エステの仕事が、常に自分を中心に戻してくれる【エステティシャン 村岡千洋さん】♯2
大手エステサロンを経て2002年に独立し、現在は都心にエステサロン「La Fleur」を構える、エステティシャンの村岡千洋さん。高い技術力と、丁寧な施術、まるでお客様を包み込むような温かい接客で村岡さんのサロンは20年以上に渡って愛され、口コミや紹介だけで顧客を獲得してきたそうです。
前編では村岡さんがエステ業界に入ったきっかけや独立までのお話しを伺いました。
後編では村岡さんの独立後のお話と、村岡さんの仕事観について伺います。独立後は1日に受け付ける予約を限定し、1人ひとりのお客様への丁寧な施術が可能になったという村岡さん。
ときには3時間に及ぶ施術もあるそうですが疲れを感じることはなく、むしろ自らも活性化する感覚があるそうです。
お話を伺ったのは…
村岡千洋さん
白鴎大学経営学部を卒業後、大手エステサロンに5年ほど勤務。その後、尊敬する女性社長の元でのエステ部門の立ち上げを経験。小規模サロンの経営を学び、2002年、30歳のときに北青山(東京)にて独立し、エステサロン「La Fleur」をオープン。口コミや紹介だけで顧客を増やし、現在も都心にサロンを構える。エステティシャンとして1日でも長く活動を続けることを目標にしている。
施術が3時間を超えるときも。満足いくまでお客様に向き合える幸せ
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――独立後、仕事はどのように変わりましたか?
1人ひとりのお客様にしっかりと向き合えるようになりました。サロンに勤めていたころはメニューにもよりますが、1日に5名様ほどのお客様を担当するのが当たり前だったのが、独立当初は1日4名様、今はさらに少なくなり、だいたい3名様で落ち着いていますね。
基本的には1ヶ月に1~2回ほどご来店いただくことを目安にしているのですが、たとえばその方のお仕事の都合などでお手入れの間が空いてしまったときは、理想の状態に戻すのに時間がかかることがあるんです。まだまだできることがあるという感じですね。そんなときには、「その瞬間の」「その方の最高」の状態になるまで、お時間をいただくことがあります。
――3時間にも及ぶコースもあるそうですが、疲れてしまいませんか?
ほとんど疲れることはありません。それほど楽しい仕事だということもありますし、普段から体力をつけるために、さまざまなことを取り入れています。今はバレエやヨガを習っていて、心身ともにベストコンディションで施術できるよう心がけています。
経験を重ねてつかんだ、手のひらの感覚。何十年経っても成長を続けられる

――エステティシャンとして大切にしてきたことは?
一番大切にしてきたのは、結果を出すことです。私がエステティシャンとして仕事を始めた30年前と比べて、今はご自分で稼いで、ご自分のお金で、そしてご自分のためにエステを選択している方が多いので、成果に対するジャッジがシビアになっていると感じますし、それが当然だと思います。私が接客を受ける時もそうですから。
ですのでまずは、結果を出すことは大切にしています。エステティシャンとして1年目からこの仕事に魅了されたのも、施術によって美しくなった姿をお客様が心から喜んでくださるからだったので、私はどこまでいっても技術者寄りの思考なんだと思います。お客様も結果を大切にする方が通ってくださっているような気がします。
もうひとつは何より、お客様に心地よく過ごしていただくことです。私は、どんな立場の人でも、本当に大切な存在として丁寧に扱われる時間というものが、生きていくためには必要だと思っています。もし少しでも、そのような瞬間を提供できていたらと、いつも願っています。
――提供しているエステの特徴について教えてください。
基本的にエステは肌、筋肉、リンパ、肉質など100や200にも上る要素を一度にすべてケアすることで、組織を健康な若い状態に機能回復させていく技術です。
ベースにあるものはこの技術ですが、私の施術の特徴としては経験の蓄積と分析により、体の構造についての理解度が増した分、さきほどお話しした要素へのアプローチが多彩になっていることではないかと思っています。
たとえば施術中に凝りが見つかったとしてもエステティシャンとしての経験が浅いうちは、「ここに凝りがあるな」ということくらいしか分かりません。
それが経験を重ねるうちにその状態が使い過ぎから起きているのか、使わなさ過ぎてなのか、更年期による緊張なのか、加齢によるこわばりなのかなどなど、自分の手のひらを通してさまざまなことが感じられるようになってきました。
――これまでの経験が活きているということですね。
はい。手のひらを通してお客様それぞれの多彩な状態を感じられるようになったのは、10年を過ぎたあたりからで、数年しか経験していないうちは無理だったと思っています。ただそのベースにあるのは間違いなく、新人のころに何も分からないままにがむしゃらにたくさんのお客様に入らせていただいた経験です。
今年53歳ですが、常に自分の技術は変わっているし、何年経っても新たな発見がある本当にエキサイティングな仕事だと感じています。自分の老化も研究材料になりますし、趣味で通っているヨガやバレエも、体の仕組みに気付く大きなきっかけになっています。この先も自分が伸びていくと思うとワクワクしますし、これからも一生学び続けるつもりです。
働くことに何度も助けられてきた

――長くこの仕事に関わっていらっしゃいますが、その気持ちの根底にあるのは、お客様を変えてあげたいというようなお気持ちなんでしょうか?
ちょっと違うかもしれません。私はどの方も美しく、完璧で、何の問題もないといつも思っています。ただ、今、睡眠時間が足りていない、心が疲れている、老化などによって何らかの変化が起きている。私はその部分に対して働きかけて、その方を健やかな状態にお戻しするだけ、というイメージです。
皆様をただ完璧な状態に戻しただけなのに、本当にうれしそうにしてくださるので、その美しさは元々みなさんが持っていたものなんですよ、と言いたくなってしまいます。
エステでエイジングを緩やかにすることは可能だと思っていて、たとえば毎月通ってくださっている方ならば1ヶ月分の加齢を私が戻しますので、お客様は計算上歳を取らないことになります(笑)。10年後、1歳くらいは歳を取ったと感じるかもしれませんが、それくらいは許してくださいね、と皆様にはお伝えしていますが、創業23年にして、今のところクレームはいただいておりません。
――村岡さんにとって働くこととは?
本当に楽しいと思えることですし、仕事をしているときが一番自分の軸、中心に戻れる気がします。長いキャリアのなかで、人生はときにはとんでもないことが起こります。そういうとき、仕事に入る前には「今日、私はちゃんと施術ができるかな」と不安になることもありましたが、施術を始めると必ず心が定まり、自分の軸が整ってくるのを感じます。
よくヨガを習われている方がヨガをしていると自分の軸に戻れるとおっしゃるのですが、私にとってはヨガよりも安定するのが、エステティシャンの仕事です。
バレエもそうですし、子どものころに習っていた日本舞踊もそうなのですが、そこには完成された型があります。私は仕事にもその基本となる型があるように感じていて、私の場合、新人時代に先輩方に鍛えていただいた技術と、その後自分でゆっくりと育てていったエステティシャンとしての自分という型(軸)が支えとなって、ここまでこれた気がしています。
――仕事をすることでそう思えるようになったら、本当に幸せですね。
そうですね。今までの人生で何度、働くことに助けられたか分かりません。ただ最近は、エステひと筋で仕事に夢中になって生きてきたけれど、ほかの人生の部分がおろそかになっている気もして、これでいいのかなと反省することもあるのですが(笑)。
それでもこんなに楽しい仕事はないですから、1日でも長くこの仕事に携わっていたいと思います。
エステの仕事を心から楽しんでいる村岡さん。村岡さんのように自分が納得いくまで仕事に携わることができたら、とても幸せだろうなと感じました。また技術を身につければ可能性も広がっていく、エステの仕事の魅力も感じられた取材となりました。
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