美容院への“とある不満”を解消し全国的な知名度を『深夜美容室TAMA』
西荻窪駅から徒歩30秒、そのあまりの駅への近さから迷う人が続出という『深夜美容室TAMA』。一見、ごく普通のヘアサロンに思えますが、実は全国からお客さまがやってくる有名店なのです。
前編の今回はサロンを運営する合同会社迅風社代表のkirinさんと店長のTAMAさんに、サロンの特徴や提供されているサービスについてうかがいました。
「オタク向け」と「一般向けのふたつの顔を合わせ持つ美容室
――サロンの特徴について教えていただけますか？
kirinさん「まず“オタク向けの美容室”ということですね。このお店から歩いて5分ほどの場所でオタク向けのカフェバーも経営しているんですが、そことお客さまをシェアしています。その一方で、内装にあまりオタクっぽさ出さないようにして、地元の一般のお客さまにも来ていただけるようにしています。とくに深夜まで営業することで、仕事帰りや夕飯を食べたあとに髪を切りたいという需要にも応えられるのは、大きな特徴だと思います」
「美容室が怖い」という隠れたニーズを発見
――サロンをオープンした経緯を教えてください
kirinさん「もともと迅風社はバーをメインにやっている会社だったのですが、そこにいらっしゃるオタクのお客さまに『普通の美容室は怖い。髪のこととか、いろいろ聞かれるのがイヤ』という方が多くて、これは絶対に需要があるだろうと考えたのです。そこでオタク向けの美容室を作りたいという話をバーの常連の方に相談していて紹介されたのが、同じくお店のお客さまだった店長のTAMAです。オタクで、コスプレイヤーで、美容師で、と全部揃った人がお店にいたわけですね（笑）」
TAMAさん「そうなんです。お店では美容師だっていう話はしていなかったんですが（笑）」
オタクのお客さまの心にぴったり寄り添う同店のサービスとは！？
――提供されているサービスで特徴的なものはありますか？
kirinさん「接客の特徴ですが、本当に美容室でおしゃべりするのが苦手というオタクのお客さまは多いので、お店で書いていただいているオーダーシートに『お話しするのは控えめがいいですか？ はい・いいえ・そこそこ』という項目を用意しています。だから、このお店のスタイリストにはどれだけ少ないコミュニケーションでお客さまの要望を読み取れるか、という特別なスキルが必要ですね」
TAMAさん「話しかけないで欲しいということであっても、もちろん美容師として最低限、髪の長さについてのご要望やカット中の出来上がりについての確認などはします。また、お客さまが“絶対にやって欲しくないこと”に絞って質問するのもポイントです。
それから施術面の特徴は、オタクのお客さま向けの話ですが、アニメなどのキャラクターの画像を提示されれば、その通りのヘアスタイルを提供することです。設定資料集を持ってくる方やアニメのワンシーンを携帯のカメラで撮影して持ってこられる方もいらっしゃいますが、詳細がわかりにくい場合は店内のパソコンでそのキャラクターの画像を検索し、ご希望の髪型を確認しています」
kirinさん「ですからお店として、アニメのキャラクターに合わせたハードなカラーリングは得意です。ある時期にフィギュアスケートを題材にしたアニメが人気になり、登場する人気キャラクターが銀髪だったことから、ものすごく大勢のお客さまが同じヘアスタイルにしたいということで来られました。普通のサロンではほとんど出ない、シルバーヘアーの注文が殺到したんです」
TAMAさん「その頃は毎週、ブリーチを発注してましたね。きれいな銀髪が出るように、薬剤の調合もかなり研究しました。『朝、起きたときに鏡で自分の好きなキャラクターの髪色と髪型を見ると、すごくテンションが上がる！』と、言っていただきましたよ」
Kirinさん「近くで経営しているカフェバーでは更衣室も用意しており、コスプレしてお酒が飲めるようになっています。ですから、このサロンで髪をキャラクターと同じようにして、それからカフェバーで着替えてコスプレを完成させて飲む、というお客さまも大勢いらっしゃいます。それもこのお店ならではのサービスかもしれません」
後日、オタクな知人女性にこちらのサロンの話をしたところ、「私も美容院が怖いの！ 行きたい！」と目を輝かせていました。そんなお店ができた背景には、もちろんしっかりとした経営的な発想と戦略があります。後編ではサロンを訪れるお客さまやお店作りのこだわり、今後のビジョンについてうかがいます。
驚きの発想で「地域密着」と「全国区」を両立！『深夜美容室TAMA』>>
