一貫して守り続ける「自分らしさ」の基準は、楽しいかどうか! 私の履歴書 【ネイルアーティスト hiyoさん】#2

ファッションデザイナーからネイルアーティストへと転身し、出産や子育てと並行しながらも、ストイックにネイルの技術やアートのセンスを磨き続けてきたhiyoさん。現在はサロンワークからクリエイティブまで、ネイルの世界で多岐に渡り活躍されています。

前編では、ネイルと出会った経緯から名が知られていったきっかけなど、これまでの歩みについてお伝えしました。

そして後編では、より現在の活動にフォーカスしながら、大切にしている「自分らしさ」に関するお話を通じて、hiyoさんの仕事観を深掘りしていきます。

アートディレクターを卒業後、自分のアートや活動がより自由に

その確かな実力やセンスが認められ、これまでに様々な仕事をこなしてきたhiyoさん。ここからは、現在の仕事に焦点を当てて伺う

――現在も、引き続きネイル商材のメーカーのアートディレクターを?

実は、昨年末に卒業しました。

――そうだったのですね!? 何か理由が?

商材の制約を、やや窮屈に感じるようになっていったからです。今やネイルの業界もかなり発展して、日々様々なメーカーから、多彩な商材が数多く開発されています。それでも自分が所属しているメーカーの商材しか扱えないことに、少しずつ不自由な思いを募らせていました。もちろん、安定したポジションではあるのでありがたくもあったのですが、「自分らしさ」とはまたちょっと違う気がして。

――現在はどのような活動を?

サロンワークは通いやすい場所にある美容室の一角に移してそちらもこなしながら、ネイルのレッスン動画やオンラインサロンの活動、あとはオリジナルで作ったネイルのパーツなどの販売なども行なっています。自宅の一室は、サロンワーク以外の制作活動をするアトリエにしていますね。

――多才ですね!

ネイルのレッスン動画やオンラインサロンは、実はアートディレクターの頃から始めていました。メーカーの仕事をしつつも、自分らしさを発信できる仕事もしたいと思って。

ネイルのパーツなどの制作・販売は、メーカーにはないけれど自分が「こんなものがあったらいいよね」と思うようなアイテムを考えては作り、自分の作品に使って発信していました。そうしたら、「それはどこの商品ですか?」などありがたいことに問い合わせをいただくようになり、そのうちに販売に至ったという感じです。

――hiyoさんは、SNSのフォロワー数もかなり多いですよね。SNSはどのように運用されていらっしゃいますか? 何かコツがあるのでしょうか?

これといった明確なコツがあるわけではないですが、私がやってきたことならお話しできます。参考になれば幸いです。

Instagramを始めた理由は、海外のネイリストと交流したかったから。海外のネイリストが作るアートの配色やアイテムの使い方に国内のそれらとはまた違ったセンスを感じていて、インプットしたいと思いました。

そんな中、海外で人気のネイリストさんの投稿で自分が紹介されたことでプチバズりしたことなどはありましたね。今では様々な国にネイリスト仲間がいます。時々ですが、Instagramを通じて海外のお客様にお越しいただくこともありますよ。

――当初は、交流目的だったのですね。

そうです。現在は、問い合わせへの対応にもInstagramのサブスクリプション制度を活用しています。アートディレクターを卒業してから、その窓口が無くなってしまったので。

また、現在はオンラインでの窓口がInstagramだけなので、自己紹介的なアカウントとして日々コンテンツを作り、運用しています。

――コンテンツを作る上で、心がけていることはありますか?

「自分らしさ」+「見てもらえる」コンテンツ作りについて、考え続けることです。

「メーカーの商品を魅力的に伝えること」は前提に、「自分だったらこんな投稿が見たい」という視点も大事にしています。並行して、「そのコンテンツは本当に自分らしいのか?」ということも常に自問自答し続けています。

あとは、「1日1投稿」を実践していた時期もありました。現在は毎日ではないですが、頻度高めに投稿は継続しています。SNSは、自分のペースでもいいから続けることも大切だと思います。

自分のことが一番わからないからこそ、誰よりもストイックに「自分らしさ」を求める

hiyoさんの軸とも言える「自分らしさ」についてお話を伺った。多くの人が頭を悩ませるテーマでもあるのではないだろうか

――hiyoさんのお話にたびたび出てくる「自分らしさ」について、さらに深掘りさせてください。その「自分らしさ」には、何かご自身の基準などがあるのでしょうか?

「自分らしい」かどうかの基準は、「楽しい」か「楽しくない」か、です。自分のことって、自分が一番わからないと思って考え続けたからこそ、このようなシンプルな答えに行きついた気がします。

0から1を生み出すことって、自分を無理矢理に納得させたままで手を動かしても、どこかでうまくいかなくなるんです。例えば流行っているものがあったとしても、それをそのまま取り入れるだけとかはあまり心地よくない。テクスチャや色など、どこかしらの要素において自分なりのアレンジを提案していく方が好みなんです。

――クライアントからの要望と、ご自身のポリシーがせめぎ合うことはありませんか?

その両者でせめぎ合う、というよりは、また別物だと思っています。クライアントからのリクエストにプラスして自分なりの提案をすることは、クライアントからの要望と自分らしさの反発ではなく、融合なんです。0から1を作ることとは、また違った楽しみがありますよ!

――また別の楽しみ方をされているのですね! それでも、例えばPRを頼まれた商材がどうしてもご自分が選ばなさそうなアイテムだった、といったようなケースもあるかと思います。そんな時は、どうされていますか?

それは、もう修行だと思うことにしています。

しかしそんなときでも、どうしたら「自分らしさ」を出すことができるのか? と考え続けることは忘れません。そうするうちに、「普段の自分では選ばなさそうなものも、こうしたら自分らしくなるんだ」という発見を通じて、自分らしさを表現する引き出しが増えていくんです。

こういった経験は自己完結しているだけだとできないことで、他者からのアクションを通じて気付かされること。なので、むしろありがたいと思っています。

――「自分らしさ」を見失わないために、または見失いそうになった時などに実践していることはありますか?

私なりに、意識して実践していることが2つあります。

1つ目は、過去の作品を見返すこと。自らの歴史を辿っていく中で変わっていったものもありますが、同時に変わらないものも見えてくるんです。その一貫した部分こそ自分が本当に好きなところなのかもしれないと再認識することで、自然と迷いが消えることが多いですね。

2つ目は、一旦手を止めて作品を寝かせ、後日改めて考えることです。自分もプロなので、クライアントやお客様のあらゆるリクエストには柔軟に対応できます。しかしそんな中で自分らしさを見失い、違和感を覚えることもあります。いわゆる「楽しくない」時ですね。そんな時は思考が煮詰まっているので、一度解放してあげてから再び考える。すると違和感の正体が見えてきたり、より自分らしいアイデアが降りてきたりします。

自分も周りも楽しくなければ、何も始まらない!

今年、新たな一歩を踏み出したhiyoさん。以前よりフリーになったhiyoさんの今後の活躍にも注目したい

――先ほどの「自分らしさ」のお話は、クリエイティブに対するhiyoさんの軸を感じる内容でした。

ありがとうございます。しかし、時と場合によっては、またちょっと違った考え方をすることもあります。

――と、おっしゃいますと?

作品作りにおいてもサロンワークにおいても、「すごい」ではなく「素敵」という気持ちの方を大切にしています。

特にお客様への施術の場合は、自分ではなくお客様が何を求めていらっしゃるかを優先していますね。「素敵」と思う感性は、とてもポジティブなものだと思うから。

――クリエイティブなアーティスト活動も、サロンワークもどちらも経験されているからこその視点ですね。そんなhiyoさんの、今後の展望はありますか?

「こういうのがあったらいいな」を、もっと積極的に形にしていきたいです。

昨年末でアートディレクターを卒業してフリーになったので、今後は様々なメーカーやブランドとお仕事ができたらいいなと思っています。扱える商材のバリエーションも増えたことで、表現の幅も広がりました。今、創作意欲がグッと上がってきています!

東京ビッグサイトで開催された、第27回「ビューティーワールド ジャパン 東京」に登壇された時のネイルアート(hiyoさん提供)
雑誌にイベント、SNSでの発信など…。hiyoさんの感性とロジックが織り成す、さらに自由なアートワークに期待が高まる

――これから美容業界を目指す方々へのアドバイスがあれば、ぜひ!

「どんなネイリストになりたいか」といったビジョンを持ち、それを忘れずに進んでほしいです。

ネイルサロンに勤める、フリーランスのネイリストになる、アートピースや作品を生み出し続ける…など、ネイリストは様々な働き方ができる職業です。だからこそ、迷うこともあると思います。それでもありたい姿をブレずに持ち続ければ、何かのきっかけで流されるようなことがあっても、いつかは自分がやりたいことに戻ってくることができるはずです。

もう1つ言えることがあるとするなら、各種検定や資格は取っておいた方がいいと思います。

自分の選択肢が増えるに越したことはないし、勉強する中で身につけた知識や、合格に向けて努力した経験はいつか役に立ちます。現に、検定や資格を取ったからこそ私はアートディレクターを経験できたのでがんばってよかったと思いましたね。

――hiyoさんにとって、「働く」とは?

「楽しむ」ことです。自分だけでなく、お客様や周りの人たちも含めて楽しむことが大切で、そうでないといい作品は生み出せないと思っています。

もし楽しくない時があったら、「なぜ楽しくないのか?」を分析したり深掘りしたりして、とことん考える。そしてこれが、結果的に私が大切にしている「自分らしさ」につながっています。

幸運なことに、私は仕事と好きなことが同じ。そして、かつてファッション業界で叶わなかった、職人的な働き方もできています。ネイルに出会えて、本当によかったです。

hiyoさんの成功の秘訣

1. 「なぜ?」を突き詰めて考え続ける思考力

2. 自らの仕事にストイックな姿勢

3. 自分の軸となるものを忘れないこと

撮影/内田 龍
取材・文/勝島春奈


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住所:東京都八王子市南大沢2-13-4 リラーチェヘアラウンジ内
hiyo Instagram:@hiyo_2

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