正社員雇用は経営者としての信念。スタッフの「今」だけでなく「未来」も守る「Belu」鈴木啓さん
社会保険や休暇制度、固定給による安定を得られる一方で、「業務委託ほどは稼げない」「頑張っても収入が伸びにくい」と思われがちな正社員という働き方。本企画では、そのリアルに迫ります。
今回お話を伺ったのは、東京都北区でヘアサロン「Belu」を3店舗展開する代表、鈴木啓さん。鈴木さんが挑んでいるのは、社会保険や完全週休2日制、保証給28万円を整えながら、1人ひとりの成果も給与に反映される正社員サロンの経営です。
「業務委託サロンを経営するのは、僕にとって『負け』のようなもの。経営者として雇用の責任を引き受け、正社員という環境でスタッフを守ることにこだわりたい」と鈴木さん。経営側の負担が大きくても、なぜ正社員雇用を貫くのか。「Belu」の給与や働き方を数字でひも解きながら、年齢を重ねても美容師を続けられる環境づくりへの思いを伺いました。
今回、お話を伺ったのは…
鈴木啓さん
株式会社Belu代表

東京都北区でヘアサロン3店舗とアイラッシュサロン1店舗を展開。マンツーマン施術を軸に、社会保険完備や完全週休2日制、保証給と歩合を組み合わせた給与制度を整え、正社員でも安定と収入を両立できる環境づくりに取り組む。
「手取りの罠」に騙されるな。正社員が65歳以降も勝つ理由

――業務委託サロンが増えるなか、正社員雇用にこだわる理由は?
以前、業務委託の方に働いてもらったこともありますが、現在は正社員雇用に一本化しています。独立した当初から、スタッフが安心して働ける保障と、安定した給与を用意したいという思いがあり、そのためには正社員雇用がふさわしいと考えたからです。
僕が美容師として働き始めた頃は、正社員であっても社会保険がなく、休みは月6日程度。最低保証も低く、歩合で収入を増やそうとすると、休みを削って働かなければならないような環境でした。そこから脱却したサロンをどうつくるかは、僕にとって大きな挑戦でした。
またお客様にとって居心地のよい空間をつくることと、スタッフの働きやすさを考えると、スタッフ同士がチームとして助け合えることが欠かせません。個人プレーになりやすい業務委託よりも、同じ方向を向いてチームをつくれる正社員雇用の方が「Belu」には合っていると考えています。
経営者にとっては、業務委託の方が負担は軽いと思います。ただ、雇用という責任を持たずに「チーム」や「アットホームなサロン」を掲げることには、僕自身が矛盾を感じます。スタッフと信頼関係を築き、守るべきものを守るためにも、正社員雇用を続けたいと思っています。
――一方で、働く人にとっては、業務委託の方が手取りが増えるという考え方もあります。
確かに、振込額だけを見れば、業務委託の方が多く見えることはあります。ただ、住民税や国民健康保険、国民年金を自分で支払うことまで含めると、単純には比較できません。
正社員であれば健康保険や厚生年金に加入でき、保険料を会社と分担できますし、厚生年金は、将来受け取る年金にも上乗せされます。65歳以降、年金を生活の土台にして無理のない範囲で働くのか、生活費の大部分を稼ぐために働き続けなければならないのか。その差は大きいと思っています。
今月の手取りだけでなく、40代、50代、その先まで考えて選んでほしいです。「Belu」では副業も認めています。収入を増やしたいのであれば、社会保険のある環境を手放すのではなく、正社員としての安心を持ちながら別の収入をつくるという選択肢も用意しています。
――正社員スタイリストの平均月収と最高月収を教えてください。
平均月収は約35万円、最高月収は約50万円です。平均的な勤務日数は月21~22日で1日8時間に残業をつけた9.5時間、担当するお客様は月約100名で1日の担当数は4~5名。客単価は約1万円で、技術売上は月90万~100万円程度です。
最高月収約50万円のスタッフは、勤務日数を大幅に増やしているわけではありません。客単価や施術スピードに違いがあり、技術売上は月120万~130万円程度です。店販手当は売上の10%、店長には店舗売上の1%を支給するなど、役職に応じた手当も設けています。
新規客は全体の約10%ですが、既存客で予約枠が埋まっているためで、スタッフが増えれば新規枠を広げられます。
――歩合率の仕組みについて教えてください。
「Belu」では保証給28万円と、歩合給35%で算出した報酬を比較し、高い方を支給しています。また再来率と売上に応じて歩合率も変わっていきます。たとえば、技術売上100万円、再来率90%の場合は、月収44万6,000円です。
一時的に多くのお客様を担当するだけでなく、信頼関係を築き、繰り返し来ていただける美容師を評価したいという思いから、再来率を給与に反映しています。
――客単価約1万円、マンツーマン制で、保証給28万円を実現できる理由は何でしょうか。
アシスタントを置かず、スタイリストだけで運営していることが大きいです。そのうえで、現在働いているスタッフの技術力と高い再来率に支えられています。
掛け持ち施術をしないため、お客様をお待たせすることがなく、落ち着いて過ごしていただけます。髪質改善やトリートメント、ヘッドスパなどのケアメニューも組み合わせることで、客単価を維持しています。
また、僕自身の役員報酬を抑え、できる限りスタッフへ還元しています。正社員の待遇を守ることを、経営上の優先事項にしています。
客数を増やさず月収アップ。「高再来率」を評価する仕組み
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――高い再来率を支えているものは何でしょうか。
技術力に加えて、居心地のよさです。保証給があるため、スタッフ同士でお客様や売上を奪い合う必要がなく、お互いを尊重する空気が生まれます。
マンツーマンで落ち着いて過ごせる環境や、ケアメニュー、ヘッドスパの提案も、30代、40代のお客様の再来につながっています。
――年齢を重ねても売上を維持し、美容師を続けるには何が必要でしょうか。
早い段階から同じ店舗で働き、生涯顧客をつくることが大切です。長く担当して信頼関係を築けば、勤務時間が短くなっても、お客様が予約時間を合わせてくださることがあります。
「Belu」には2025年10月に入社した50代半ばのスタイリストがおり、2026年5月に技術売上約80万円、7月にも約75万円を上げました。今後、体力に合わせて時短勤務へ移行しても売上を大きく落とさない方法を、店長を中心に考えています。年齢によって美容師の道を諦めずに済む環境をつくりたいというのが、僕の大切にしていることのひとつです。
「結婚・出産で諦めない」復帰率と生涯雇用を支えるサロンの本音

――休日の取り方について教えてください。
完全週休2日制のシフト勤務です。土日に休むこともできますし、有休と公休を組み合わせて長期休暇を取ることもできます。
実際に、推し活のためにフランスへ行ったスタッフもいます。夏季休暇は決まった形では設けておらず、有休などを組み合わせる形で長くお休みをとることが可能です。年末年始には休業日があります。
――子育てとの両立や、育休後の復帰について教えてください。
制度を一律に決めるのではなく、本人の生活やこれまでの勤務状況を踏まえて個別に相談しています。現在、子育て中のスタッフは月10~11日休み、16時30分までの時短勤務ですが、長く働き、信頼関係を築いてきたスタッフですので、保証給を大きく下げていません。
このスタッフは第1子出産時にBeluで育休を取得し、一度は自宅近くのサロンへ転職しましたが、第2子の育休明けに再入社しました。戻りたいと思ってもらえたことはうれしかったですね。ほかのスタッフとも、ライフステージに合わせて長く働ける形を一緒に考えていきたいと考えています。
取材全体を通して伝わってきたのは、正社員雇用を単なる制度ではなく、経営者が引き受けるべき責任として捉える、鈴木さんの強い信念です。
社会保険や保証給で生活の土台を整えながら、技術売上や再来率に応じて成果を給与へ反映する。さらに、年齢や子育てに応じて働き方を調整し、その先のキャリアまで支えていく。経営側の負担が大きくても、スタッフの「今」と「未来」を守る正社員サロンを貫く。その挑戦が、年齢やライフステージの変化に合わせながら、美容師を長く続けられる環境につながっています。
安定も収入も諦めず、美容師として長く活躍したい方は、「Belu」への応募をぜひ検討してみてください!
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hair design Belu
住所:東京都北区赤羽西1-39-4
TEL:03-5948-4225
Belu 東十条店
住所:東京都北区東十条4-6-22 ベルドミール102
TEL:03-6903-2658

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