椅子やシャンプー台まで細かくチェック。SNSの写真からも「働きやすいサロン」かは判断できる「GRAFF hair銀座店」叶茉実さん

銀座、蔵前、日本橋、梅田と4店舗を展開する美容室「GRAFF hair」。ハンサムショートで人気を集める今泉孝記さんがオーナーを務めるサロンで、業界トップクラスの技術を誇ります。

その銀座店に中途採用で入社し、現在は入社3年目となるのがスタイリストの叶茉実さんです。

前編では叶さんに美容師になったきっかけや就職活動について伺いました。

後編では叶さんの転職活動について伺います。転職するなら早めがいいと、さまざまなサロンに足を運んだり、SNSをチェックしていたという叶さん。就職活動をした際はブライダルに携われることを第一に考えていた叶さんですが、転職活動の際にもっとも重視したポイントが「長く働けるサロン」だったといいます。

叶さんいわく、SNSの写真から長く働けるサロンかどうかはある程度判断することができるそうです。

今回、お話を伺ったのは…

「GRAFF hair銀座店」／スタイリスト

叶茉実さん

美容専門学校卒業後の2022年に大手サロンの銀座店に入社。もっと成長できる環境に身を置きたいという思いから、2022年12月に「GRAFF hair」に転職する。2025年4月にはスタイリストデビューをはたし、これまで店舗にはメニューとして存在していなかった着付けやヘアセットをメニュー化することで、集客にも成功している。

インスタグラム

応募の基準は「長く働けるか」。徹底的な情報収集で理想の環境へ

――転職活動はどのように進めましたか。

1社目のサロンに就職したあとも、そのサロンで長く働くイメージがつかめなかったため、常に自分に合う美容室を探している状態でした。集客サイトを見たり、実際にお客として足を運んだり。気になるお店があればインスタグラムなどのSNSもよく見ていましたね。

このとき自分が重視していたサロンの基準が、銀座にあること、そして長く働けるということでした。長く働けるサロンかどうかは、SNSの写真に写っているものから判断できると思い、少し怖いかもしれませんがその美容師さんの背後にどんなものが写っているかまで、見るようにしていました。

――そうなんですか（笑）！ 具体的にはどういった部分を見ていたのですか？

たとえば「GRAFF hair」の写真を見ていたときには、スタッフがカット椅子に座って髪を切っているところを見て、プラスのポイントになりました。椅子に座りながらカットができると体への負担も減りますし、単純に髪を切りやすくなります。

またシャンプー台が写っているときも、その種類を確認するようにしていました。「GRAFF hair」は美容師も座ってシャンプーができる台を導入しているので、体への負担が少ないのですが、一方でサイド式という美容師さんが横から手を伸ばしてシャンプーをする台は腰が痛くなりやすくて。

私のなかでは体への負担を考えた設備は、従業員のことを考えてくれている証のようなものだと思っていたので、そういった点にとくに注意しながらサロン探しを続けました。

――「GRAFF hair」を最初に訪れたときは、どのようなことを感じましたか。

最初に訪れたのがサロン見学のときだったのですが、そのときに店内にいたスタッフが、ほぼ全員で対応をしてくれたことが印象的でした。フレンドリーな感じがしましたし、スタッフ同士の雰囲気もよく、仲がよさそうに感じて。

サロン見学に行くとどのサロンでも、スタッフの仲がよい雰囲気は出してくるのですが、私は最初に働いていたサロンがあまり人間関係が良好とはいえない環境だったので、そういった姿を見ていても「本当かな？」と疑ってしまう部分がありました。しかしこのサロンは、直感的にうわべだけではない、本当に仲がよいサロンなんだと感じたんです。

その後、面接に進み、代表の今泉からこのサロンはスタッフが美容師の仕事に集中できるよう、ペーパーレス化などに取り組んでいると聞き、技術力を向上させたかった自分には合っていると感じました。無事に内定が決まり、2022年の12月から働き始めました。

メニューがないなら、自分で生み出すこともできる

――入社してからはどんなことを感じましたか。

さまざまな点で働きやすさを感じました。先ほどもお話ししたように、「GRAFF」では美容師が美容師としての仕事に集中できるようにするため、無駄を省いています。レジがキャッシュレス対応でレジ締め作業の必要がなかったり、電子カルテを活用してペーパーレスになっていたりと工夫されているんです。

またこのサロンでは基本的にお客様ひとりに対して、スタッフがひとり入る形で予約枠が設定されているため、余裕を持って接客ができると感じました。営業時間が伸びることもないので、営業後に練習をする時間を確保できる点もありがたいなと。

――スタイリストデビューまでは順調でしたか？

入社から2年半ほどでスタイリストデビューをしたので、ほかのサロンに比べるとそこまで長い期間ではなかったとは思いますが、私としては悔しい思いをしたところがたくさんあり、苦戦をしたと思っています。

たとえば縮毛矯正の練習には半年ほど毎日のように取り組んでいたのですが、一向にうまくいかず、悔しかったですね。また「GRAFF hair」ではカットテストも毎月行われるのですが、なかなか順調ではありませんでした。

――それでもモチベーションが下がらなかった理由は？

早くデビューをしたい気持ちが強かったからです。私はコツコツと練習に打ち込めるタイプなので、できないことができるようになるまで、ひたすら練習を続けていましたね。

――ちなみに元々はブライダル業界で働きたい思いがあったとのことですが、「GRAFF hair」はブライダル関連のサロンではないですよね。そこはどのように気持ちを整理したのですか。

心のなかにはいつかブライダルに進みたい気持ちはもちろんあったのですが、将来のことを考えると、まずは自分が働きやすい環境のなかで技術を身に付けられるよう長く働けることが第一優先だと思ったんです。技術さえ身についていれば、いくらでも選択肢は広がっていきますから。

またこれは入社後に感じたことですが、「GRAFF hair」のようにスタッフのやりたいことを叶えてくれるサロンであれば、たとえ入社した時点で自分がやりたいことがなくても、あとから作りだすこともできます。私は面接のときから、いつか着付けのメニューを作りたいと代表に伝えていたところ、実際に生み出すことができました。

ほかにもヘアセットのメニューも元々はなかったのですが、先輩に「これから美容師として活躍したいなら、自分にしかない武器を作ったほうがいい」とアドバイスを受けたときに、ヘアセットが得意だったので、これもメニューとして代表に提案して。代表の柔軟な姿勢には感謝しかありません。

美容師として成功するのに必要なのは「素直さ」

――これから美容師を目指す人へのアドバイスをお願いします。

私も新卒社員としてサロンに入社した経験がありますし、今は後輩を指導する立場にもなって改めて思うのが、学生時代も会社に入ってからも、素直でいることがとても重要だということです。単純に技術力も上がると思いますし、素直で明るい美容師さんの方がお客様からも好かれるはずです。また先輩にも可愛がってもらえるのではないかと。そういった環境下で働く方が楽しいと思いますし、それが美容師としての成功にもつながっていくのではないでしょうか。

――美容師として働いていても、自分にあった環境ではないからと、美容師を辞めようと考える人も少なくないと思います。転職に成功した叶さんがアドバイスをするとしたら？

大きい会社に属していたり、長く働いていたりすると会社を辞めることが怖いと感じるかもしれませんが、私は体験してみてそんなに怖いことではなかったと思いますし、行動しなければ何も始まらないと思います。

私も勇気を出して、今の環境をつかむことができてとても満足していますし、転職したことで美容師の未来が大きく変化したのではないかと思っています。もし今の環境に疑問があるのであれば、ぜひ一歩を踏み出してみてください。

叶さんが自分に合った職場を見つけることができた３つのポイント

1.努力することや、遅刻しないことなど当たり前のことに手を抜かなかった

2.SNSの写真をじっくり観察し、長く働ける職場かどうかをチェックした

3.自分が携わりたい分野の仕事がなくても、自ら作り出す気持ちで転職に挑んだ

お話しの端々から、自らの描く美容師像に向かって努力をしてきたことが伺えた叶さん。ブライダルという自分が携わりたい分野が明確にあっても、まずは技術を磨くことに集中したり、与えられた環境のなかで自らメニューを生み出したりと、夢を叶える方法はひとつではないことがよく分かった取材となりました。

いつか実現したい夢がある人はぜひ参考にしてみてくださいね。