独立後の危機を乗り越えて見えたもの。「学びは移動距離に比例する」という成長の本質「ARUGO」小倉竜也さん
日本各地のさまざまな場所で独自の道を切り拓く人に注目し、その多彩なキャリアを紹介する本企画。今回ご登場いただくのは、茅ヶ崎で「ARUGO」、「IHHI」と2店舗を経営する小倉竜也さんです。
前編では、東京勤務希望だった小倉さんが茅ヶ崎に配属になり、この街の魅力にはまっていった理由をお聞きしました。
後編では、うまくいき過ぎていたからこそ独立を決意したという小倉さんの、その後に迫ります。順調だった開業から5年、スタッフ全員が辞めかけるという大きな危機に直面したといいます。
また、働く場所に対する小倉さんの考え方についても詳しく伺いました。
今回、お話を伺ったのは…
小倉竜也さん
「ARUGO」、「IHHI」オーナー・スタイリスト

高校卒業後、20店舗ほどを構える美容室に就職し、茅ヶ崎の店舗に配属される。働きながら美容師免許を取得し、約10年の経験を経て独立。現在は茅ヶ崎で「ARUGO」、「IHHI」の2店舗を展開している。「また会いたくなる美容師集団」を掲げ、人柄を重視したサロン作りに成功。地域からの支持を集めている。
慣れ親しんだ土地で、縁あっての独立

――独立を決めた理由を教えてください。
正直、それまでの美容師人生が、「うまくいき過ぎている」という感覚があったんです。茅ヶ崎という土地柄もあって人脈が広がりやすく、さらに師匠と呼べる先輩からお客様を引き継がせてもらったこともあり、思っていた以上に早く指名のお客様が増えていきました。
もちろんありがたいことではあるのですが、このままだとどこかで慢心してしまうのではないか、気づかないうちにお客様に対しても横柄になってしまうのではないかという不安があって。
だったら、サロンの場所やメニュー、価格も含めてすべて自分で決め、そのうえで来てくださるお客様に向き合ってみようと思ったんです。そのほうが、より覚悟を持ってお客様にも真摯に仕事ができると考え、30歳で独立を決めました。
――独立を考えたときも、茅ヶ崎以外の選択肢はなかったでしょうか。
実は、近隣のエリアも少し探してはいたんです。住むのは茅ヶ崎がいいと思っていたので、隣駅なども見ていたのですが、ご縁がなくて。結果的に、茅ヶ崎でいい物件に出合えたことが決め手になりました。
ここで築いてきた人脈もありましたし、大きく場所を変えるという選択はあまり考えていませんでした。
順調だったはずの経営に訪れた、5年目の危機

――実際に独立してみていかがでしたか?
これもまた、最初の5年ほどは順調に進んでしまったんです。当時はもう「人生の勝ち組だ」というぐらいに思っていましたね(笑)。
ただ、5年ほど経ったころに採用のミスマッチがいくつか起きてしまって、スタッフ全員が辞めそうになるという大きな危機に直面しました。
――その危機はどのように乗り越えたのでしょうか?
「自分がどうなりたいか」、「会社をどうしたいのか」をきちんと言語化して、ミスマッチを防ぐようにしました。
スタッフへのヒアリングも重ねながら、会社として大切にする価値観を「愛がある人」としました。
チームワークを大切にし、自分だけでなく周りに「ギブ」ができること。そんな人と一緒に働きたいと示したんです。
今は採用の場でも、2時間ほどかけてこの価値観と、うちの会社でできること、できないことをしっかりと伝えています。そのうえで採用をしているので、ミスマッチはほとんど起こらなくなり、結果的に辞めてしまう人も減っていきました。ありがたいことに長く勤めているスタッフが増えましたね。
新たな人や土地が、成長を加速させる

――以前は東京に対しての劣等感もあったとのことでしたが、茅ヶ崎で長く働いた今、東京をどのように見ていますか?
今は特別な思いはないかもしれません。たまに経営の勉強会などで東京に行くこともあるのですが、人の多さやスピード感に疲れてしまうところがあって。
東京から帰ってくるたびに、自然があって過ごしやすい茅ヶ崎という土地で暮らし、働くほうが僕には合っているということを実感します。
――今後の展望について教えてください。
店舗数を増やしてマウントを取りたいという気持ちがゼロではありませんが(笑)、まずは今ある2店舗をしっかり安定させていくことが優先だと考えています。
スタッフが成長して席が足りなくなれば、そのときは出店も考えますが、それはあくまでスタッフを応援するための選択です。
今いるスタッフが働きやすく、幸せを感じられる状態をどこまで高められるか。その最大値を目指すことの方が、僕にとっては大切な目標ですね。
僕自身は今の生活に満足しています。ストレスがないし、生活ができて、楽しくて、スタッフにも恵まれて。家族も円満……?ですし(笑)。孫を見るおじいちゃんのような気持ちで、スタッフが幸せになるための環境を作っていきたいと思っています。
――茅ヶ崎で挑戦したいことはありますか?
個人的な夢として、飲食店を出したいと思っています。僕の両親は地元で50年続く中華料理屋を営んでいて、その大好きな味を茅ヶ崎で再現したいんです。お世話になっているスタッフやお客様、仲間が集まれる場所を作れたら最高ですね。
――最後に働く場所で悩む美容学生や美容師に、アドバイスをお願いします。
地元に貢献したいという人は別ですが、成長したいと思うならば、一度は外に出るべきだと思っています。
キングコングの西野亮廣さんが「学びは移動距離に比例する」と言っているのですが、僕も本当にその通りだと感じています。
能力は、誰かが勝手に引き上げてくれるものではありません。新しい環境に飛び込んだり、さまざまな人と出会ったりすることで、自分を知ることができるし、刺激もうける。
だから今いる場所を飛び出すことは、とても重要だと思います。
もうひとつ大切なのは、「この人のようになりたい」と思える、エネルギーのある人の近くに身を置くことです。
――それはなぜですか?
そういう人が、自分のリミッターを外してくれるからです。
以前、こんな話を聞いたことがあって。ノミという虫がいますよね。ノミは本来、人間のサイズに換算すると富士山を飛び越えられるほどのジャンプ力を持っているそうなんです。ただ、コップのなかに閉じ込められた状態が続くと、外に出してもコップの高さまでしか跳べなくなってしまう。
でも、そのノミが本来の力を取り戻す方法がひとつだけあって、それが高く跳ぶノミをそばに置くことだそうです。
人も同じで、知らないうちに自分で限界を決めてしまうものだと思います。だからこそ、エネルギーがあって前向きに挑戦している人の近くにいることが大事なんです。
僕は美容学生に講義をする機会もあるのですが、そのときにはよくこの話をして、「それは僕だよ」と伝えています(笑)。
自分に合う場所を探すことももちろん大事ですが、結局は誰と働くかが重要だと僕は思っています。自分の限界を決めずに、ぜひいろんな場所や人に出会ってみてください。
取材を通して印象的だったのは、「今の生活に満足している」という小倉さんの言葉でした。
それは現状に甘んじているという意味ではありません。自分に合った場所で人との関係性を大切にしながら経験を積んだ結果、生まれた余裕であり、茅ヶ崎の穏やかな空気感が育んだ価値観の表れなのではないかと感じました。
そしてその満足の先には、お客様やスタッフ、周囲の人たちをもっと幸せにしたいという想いが連なっています。
働く場所、そこで出会う人、そして自ら選ぶ環境。そのひとつひとつが、仕事のあり方や成長のかたちを大きく変えていくのかもしれません。
Check it
ARUGO
住所:神奈川県茅ヶ崎市共恵1-3-14 ライオンズプラザ茅ヶ崎駅前103
TEL:0467-40-4048
%20(1).jpg?q=1)

.png?q=1)
.jpg?q=1)
%20(34).jpg?q=1)
%20(21).jpg?q=1)