様に集中できています。あとは経営面の勉強もちゃんとしていきたいですね。新しい技術やサービスを勉強したり、資格や免許を取ったり、新しい挑戦をしたり。毎年何かしらアップデートするようにしないと、衰退してしまうと思うので。

夫婦サロンならではの働き方で、末長く続く店に

ひとりのお客様を「en.」として担当するという考え方を大切にしている小池さん夫妻。「提案力やエンタメ力も含めて、クオリティは今まで以上に上がっていると思います」。

――ご夫婦で働いていらっしゃって、お休みはどのように取っているのですか。

今のところは火曜日を定休日にしていますが、平日も週末もお客様の来店人数は変わらないので、今後は子どもの学校の行事などに合わせて週末も積極的に休みたいと思います。フレキシブルな感じですね。そういう点は今までよりも自由にできているかなと思います。

――お休みにしても何にしても、おふたりで話し合いながら決められるのがいいですね。

普通ならサロンでやる朝礼も、家で済ませているんですよ(笑)。子どもが起きてくるまでの時間に、その日のお客様の情報をふたりで共有したりして、時間の有効活用です。それから出勤して、掃除して、お客様を迎えます。

あとはふたりの共通認識として、「en.のカットのこだわり3ヶ条」を設定しました。それは、①持ちのよさ、②人からほめられる、③簡単に再現できる、という3つ。ふたりでお客様をお迎えしてふたりで接客をすることでたくさんのお客様に喜んでもらって、en.を長く続けていきたいんです。お客様に「またすぐ会いたい」と思ってもらえる美容師夫婦を目指します。

――もしどちらかがお休みの日でも、安心して予約を取れそう。

最終的に狙っているのはそこです。子どもが急に熱を出して店に出られない日もあるかもしれませんが、そうなっても大丈夫なように。

ゆくゆくは、もしご縁があればスタッフを増やしてもいいと思っています。僕たちと同じモチベーション、同じ思いでやってくれたら、アシスタントでもスタイリストでも。コンセプトがぶれてしまうので、店舗を増やすつもりはないんです。もし人が増えるならお店を拡張するとか、お客様がより心地よく感じる空間を作るとか、そちらの方向で考えています。

――ひとつの場所だからこそできることをやってらっしゃるんですね。

そうですね。「日本一忙しい美容師夫婦」を目標に、やっていこうかなと! ただ、その忙しさが「大変そう」に見えないようにしたいです。例えば、人気のテーマパークってすごく混んでいても、スタッフさんたちはゲストに対して大変さを感じさせないですよね。そういうお店作りをしたい。お客様に「忙しい時間に来ちゃってすみません」なんて思わせたら申し訳ないので。

もし子どもが泣いてしまっても、お客様に申し訳ない気持ちになってほしくないんです。泣いても全然大丈夫ですし、もしそれを嫌がる方がいたら別のサロンをおすすめするかも(笑)。

――最後になりますが、小池さんにとって「働く」ということは?

ひとことで表すと「自由」。ルールがないということではなくて、自由に型にとらわれずにで自分の可能性を広げてくれると感じています。

美容師としてやっていることはずっと同じですが、独立してから働き方がガラリと変わった気がします。より自由度が高くストレスフリーな環境で、働くということに対して何でもチャレンジできている。それで、自由という言葉が思い浮かびました。

美容師夫婦サロンでのんびり自分たちのペースでやるのではなく、これまで以上にお互いが尊敬しながら高め合えるサロン作りをしていきたいです。

小池さんが大切にしている3つの思い

1.運が巡ってきた時につかめるように、何ごとも準備万端に。

2.今までの縁も、これからの縁もずっと大事にする。

3.停滞せず新しいことにチャレンジする。

撮影/生駒由美
取材・文/井上菜々子


1
2


Check it

en.
住所:東京都中央区佃2-16-8 HGD佃1階
TEL:03-6826-2837

この記事をシェアする

編集部のおすすめ

関連記事

近くの美容師求人をリジョブで探す

株式会社リジョブでは、美容・リラクゼーション・治療業界に特化した「リジョブ」も運営しております。
転職をご検討中の場合は、以下の地域からぜひ求人をお探しください。

関東
関西
東海
北海道
東北
甲信越・北陸
中国・四国
九州・沖縄