サロンの知名度やブランドではなく「この人についていきたいかどうか」で道を選んできた【onn代表 安齋由美さん】#1

編集者やスタイリストなど、感度の高い業界関係者から熱烈な支持を集める、美容師の安齋由美さんが、念願のサロン「onn」をオープン! オープン直後のサロンに伺い、このタイミングで新規サロンを立ち上げたわけや、これからonnをどう育てていきたいかについて聞きました。またスタッフ働きやすい環境作りへのこだわりや、フリーランスのスタッフが多く在籍するなど、既存の枠組みにとらわれないビジネスモデルにも注目。これからの美容師の働き方を模索するうえで、ひとつの道標となってくれそうです。

前編では、規模の異なる3つの美容室で、さまざまなことを経験した安齋さんが感じたことや、働き方へのこだわりを伺います。

お話を伺ったのは…

onn代表 安齋由美さん

福島県出身。地元の美容専門学校を卒業後上京。表参道の人気サロンに就職後、複数のサロンで実績を積む。前サロンでは代表取締役社長を務めながら、結婚と出産も経験。2025年6月、代官山に念願のサロン「onn」をオープン。シンプルなのにトレンドの抜け感が詰まった高い技術力に、多くの注目を集めている。

ANZAI’S PROFILE

お名前

安齋由美

出身地

福島県

出身学校

郡山ヘアメイクカレッジ

プライベートの過ごし方

子供と全力で遊ぶ

趣味

写真、食べ歩き

カメラマン志望がいつしか美容師の魅力にハマっていった

「高校卒業後カメラマンになりたいと親に伝えたところ、反対されて地元の美容学校に入学することになりました」。

――安齋さんが美容師を目指したきっかけを教えてください。

高校生の頃はカメラマンになりたかったんです。ちょうど若手の女性カメラマンさんが活躍している時代で。その方たちの撮るキラキラした写真が大好きでした。卒業後の進路を決める際に、親に「カメラマンになりたい」と打ち明けたのですが、「進学するか、何か資格をとってほしい」と、「それで2年たってもカメラマンになりたい気持ちが変わらないのであれば好きにしていいよ」と言われました。それで美容師の専門学校に行くことにしたんです。

――美容師という職業に興味はあったんですか?

ファッションは好きでしたが、特段人の髪をいじるのが好き、ということはなかったですね。その頃はカリスマ美容師がブームだったのと、手に職をつけられる職業の中で「これならいいかな」と思ったのが美容師だったという程度の動機でした。

あとは普通の会社員になるというイメージが持てなくて。自分の手で何かを生み出す人になりたかった、というのも美容師の専門学校に進んだ理由のひとつです。

――地元の専門学校に2年通い、卒業後東京に出てきたという流れですか?

はい。専門学校に入った初日から地元の美容室でアルバイトを始めました。私が通っていたこともあり、「学校に行きながらアルバイトしませんか?」と誘われて。

就職先としても人気のサロンだったので、誘ってもらえてうれしかったですね。昼は専門学校で基本を学び、放課後や土日はその美容室に行って実践を学べたので、経験としてはとてもよかったと思います。

美容師として生きていくことを決めた

――専門学校を卒業した頃は、カメラマンになりたいという気持ちは薄れていたのでしょうか。

そうですね。卒業するころには美容師になろうと決めていました。カメラは趣味で続けていけばいいかな、と。

学校を卒業して、アルバイト先の美容室にそのまま就職することも考えたのですが、東京の気になっている美容室を2つだけ受けてみようと思いました。2つと決めたのは、東京に行ければどこでもいいというわけではなくて、自分の好きなスタイリストさんがいる美容室に入りたかったから。それにアルバイト先の地元の美容室もすごく好きだったし、就職しないかとまで言ってくれていたので、そこに対してもきちんと誠意を示したかったというのもあります。

結局、2つ受けたサロンのうち1つに受かって、晴れて上京することになりました。

――当時は今よりも美容師が人気で、何百人もの人が受けて数人しか受からない、という時代だったと聞きます。安齋さんが就職できたのは、どういう点が評価されたのだと思いますか?

詳しくは分かりませんが、たくさんの美容室を見て決めたので、その熱意が伝わったのだと思います。

――念願の憧れの美容室に就職が決まって、そこでは何年働きましたか?

それが、長くは働けませんでした。1年もいなかったと思います。理由はオーバーワークですね。専門学校時代から地元の美容室でアルバイトしていたこともあって、入社時点で他の新入社員よりいろいろなことをまかせてもらえました。
私、入社初日からお客様のカラーを塗っていたんですよ(笑)。

大人気のサロンだったこともあり、常連さん以外にフリーのお客さんも次々と来るし、体調の管理ができなくなってしまったんです。

――体調を崩した安齋さんに、サロンはどのような対応をとってくれましたか?

接客はやめて、バックヤードの仕事だけにしてくれました。主にカルテの整理ですね。でもそれが私にはキツくて。みんなが忙しく働いているのに、私はずっとカルテ整理をしている。やりたいのにできないジレンマですね。それで「ここは一度リセットして体調を戻し、また別の美容室でやり直そう」と思って退職したんです。

――次の就職先はすぐに決まりましたか?

体調も元に戻って、幸いなことに次のサロンもすぐに決まりました。そのサロンも私の憧れのスタイリストが在籍する人気サロンでした。そこでは4年ほど働きましたが、カット、カラー、パーマといった美容師としての基礎はそこで作られたと思っています。

そこではトップアシスタントになるまで働きました。

あの人のスタイルが好き!という感覚で美容室を選んで行った

onnの待合スペースに並ぶ椅子は、安齋さんがみずからセレクト。

――トップアシスタントまで勤めていた美容室を辞めた理由はなんだったんですか?

当時自分がアシスタントについていたスタイリストさんがいて、その人の考え方や作るヘアがすごく好きだったのですが、ある時その人がサロンを辞めることになりました。ついていきたい気持ちはあったのですが、当時は引き抜きがありえない時代。その人についていくことはできず、しばらくはモヤモヤしながら働いていました。しばらくしてから、「やっぱり(その人がいる)サロンの入社試験を受けてみよう!」と思い、退職を選びました。

――強い気持ちがあったとはいえ、採用が確定しているわけでもないのに退職するとは決断力がありますね。しかも大型の人気サロンから、開業したばかりの小さなサロンへの転職となると、いろいろと考えてしまいそうですが。

はい、元の美容室を辞めると打ち明けた時も、周囲から「もったいない」「あのお店にいれば営業せずともお客さんは次々と来るし、わざわざ苦労する方に行かなくても」と言われました。

でも私はそもそも、美容室の知名度やブランドには興味がないんです。「この人の作るスタイルが好き」「この人のそばで技術を学びたい」、という思いだけで働く場所を選んできました。

退職したことを伝えた時は、心配した親から「これで次の就職先が決まらなかったら帰ってきなさい」と言われましたけどね(笑)。

結果的にはその希望の美容室に就職でき、そこで8年勤め最終的には店長を任されました。

集客をするために頑張ったこと

――有名なサロンから新しくできたサロンに転職して、営業活動などはされましたか?

やったうちに入るかはわかりませんが、自分のファッションのテイストを絞ってそれを自分らしさのアイコンにしたり、美容師のスナップ撮影の依頼があれば受けたりというのは積極的にしました。

できたばかりのお店ということで注目してもらえたということもあり、わりとすぐにお店は有名になりました。

売り上げも一気にというわけではないのですが、何年もかけて目標に達することができました。

美容室のブランドや知名度に流されることなく、自分の感覚を優先して仕事をしてきた安齋さん。現在のサロンをオープンする前に、共同経営という形で一度独立を果たしています。後編では経営者としてのこだわりやスタッフに対する思いをうかがいます。

取材・文/皆川知子(tokiwa)
撮影/ワタナベミカ

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onn
住所:東京都渋谷区恵比寿西1-34-23 代官山トキビル103
電話:03-6455-3338
onnのインスタグラム@onn_salon

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