「今動くべき」という直感を信じて進んだ、美容師人生の分岐点【Encë 金谷橋采佳さん】#1
銀座を旗艦店として、東京・千葉・神奈川を中心に展開する人気ヘアサロン「FILMS(フィルムス)」。そんなFILMSグループの新ブランドとして2025年4月にオープンした「Encë(エンス)」で、代表を務めているのが金谷橋采佳さんです。
金谷橋さんは抜け感のある似合わせヘアを得意とし、お客様やメディアからの指名が途切れない人気美容師。前編では、アシスタント時代のお話やFILMSで経験したターニングポイント、Encë構想のきっかけなどをお聞きします。
お話を伺ったのは…
Encë
代表・美容師 金谷橋采佳さん
美容専門学校を卒業後、都内2店舗で勤務。2017年、オープニングスタッフとしてFILMSに入社し、翌年スタイリストデビュー。銀座店の店長を務めたあと、2024年からFILMSグループマネージャーを任される。2025年4月、FILMSグループ新ブランド「Encë」の代表に就任。
KANATABASHI’S PROFILE
お名前 |
金谷橋采佳 |
|---|---|
出身地 |
山形県 |
年齢 |
33歳(2025年7月時点) |
出身学校 |
窪田理容美容専門学校 |
プライベートの過ごし方 |
サウナ、旅行、友人との食事 |
仕事道具へのこだわりがあれば |
美容師1年目から使っているコームを大切にしています |
下積み時代にタイプの異なる2サロンを経験

――美容師を目指したきっかけを教えてください。
小さい頃から母と一緒に美容院に行くのが好きで、いつもワクワクしていた思い出があります。中学生の頃にはさらに美容に興味が出て、雑誌を買い集めたり、自分でメイクをし始めたり。そんな子供時代を経て、決定打は高校の文化祭で友達のヘアセットをさせてもらったとき。それまでは大学進学を考えていたのですが、美容専門学校に路線変更しました。
――美容専門学校時代はどのように過ごしましたか。
山形から上京してきたので寮生活で、真面目に学校に通っていましたね。文化祭も思い出深いです。技術者もモデルも学生が担当してヘアショーやコンテストをしたのですが、そのときならではの感性や発想で作り上げたものが結構斬新で、楽しかったんです。固定観念が若干出てきてしまっている今、もしそういう文化祭を見に行ったら、刺激をもらえて勉強になる気がします。
――就活時は、どのような視点でサロンを探しましたか。
ある程度カリキュラムがしっかりしていて、お客様も安定していて、尚且つ地域に根づいている美容院で働きたいと思っていました。何社か検討して自由が丘のサロンに入社し、2年ほどお世話になりました。出勤日は朝練と夜練にいそしみ、休日は街へ出て練習モデルさんを探す。その繰り返しの日々でしたね。
――そのあと他のサロンに移られたそうですが、理由は何だったのでしょうか。
しばらく働くうちに、よりトレンドを押さえたサロンで学びたいという気持ちが芽生えたからです。雑誌やヘアカタログなどで惹かれるスタイルを作っているサロンを探していたら、ちょうど募集をかけているところがあり、半ば勢いで転職しました。
――新たな店ではまたイチからのスタートですよね。
最初の店とは客層も少し違いましたし、新しい人間関係に慣れなければいけないし、大変でしたね。でも「ここで頑張らないとダメだ」という意地があり、アシスタントとして奮闘して、3年半くらいでジュニアスタイリストデビューしました。
――そのサロンではどんなことを学べましたか。
小さめのサロンでしたが、すごく上手なスタイリストさんたちがいらっしゃったので、先輩方の撮影の仕事に同行したり、他サロンと合同で行なっていた撮影会やセミナーに参加させてもらったりしました。
サロンワークや接客面でも多くのことを教えていただき、そこで学んだ「お客様ファースト」の精神は今でも大切にしています。
FILMS入社が一番のターニングポイント

――どんな経緯でFILMSに入社することになったのですか。
トレンドを発信する側にいたいという思いが強くなった頃、ちょうどFILMSオープンの話が出たんです。「今動くべきじゃないか」という再びの直感に従い、オープニングスタッフとして入社しました。
その時は25歳くらいで、前の店でまもなくスタイリストになるタイミングでしたが、迷いはまったくなかったですね。本来はわりと悩むタイプのはずなんですけど、我ながらあのときは決断が早かった。勇気を出してよかったと思っています。
――もしや、またアシスタントからスタート?
はい、3度目のアシスタントです(笑)。2017年の9月にオープンで、翌年の2月にはスタイリストデビューしました。
――オープニングから関われたことについて、どう感じていますか。
私にとって一番のターニングポイントだったと思います。代表たちの思いも直に感じることができたし、オープニングメンバーみんなの気合と熱量がすごかったので、そこに自分もいられることが嬉しかったです。大変さよりもワクワク感と楽しさが勝っていました。
目の前のことに一生懸命なのはもちろんですが、自分の将来やFILMSの展望をしっかり見据えながら仕事ができていたので、参加できて本当によかったです。
――先ほどトレンドを発信する側にいたいとお話しされていましたが、撮影の仕事もすぐにできたのでしょうか。
そうですね。当時は若林(FILMS代表取締役の若林紀元さん)が撮影をたくさんやっていたので、私はメイク担当としてどこにでもついて行っていました。撮影に行くことで、自分やFILMSを知ってもらうきっかけにもなるし、そこから私自身が仕事をもらえたときは心が震えましたね。若林にはとても感謝しています。
――ご自身がヘアを手がけた初撮影はいつ頃?
トップスタイリストになった頃に、『ar』(主婦と生活社)という雑誌の企画で撮影の機会をいただきました。初めてなのですごく緊張したのと、スタッフの髪やウィッグでたくさん練習したのを覚えています。
作品はミディアムくらいのレイヤーヘアで、人気の高かった「ゆるふわ」をナチュラルに崩したようなスタイルでした。今もそれを可愛いと思えるかどうかちょっと不安ですけど、その当時は一生懸命頑張って作りましたし、順調に撮影できたと思います。
責任あるポジションに就き、視野が広がる

――銀座店の店長を任されたときのことを教えてください。
初めは不安がありましたが、みんな協力してくれましたし、FILMSの代表たちも本当に親身になってくれました。
責任あるポジションについたことで目線も変わったと思います。自分の売上だけでなくスタッフの売上のことも考えるようになりましたし、接客面や技術面においても、それまでとは気になるポイントが違うというか。
――2024年にはFILMSグループのマネージャーに。さらに管轄範囲が広がりましたよね。
店長は店舗の運営をしっかり見る役割でしたが、マネージャーは会社全体のマネージメントに関わります。私が就任したときは女性スタッフがかなり多くなってきたタイミングだったので、どちらかというと女性スタッフのサポートと、クリエイティブチームや撮影チームを管轄するという感じでした。
1 on 1ミーティングで女性スタッフの意見を吸い上げたり、悩みや今後どういう働き方をしたいかを聞いたりして、それを元に福利厚生を考えて、会社に対して提言する。そういったことを積み重ねながら、実はEncëの構想も早い段階で話し合い始めていたんです。急に新店を任されるのではなく、マネージャーという全体を見るポジションで采配を経験できたのは大きかったですね。
――Encë出店の計画が持ち上がったのは、どんなきっかけから?
代表の若林と設楽(FILMS代表取締役の設楽雅貴さん)が、「何かやりたいことはない?」と聞いてくれて、自分に何ができるか考え始めたのがそもそもの始まりです。私なりの思いや理由があってEncëの構想を提案して、代表たちとともにブラッシュアップして、今に至るという感じですね。
――どんな思いや理由があったのでしょうか。
まずは、FIMSのオープニングから携わって6〜7年ほど経ち、自分がさらにステップアップしたいと思い始めていたこと。そして、お客様が増えてお待たせしてしまうこともあり、それが申し訳なくもあったし、もっとお客様と向き合う時間を大事にしたいと思ったこと。
さらに、女性スタッフが増えていく中で、ちょっと働き方を変えたいと思う子たちが出てくるかもしれないと感じていました。もちろん私自身も、20代の頃とずっと同じ働き方は無理だなと思いますし。だから働き方の可能性を広げたいというのもひとつの理由でした。
お客様も私もスタッフも、年齢を重ねていくと悩みも変わってきます。お金や時間の使い方も、考え方も変化します。その当時のいろいろな目線…例えば人事目線、お客様目線、スタッフ目線を集約したときに、「新しいサロンを立ち上げたい!」と思ったんです。
銀座にオープンしたEncëについて、詳しくは後編でご紹介します。サロンのコンセプトやこだわり、今後の目標や展望をお聞きしているので、ぜひご覧ください!
撮影/高嶋佳代
取材・文/井上菜々子
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Encë
住所:東京都中央区銀座5-14-17 銀座USBビル6F
TEL:03-6264-3733
Instagram:@ence_hair
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