お客様はもちろん、女性スタッフの働き方にも寄り添うサロンが理想【Encë　金谷橋采佳さん】#2

2025年春、女性特化サロンとして銀座にオープンした「Encë（エンス）」。代表を務める金谷橋采佳さんをはじめ、ハイキャリアの女性スタイリストが集結し、クオリティの高い技術と多彩なメニューでお客様を迎えています。

後編では、そんなEncëの魅力と、金谷橋さんがサロン作りや美容師の仕事にかける思いなどをインタビューしました。

お話を伺ったのは…

Encë

代表・美容師　金谷橋采佳さん

美容専門学校を卒業後、都内2店舗で勤務。2017年、オープニングスタッフとしてFILMSに入社し、翌年スタイリストデビュー。銀座店の店長を務めたあと、2024年からFILMSグループマネージャーを任される。2025年4月、FILMSグループ新ブランド「Encë」の代表に就任。

Instagram：@ayaka_kanayabashi

充実したメニューとカウンセリングにこだわる上質サロン

――Encëというサロン名は、どなたがつけたのですか。

私とオープニングスタッフが意見を出し合って決めました。みんなで候補を挙げて、ボツにして、また考えて…を繰り返してたどりついた名前です。頭のEを大文字にするか小文字にするかといった細かいところまで悩みましたね。

「En」は「ご縁」から、「ce」は月の光を意味する「Luce」から取った造語なんです。人とのつながりを大切にして、お客様の日常や女性のライフスタイルを優しい光でそっと照らす存在になれたら。そんな思いが込められています。

――銀座という場所を選んだのはなぜ？

FILMSよりも少しハイクラスなイメージで、上質な空間でゆっくり過ごしながら、高い技術とケアメニューを堪能していただきたかったので、銀座がぴったりだなと思いました。

――上質な空間作りのこだわりを教えてください。

席の間隔を広めに取ってゆったりとした空間を作り、なるべくお客様同士で目が合わないような配置にして、リラックスできるようにしています。全体的に白を基調としているのですが、壁は真っ白ではないんです。髪の色はきれいに見える照明でありながら、壁に反射した光は柔らかく感じられると思います。

ご希望に応じて、個室で施術をすることもできます。ベビーカーも入れる広さなのでお子様連れの方も安心できますし、アイブロウの施術をされる方にも好評です。

――メニューも充実していますね。

ヘッドスパやアイブロウ、耳ツボジュエリーといった、バタバタした空間ではなかなかできないメニューを増やしました。カットやカラーのついでに、何かプラスアルファできたらいいんじゃないかなと思って。FILMSでは難しかったのですが、Encëの予約の取り方ならできると思い、提案させてもらったんです。

――耳ツボジュエリー、最近よく耳にします。

スタッフがディプロマを取り、メニューとして導入しました。定期的に講習会に参加したり勉強したりして、技術や知識をブラッシュアップしています。お客様の反応もわりといいんですよ。

――接客やサービス面で力を入れていることは？

予約を調節して、お客様の待ち時間や席移動がないように心がけています。土日は少し難しい部分もありますが、やはりサロンでゆったり過ごしていただきたいので。

あとはカウンセリングにしっかり時間をかけるようにしています。新規の方の場合はサロンでの過ごし方やお悩みを書いていただく事前シートがあるので、それを元により深くお話をお聞きします。

――カウンセリングを重視するのはなぜですか。

お客様の理想と実際の仕上がりのギャップをできるだけ少なくするため、そして翌日からの自宅での再現性を高めるためには、やはりカウンセリングがとても大切。要望やお悩み、ライフスタイル、普段どんなケアやスタイリングをしているかなど、カウンセリングから得られる情報を施術に活かすことで、お客様の満足度につながります。

女性が安心できる場と、働きやすい環境作りで差別化

――女性特化のサロンにするというのは、なかなか思い切ったことだなと思ったのですが。

正直、最初は決め過ぎたくないと思っていたのですが、女性だけの空間って特別感がありますよね。ピラティスとかヨガのスタジオもそうですけど、女性限定にすることで安心して過ごせる空間にできるかなと。女性美容師に担当してほしいという女性のお客様も少なからずいらっしゃいますし。

――働くスタッフもみなさん女性ですよね。女性が働きやすい環境作りについて、どのようにお考えですか。

女性は特に、ライフスタイルが変わるタイミングがいくつかありますよね。加えて、自分がどうしたいのかという考え方も本当に一人ひとり違います。

FILMSの強みは、「バリバリ働きたい」「メディアでも活躍したい」という思いに応えられるところ。でもEccëはベクトルが違って、今後はフレックス制度を導入予定ですし、女性の健康支援を強化していくつもりです。育休明けのスタッフが一人いるのですが、出産後の働き方をバックアップできるような環境を作ることもすごく大事だなと思っています。

――前編でお聞きした、「働き方の可能性を広げたい」という思いを実現しようとなさっているんですね。

仕事とプライベートの割合をどうしたいのか、当事者がまず自分自身と向き合うことが大切ですが、会社としてはそこの選択肢を増やしてあげたいんです。そして、一人ひとりが楽しく働きながら、ライフスタイルや体の変化に応じて働き方を選べる、そんな仕組みを構築したいと思っています。

そのためには、何でも話しやすい環境を作ってスタッフの声を掬いあげ、問題を改善したり要望を実現したりできるように。今まさに力を入れているところです。

――今現在、金谷橋さん自身はどういうバランスで働くのが理想ですか。

割合としてはほぼ仕事という感じです。もちろん友達や家族と過ごす時間が大事ですし、旅行も好きですが、今は仕事とプライベートの境界がいい意味であまりないかもしれないですね。毎日充実していて、楽しく頑張ることができています。

――本当にお忙しいと思いますが、頭や体を回復させる秘訣はありますか。

サウナです！昨日、1ヶ月ぶりに行けました。大好きな美容に費やす時間も私にとっては大事で、ネイルのメンテナンスをするだけでも気分がスッキリします。可愛いものを見たり、スタッフと一緒に食事に行ったり、そういうことでもリフレッシュできますね。以前はストレスを溜め込んでしまうこともあったのですが、いつの間にか発散がうまくなったようです。

お客様とスタッフの満足度をさらに高めたい！

――オープンして約1ヶ月（取材時）、お客様の反応はいかがですか。

「ゆったりとした可愛い空間で、リラックスして過ごせて嬉しい」というお声をいただいています。集客サイトやSNSの口コミでも、空間のことからヘアの仕上がりのことまで喜んでいただけることが多いので、そういう部分はしっかり継続しつつ、さらによいものを提供できるように努めたいです。

――美容師としての目標はありますか。

今、本当にお客様一人ひとりと向き合えているなということを実感していて、お互いにいい時間を過ごせていると思います。スタッフもそう言ってくれるので嬉しいです。だからこそ、オープンから間もない今の熱量をこれからも崩さずに、接客面や技術面でさらにブラッシュアップして、お客様に寄り添っていくのが目標です。

あとはEncëをもっと多くの人に知ってもらいたいですね。女性スタッフが揃っていることや、トータルビューティーサロンのようにメニューが充実していること、ゆとりある空間の使い方など、他と差別化できている部分をどんどん発信していかなきゃと思います。

――では、Encëとしての目標や今後の展望は？

サロンとしての大きな目標は、お客様の満足度もスタッフの満足度ももっと上げていくことです。

展望としては、今後スタッフが増えていけば、いずれ店舗を増やしたいなと思っています。今はまだわかりませんが、例えば全室個室にするとか、何かに特化したサロンもありかなとか。もう少しお客様が安定して、スタッフがより楽しく働けるようになってきたら…ですね。

――最後に、金谷橋さんにとって「働く」ということは？

新しいことに挑戦したり、立ち返ったりしながら、自分がアップデートされていくことだと思います。美容師だからこそ、サロンに来たらスイッチがONになって気合が入ったり、違う自分に出会える気がしたり。そんな風に思えるのも楽しいです。

今は「生きる」ということそのものみたいな感じもしているのですが、1年後に同じことを聞かれたら、答えは違うかもしれません。

美容師として大切にしている3ヶ条

1.お客様ファーストを忘れないこと

2.トレンドに敏感であること

3.いつも笑顔＆ポジティブでいること

撮影／高嶋佳代
取材・文／井上菜々子